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 コンクリートでつくられた建物の中は快適かもしれないが、コンクリートそのものの中は生命にとってきわめて過酷な環境だ。だが、そんなところでも生きられるどころか、繁殖までしてしまうタフな細菌がいるという。

 『mSystems』(5月4日付)に掲載された研究によれば、そうした細菌を利用することで"コンクリートのがん"と呼ばれる「アルカリ骨材反応」の早期発見や、さらにはひび割れの修復までできる可能性があるそうだ。

【コンクリートの中に住む細菌】

 湿気の多い環境や下水などに使われるコンクリートの表面には、それを劣化させてしまう細菌が繁殖することが知られていた。しかし、その内部の様子についてはほとんど何もわかっていない。

 そこでアメリカ、デラウェア大学の微生物学者ジュリー・マレスカ氏らは、筒状のコンクリートを40本ほど用意して、そこに潜む細菌たちの様子を2年間にわたって観察してみることにした。

 DNA解析の結果から、特に繁殖しやすいのは「プロテオバクテリア」「フィルミテクス」「アクチノバクテリア(放線菌)」であることがわかったという。こうした細菌の5、6割は原材料の砂利や小石などに付着していたものだと考えられるそうだ。
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研究で使用されたコンクリートサンプル / image credit: University of Delaware

コンクリートの中で一体何を食べているのか?

 面白いことに、時間が経つにつれて細菌の種類は徐々に減っていったが、中には季節にあわせて再び増え始めるものもいた。これはエサの量の変化と関係していると推測されている。

 マレスカ氏によると、そうした細菌はおそらく細菌の死体を食べているのだという。

 コンクリート内の細菌は食べ物がなくなると、ある種の休眠細胞をつくり出して、じっとしている。そして雨が降ると活動を再開してできるだけたくさんのエサを食べ、またも休眠状態に戻るのだ。
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コンクリートの中にいたプロテオバクテリア / image credit:public domain/wikimedia

コンクリート劣化の早期発見や修復に利用できるかも

 なお細菌の中には標準的な配合のコンクリートを特に好むものがいたという。

 こうしたコンクリートは”コンクリートのがん”と呼ばれる「アルカリ骨材反応」を引き起こして劣化しやすい。そこで細菌を手がかりとして利用すれば、亀裂などが入る前に劣化を診断することもできるかもしれない。

 また一部の細菌は「炭酸カルシウム」をつくり出すことで知られている。これはコンクリートのひび割れを補修するにはぴったりの素材だ。そこで細菌にコンクリートを修復させるといった利用法も考えられるそうだ。

References:Hard-core bacteria | UDaily / Bacterial Communities in Concrete Reflect Its Composite Nature and Change with Weathering | mSystems / written by hiroching / edited by parumo

 
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コンクリートの中で繁殖するタフな細菌が発見される。ひび割れの修復に利用できるかも