シアターコクーンが海外のクリエイターを迎え、新たな視点で挑む演劇シリーズDISCOVER WORLD THEATRE」。2016年スタートして以来、様々なクリエイター陣とキャストが化学反応を起こし、名作を世に送り出してきた。

シリーズ第11弾となる今回は会場をオーチャードホールに移し、ジェームスマシュー・バリーが手がけた「ピーターパン」の小説版を、エラ・ヒクソンがウェンディの視点から翻案したウェンディピーターパン』が上演される。演出は同シリーズにおいて『るつぼ』『民衆の敵』を手がけたジョナサン・マンビィ。黒木華ウェンディ)と中島裕翔ピーターパン)、堤真一フックミスターダーリング)といった面々が顔を揃え、2013年に英国ロイヤルシェイクスピアカンパニーの新作として上演された本作の日本初演に挑む。公演を間近に控える中、ウェンディ役・黒木華へのインタビューが行われた。

■たくさんの人に愛される作品になるはず

ーー今回、黒木さんは誰もが知っているウェンディという役を演じます。出演が決まった時の気持ちを教えてください。

ジョナサンとまた一緒に仕事したいですねと『るつぼ』の時から話していたので、この作品でまたご一緒できるというのが嬉しかったです。みんなが知っている、夢のある作品を新しい形でできるのも、刺激的だなと思っていました。

ーー稽古が始まって、作品や役の印象に変化はありましたか?

(作家である)エラさんがウェンディの視点から翻案されたということもあり、作品の中で女性の社会的な立場や成長が大きく描かれています。ウェンディタイガーリリーティンクお母さんといったそれぞれの女性がきちんと前を向き進んでいくところが(原作と)大きく違うんじゃないかと思います。

ーー通し稽古をしてみて、改めて感じた作品の魅力を教えてください。

通してみて、とても忙しい舞台だなと思いました(笑)。その分、観ている人はすごく面白い舞台だと思うんです。ステージ上でいろんなことが起き、舞台装置もマジカルだったりします。多くの方に愛される舞台になるだろうなと感じています。あとはちゃんと体力をつけないと、というのが正直なところです(笑)

ーーお客さん目線で、見所や面白いポイントはどこだと思いますか?

全部面白いですよ(笑)! 見所がたくさんある作品だと思いますね。人間模様もそうですし、もちろんフライングや殺陣もあります。衣裳や舞台装置も、イギリススタッフの方々とのコラボレーションでできた素晴らしいものになっています。お子さんだけでなく、大人の方にも楽しんで観ていただける作品になるよう頑張っているところです。

■和気あいあいとしたパワフルなカンパニー

ーージョナサン・マンビィ氏の演出の面白さ、魅力はどういったところだと感じますか?

すごく丁寧ですし、それぞれの役者のいいところを見つけて、引き出してくれます。その上で、役者の挑戦を喜んで、楽しんで聞いてくださるので、物語が広がっていく感じがあります。今回のカンパニーは初めてジョナサンの演出を受けるキャストも多いですが、そうしたキャストの戸惑いも楽しんで見ている感じがあります。

ーーピーターパン役の中島裕翔さんとは初共演です。印象はいかがですか?

ご本人がどういう方かまだ分からないですが、とても真面目で素直な方だというのはお芝居から感じます。あと身体能力がすごく高くて、殺陣やフライングも、全部一発で覚えちゃう。そういう身体能力の高さは、ピーターパンにピッタリだなと思いながら見ています。

ーー堤真一さんはウェンディたちの父、ミスターダーリングとフックの二役です。一緒に演じてみてどうですか?

堤さんとは今までにも何度かご一緒させていただいているので、すごく安心感があります。堤さんご自身がとてもユーモアのある方で、違和感なく父と娘の関係が築けているように思います。立ち回りに関しても経験が豊富だと思いますし、すごくお上手なので、教えていただいています。

ーーカンパニーの雰囲気を教えてください。

チーム自体はすごく和気あいあいとしています。若い方が多く、すごくパワーのいる作品なので稽古中はみんなのパワーがみなぎっています。それと今回、シャドウというピーターパンの影役の方々がいらっしゃるんです。その皆さんが本当に素晴らしくて、私たちができないフィジカルな部分を全部担ってくださっています。そういう方々も含め、とても明るい現場です。

■今までとは違うウェンディ像を楽しんでほしい

ーーウェンディを演じる上で「核」として大事にしていきたい部分はどこですか?

稽古をしている中でウェンディは、家族に大きな影響を与える存在だと感じています。壊れかけた家族を自分がなんとかしないといけないという思いがネバーランドについてからも結構あるんです。現状をどう打開し、どう成長していくかという過程を見せていくことが大事だと思っています。

ーー黒木さん自身は、「ピーターパン」という作品にどんな印象を持っていましたか?

私の中では、ディズニーイメージなんですよね。タイツを履いた少年が空を飛んでいるみたいな。子供のための物語であり、夢の世界に誘われるイメージでした。

今回はエラさんがおっしゃっていたように、女性の社会的な立場や成長に注目していて、作中の女性に対するイメージに疑問を持って描かれた作品になっています。

ーーちなみに今回中島さんはタイツを履かれる……?

タイツ? 履いてませんよ(笑)! 格好良いままですから安心してください(笑)

ーーこの作品で、ウェンディにとってのピーターパンはどんな存在だと思いますか?

ウェンディの想像の中の登場人物なのかなと思います。ウェンディが思う理想のヒーローであり、目の前に現れてほしい人物の象徴なのかなと。

ジョナサンから演出を受けた際に、フックウェンディが想像する、魅力的でちょっと危ない大人の男性のイメージと聞き、ウェンディと同年代のピーターも、自分を助けてくれる理想の男の子なのかなと。強くて、アグレッシブで、怖いものなしだけど繊細な一面もある、素敵な男の子ですかね。

■いま一番の楽しみはこの作品の稽古

ーーピーターパンという作品に絡めて、黒木さんが最近した冒険、楽しかったことがあったら教えてください。

最近はあまり外に出られていないので……。稽古が冒険ですかね。

楽しかったことも稽古なんです。舞台が本当に好きで。あとは、稽古場まで自分で運転して通っているので、その間にラジオや音楽を聴いていて、その時間が結構楽しいです。

ーー舞台が好きとのことですが、演じる側、観る側それぞれから考える舞台の魅力は?

観る側としては、目の前で演者さんが感情を出して動いているのをフィルターなしで生で観られるところ。その迫力は舞台ならではの伝わり方で、映像にはないものだと思います。演じる側としては、目の前にいるお客様の反応を生で感じることができるところ。そこが一番の大きな魅力ですね。

ーー夏休みに観るのにぴったりな作品ですが、この状況下で心配もあると思います。演者としてどんな気持ちでしょうか。

お客様に心配なく来てもらうことがとても重要なことだと思います。そのために劇場側も様々な対策をしてくださっているので、そこは安心して来ていただけたらと思います。

コロナ禍だからこそ、舞台やエンターテインメントの力を私は信じたいし、信じています。もやもやした気持ちは拭えないですし、手放しで「遊びにきてください」とは言えない状況ですが、皆さんの心に残る舞台にできればと思っています。

日常を忘れられたり、登場人物に自分を重ねたり想いを馳せたりできるのが舞台空間だと思うので、純粋に楽しんでいただけたら。

ーー最後に、お客様へのメッセージをお願いします。

フライングをはじめ、ステージ上ではいろんなことが起き、お子さんだけでなく、大人の方にも楽しんでいただけるような作品になると思います。まだ上演まで期間があるので、これからどんどん稽古を重ねて、より面白い舞台になるよう頑張ります。

取材・文・撮影=吉田沙奈

黒木華