8月4日に、ファーストEP「DAYBREAK」をリリース。9日にワンマンライブ「RIHO SAYASHI 1st LIVE 2021 DAYBREAK」を開催し、復帰後、本格的な音楽活動を再開した鞘師里保2018年12月モーニング娘。を卒業してから約5年半ぶりになる、ファンが待ち望んでいた復活劇であった。

【写真を見る】復帰後初のワンマンライブ。歌い、踊る鞘師里保が帰ってきた

DAYBREAK」収録の5曲は、鞘師がワンマンライブに向けて歌詞を書き下ろし、楽曲制作から携わったオリジナル曲になる。海外留学も含めた休業期間で人間的にも成長を遂げ、モーニング娘。時代とは違う音楽への変化も見られる1枚となった。

今の自分を届けるため、彼女はどんなチャレンジを行ったのか。楽曲制作から歌詞に込めた思い、自身が感じる成長などに迫った。

■ハッと気付いた、「私ってそういうのが苦手な人間」

――作詞をした今回のEPに込めた思い、楽曲制作から携わっての気持ちからお話しいただけますか?

まず、タイトルの「DAYBREAK」は日本語で“夜明け”という意味になります。休業を経て、また音楽活動をしていく私自身の“夜明け”でもありますし、“新しい朝を迎える”という、私がいたモーニング娘。へのリスペクトから付けたタイトルでもあります。

今回改めて皆さんに歌を届けるとなったときに、年齢も重ねたし、今の私だからこその歌、パフォーマンスでないと、活動を再開した意味がないと思いました。そうでなければ、過去の動画を観ればいいってなってしまうじゃないですか。楽曲制作においてはそういうところ、ジャンルもそうですし、自分の言葉で歌詞を書いて伝えるということを強く意識して取り組んでいます。

――歌詞を読むと、自分への当て書きのようにも受け取れます。どんな気持ちで書かれたのか、気に入っているフレーズがあれば教えてください。

普段、コラムなどで言葉を発するときは、しっかり自分の意図が届くように、人を傷つけないようにというのを意識して、その言葉にウソはないですが、何度もブラッシュアップして選んだ言葉で届けるように意識しています。でも、今回の歌詞は私自身を表現するものでもあるから、きれいな言葉、ろ過し続けた言葉はちょっと違うんじゃないかという思いがありました。そういう意味で思い付いた言葉をバーっと書き出して書いているんですが、そうすると今度は逆に、「これを発表してもいいのかな…?」という不安が湧いてきたりもして…。これは全ての楽曲に対して思ったことです。

節のこと、曲の展開のこと、いろいろな制限がある中で書くのは大変でしたし、こんなに率直な言葉でいいのだろうか、という気持ちもありました。そうした中でも気に入っているのは、「Find Me Out」のBメロ、「私をもっと知って欲しいのに 真ん中を見られるのは怖いから」というフレーズです。これはもう私自身が本当にそういう人間で、私のパーソナリティーを代表するような文章です。今回の歌詞を書く上で、自分の奥にあるものを出さなきゃ、出さなきゃとすごく考えて、「でも、私ってそういうのが苦手な人間だよな」と、ハッと気付いたときに思い付いたフレーズです。

自分のことだけど、自分の性格を言葉にするのってすごく難しい。だからこそ、その難しいと思うことを言葉にすればいいんだ、みたいなところ。これが今の自分だなって、とてもしっくりくる言葉です。

――楽曲の制作過程に深く関わるのは初めてですよね?

そうですね。ここまで深い関わり方は初めてです。

――Akira Sunsetさん、TAKAROTさんヒットメーカーを迎えての作品です。クリエイター陣とは、具体的にはどのようなやり取りで進められたのですか。詞先、曲先、メロディーのオーダーなどはされたのでしょうか?

そこは曲によってアプローチが全く違っていて、例えば「LAZER」は私が伝えたいこと、そのイメージに合う音はどういうものかという、歌詞と音を決めるところから作曲のTAKAROTさん、作詞(共作)のカミカオルさんと3人でイチから話し合って作っていて、「Find Me Out」は詞が先です。言葉を決めてから、宮野弦士さんに曲を付けていただきました。

逆に、Akira Sunsetさん、APAZZIさんと作らせていただいた「Simply Me」と「BUTAI」はトラックオーダーが先です。ダンス、踊りの舞台に対する私の気持ちをお話しして、作っていただいた曲に歌詞を付けています。「Puzzle」はコンペ曲で、「あ、これいいなあ…」って、私が歌詞を付けたいと思った曲を選ばせていただきました。本当に曲ごとで全く違う作り方をしているんです。

■夜明け前から始まり、陽が昇る「DAYBREAK

――“私を見つけて”という「Find Me Out」から始まって、「BUTAI」に立つ姿、まだ未完成な自分…。「DAYBREAK」の下にストーリーを立てたトラック構成に思えました。トラックが進むごとに曲の明るさ、メジャー感も強まっていく。そこは意識してのことですか?

トラック構成はそうですね、夜明け前から始まって、最後の曲で陽が昇る。そういうイメージで組みました。でも、収録順は改めて聴き込んでから決めたことで、最初から全体の並びを考えて書いた歌詞ではないんですよ。無意識にワードの被り、言葉のバリエーションは考えていたとは思いますが、作っているときはあとのトラック構成より、一曲一曲のことだけを考えて。

曲もジャンルでは選んでいなくて、今の私が歌いたいと思った曲調からです。伝えたいこと、やりたいことを出して、それを汲み取っていただいて完成した曲たちで、並べ直してみたらいい感じにそろいましたね、っていう感じです(笑)

――深読みでしたか(笑)

でも、そこまで考えていただけるってうれしいです。「DAYBREAK」の下に並べたのは事実ですし、今のような話を聞くと、曲の内容が伝わっているんだなって思えます。“夜明け”を意識して組んだ結果、だんだん前向きになっていく感じはたしかにありますよね。

■5年半ぶり、ソロデビューでの歌の変化

――今回の発表曲、以前とは歌い方がだいぶ違うように聴こえますが、これは意識して変えたわけですか?

元々いろいろなジャンルの歌を聴いている方で、こういう歌い方ができたらいいなって、普段から訓練していた部分があるんです。そういうのが今回の中で出せたのかな、というのもありますし、今まで感じていたレコーディング音源とライブパフォーマンスのときの違いをなくせてきたというのもあると思います。

私、歌い方が感情によってすごく変わってしまうタイプで、パフォーマンスしながらだとこう歌えるのに、どうして音源では違う声になるんだろう、というもどかしさがあったんです。そのときライブで聴こえる声と、音源になって聴こえる声の違いみたいな…。今回それについて改めて考えて、試行錯誤してみた成果かなって。私がイメージするいつもの歌声に、音源自体を近付けられたというのが聴こえ方の違いになっているんだと思います。私の意識としては、変えたというより、よりよくしていったという方が当てはまりますね。

――そういう試行錯誤、新しい音楽を作る中でも、ハロプロでの学びは生きていると思います。当時学んだことで、今、身になっていることは何がありますか?

それはやっぱりリズム感とグルーブですね。もう、めちゃくちゃ生きています。今回で言えば「BUTAI」と「Simply Me」が縦ノリというか、刻むリズムが多い曲で、レコーディングのときにもリズムのよさを褒めてもらえてうれしかったです。

――レコーディングも久しぶりだったと思います。やられてみてどうでしたか?

6年ぶりくらいかもしれなくて、最初、レコーディングマイクとの距離感をつかむのに苦労しました。ああ、前もそれで苦労してたなあって、思い出すのも楽しい感覚でしたね。ただ、大変ではありましたけど、モーニング娘。時代と違って、私1人のために時間を使っていただけるというのは大きかったですし、しっかり意見を言えるようになったのも。

以前はディレクターさんのOK待ちみたいなところがあったんですが、今回は自分が納得いくまで録り直しをさせてもらって、調子が出てきたときに「今録りたいです!」って申告できたり。そういう積極的な姿勢で録れたのは、作品に参加できているという実感にもなりました。

――今回全曲で作詞をしていますが、作曲についてもチャレンジしていこうという気持ちはありますか?

興味はゼロではないですが、音楽の基本的な理論をすっ飛ばしてここまで来ていて、自分でもそれはまずいなと思っているんです。それもあって、じつは今ちょうど個人的に勉強し直している最中なんですよ。それが結果的にクリエイティブのほうに生きるかは分かりませんが、音楽への理解を深めることは、この先自分のために絶対必要になることだと思っています。どうなのかな、私にできるようになるのかな(笑)

――クオリティーに妥協したくないという気持ちもあるでしょうが、ファンの方は鞘師さん自身が作る曲を楽しみにしていると思います。作曲ができるようになると、表現したい音楽世界がぐっと広がると聞きますし。

そうですよね。自分で全てを生み出せるのってとてもすてきだと思うし、“100パーセント自分”というのもいいですよね。でも、いろいろなクリエイターさんと関わって、自分の知らない世界で私の言葉を表現していただけるのも発見が大きくて、その可能性の広がり方も私はすごく好きなんです。なので、今は無理せず、作曲はいつかできたら。自分で作りたい気持ちが湧いてきたらやるかもしれないです(笑)

――ちなみに、譜久村聖さん(モーニング娘。の同期)たちから、曲を聴いた感想などは届いていますか?

同期からは「おめでとう!」っていうメッセージが届きました。どうだろう、聴いてくれているのかなあ? 感想、聞いてみたいですね!

■“心をすっぴん”にして届けたかった復帰ライブ

――8月9日のワンマンライブ。鞘師さんがどう携わって、どんな意見を出して作り上げたのかを教えていただけますか?

曲順もそうですし、振り付けを考えたり、バンドセットでやりたいというのも私から提案したことです。復帰後初ライブなので、なるべく素の私というか、心をすっぴんにしてお届けしたいという気持ちがあって、それにはシンプルバンドセットがいいと思ったんです。派手な演出も楽しいとは思いますけど、それはまたいつか。今回は“私”を届けることにこだわって、シンプルに削ぎ落す方向で考えました。

バンドセットってオケよりも柔軟性があって、もう本番まで日がないという時期でも、イントロを伸ばすとか、間奏を伸ばすとか、そういう調整が可能なんですよ。それは演出の考えにもつながって、ここでもう少し踊るパートを増やしたいです、ここでバンドソロをしてもらいたいです、とか。そういうアイデアが生まれていくのもいい経験になりました。あと、MCはこういう話をしたいので、この曲のあとに入れたいです、とかも話しましたね。

――MCのことも考えていたんですね。

やっぱりステージに立ってみんなの前で話すのって久しぶりだし、先に考えておかないと気持ちがあふれ過ぎて、絶対止まらなくなると思ったんですよ。モーニング娘。のときにたくさんの経験をさせてもらって、その上でまた再スタートさせていただけるってぜいたく過ぎることだし、ファンの方々にも、周りで支えてくれる方々にも本当に感謝しかありません。

――最後に、「DAYBREAK」のリリース、ワンマンライブを開催して、今感じている自分の成長と、今後取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

今までだと頂いた曲をどう表現するか、みたいな外枠からの目線でいたと思います。そこが今は、自分がどれだけ曲のピースになれるかという意識に変わってきていること。それは自分でもいい変化だと思いますし、もう1つは、どう見せたいのか、どういう要素を取り入れていきたいのか、自分の意見が生まれて、それをしっかり意見できるようになったことですね。

昔の私って、「はい、分かりました!」って返事をする聞き分けのいい子だったと思います。それはグループの1人であったからというのもあるし、物事が円滑に進むように変に頭を使っていた部分もあると思います。それも今はずいぶん変わって、人の意見は参考にしつつ、「でも自分ではこうしたいんです」と提案ができるようになっている。心にとどめるのではなくて、自分の意見を言葉にできるようになったのは、私の中ではとても大きな成長ですね。

――取り組んでいきたいことはどうですか?

いろいろなクリエイターさんと作品を作っていきたいです。今は周りの方々がいろいろ考えて紹介してくださることが多いんですが、今後は自分でも考えて、一緒に作品作りをしてくれる人を探していきたいと思います。ちょっと変わったコラボレーションもできたらいいなと思っていて、そうすることで表現の幅をもっと広げていきたいです。

取材・文:鈴木康道

鞘師里保が8月4日に1stEPをリリース。9日にはワンマンライブを開催した/※提供写真 8月9日ワンマンライブより