J‐POPアニソンに特化したDJとして、ロックフェスクラブイベントの現場を熱狂させているDJ和。誰しもの胸に残る名曲たちをノンストップで繋いだ『J‐ポッパー伝説』シリーズや広末涼子がジャケットに登場したことも話題となり、45万枚を超えるセールスを記録した『ラブとポップ~好きだった人を思い出す歌がある~』等、多彩なコンセプトを掲げたミックスCDを発表し続けている彼が、00年代を彩った珠玉のアニソン全40曲をセレクトした『時間旅行 [DJ和の"あの頃"アニソンMIX]』をリリースした。

【写真を見る】色使いが鮮やかな椅子が絶妙に彼とマッチした1枚

――2000年代を彩ったアニソンフォーカスしたミックスCD『時間旅行[DJ和の"あの頃"アニソンMIX]』をリリースされます。DJ和さんといえば、数多くのミックスCDを企画されていますが、大ヒットを記録した『ラブとポップシリーズのように、さまざまなシチュエーションへ提案するようなモノが多いと思います。今回、時代や世代を意識した作品を考えたのはどういった理由があったんでしょうか?

「まず、アニソンミックスCDをそろそろ出したいなと思ってたんです。2019年に『平成アニソン大賞 mixed by DJ和』を作りましたけど、1年に1枚ぐらいあってもいいな、と。そこでコンセプトや切り口を考えたとき、やっぱりこのコロナ禍の影響があって。現地でのイベントはほぼ無くなりましたし、音楽や映画も家の中で楽しむ流れがあるじゃないですか」

――今は便利なストリーミングサービスもありますし、より気軽に触れることができますからね。

「そういったところで昔の作品を改めて観たり、それ以外でもコロナ以前のイベントで撮った写真を見て、ホントに幸せだったなと感じたり、振り返るということをこの2年ぐらいはする機会が多かったと思ったんです。そこで、何かを思い返す、想像するようなミックスCDがいいんじゃないか、と」

――身動きが取れないこと、前へ進みにくいことに対してフラストレーションを感じるより、ひとつ考え方を変えた切り口で今を楽しもうという提案のようにも思います。

「そうですね。現実逃避ではないんですけど、なんかこう、このコロナ禍を自分たちにとってもっと意義のあることにするべきだなと思っていて。家にいることだったり、(いろんな作品を)手軽に見られることだったり、制限されているのならば、その中で楽しめることを考えたいんですよね」

――2000年代というところに目を向けたのは?

「音楽が一番盛り上がってた、CDが売れてた時代は90年代だと思うんですけど、今からだと遠いというか。それよりも、2000年代はちょっと前だけど、今でも鮮明に憶えてるし、思い返すにはちょうどいい時期なのかな、って。懐かしいんだけど、まだ最近という絶妙なライン。このあたりはまだあんまり語られてないところでもあるし、そこをテーマにしようと考えました」

――意外といいますか、00年代はまだそんなに目を向けられてないんですね。

「日本の音楽業界でヒット曲が一番生まれたのは1980年代後半から1990年代にかけてだと思うんですけど、いわゆるコンピレーションCDってその時代か、もしくは最新の曲をまとめたモノがほとんどなんです。それ以外となると、夏とか春とかテーマを絞った形にして、90年代から最新の曲までバーっと入れるみたいな。ただ、アニソンって1990年代の流れを受け継いで、00年代にいろんなモノが開花したところがあって」

――具体的に何かを挙げるとしたら?

「例えば、1995年に『新世紀エヴァンゲリオン』が放送され、あそこら辺から大事件が起きていったように思うんです。それこそ、みんながアニソンという表現を使うようにもなっていったし。それ以前の時代って、アニソンというよりアニメの曲みたいな認識で、ジャンルとして括られてなかったじゃないですか。90年代以降、アニソンを熱心に聴く人が増えて、そこから広がっていったし。今の令和のアニソンにつながるスタート地点って、そこらへんじゃないかな、と」

――今につながるアニソンというカテゴライズが徐々に構築されていったのが2000年代だと。

「もうちょっと細かくいうと、20002005年ぐらいまでは1990年代からの流れが色濃くて、そこまで変化はないんです。ただ、2006〜2010年になると一気に開花していったというか。『らき☆すた』や『涼宮ハルヒの憂鬱』あたりですよね。みんな作品を観て、曲を聴いて、それがどんどん広がっていって、みたいな」

――となると、2000年代は過渡期であり、混沌としていたところもある。

「今って、あの作品が売れたから、こういうのが良さそう、っていう観点もあると思うんです。このジャンルはあの監督でここの制作スタジオがやってる、みたいなのもあったり。でも、2000年代はホントにバラバラで、何かヒットするかも分からないし、その偶発的なことすらも楽しんでいたような気がしてますね」

――『らき☆すた』は、アニメの舞台となった土地へ実際に足を運ぶ聖地巡礼でも話題になりましたよね。

アニメ聖地巡礼自体はそれ以前からもありましたけど、『らき☆すた』も初期の方でしたね。あれも作品側が行ってくれといったわけじゃなくて(笑)、観た人が感化されて現地へ向かった、という。で、最終的には自治体コラボしたり。そういったことが根付いていったのも00年代ですね」

――こういったミックスCDを制作する際、曲単位で考えていくんですか? それとも、作品をまずピックアップして、のような流れだったり?

「やっぱり、記憶だけを辿っていっても見落としちゃうことがあるんで、まずは2000年代アニメ作品をリスト化して、そこから考えていきました」

――記憶を回収しつつ、改めて確認もする。

「そうです。だから、ひたすらアニメ作品を辿っていって、ミックスCDの中に入ってたらやべえなという曲を挙げていくという作業でした」

――そういった中でどの曲にするかというのも重要なポイントですよね。

「さまざまなところでDJをしているので一番有名な曲、盛り上がる曲はわかってるんですけど、今回は思い返すというテーマがあるので、エモさ重視というか、いわゆる代表曲じゃないモノも使わせてもらったんですよ。カラオケの定番曲やまず挙がるような曲は素晴らしいからこそ、そういった存在になっている。ただ、そういう曲は今もみんな聴いてるし、懐かしさを感じてもらうにはこっちの曲だな、みたいな考えがありました」

――今回はオープニングテーマエンディングテーマが多く選曲されてますが、『Angel beats!』、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『時をかける少女』では挿入歌をピックアップしています。

「それこそ、『涼宮ハルヒの憂鬱』は00年代を語る上では必須な作品であり、曲自体もそういった存在。1曲だけ選べといわれたら、DJの数だけ候補曲が挙がるんですよ。そんな中でも一番手は『ハレ晴レユカイ』なんでしょうけど、エモいアプローチを考えた結果、『Lost my music』にしました。この曲はDJでプレイしてるときもイベントの最後とか、エンディングで流すことが多かったりもして、今回も本編の締めくくりのような形で使わせてもらってます。この後に続く『君の知らない物語』(『化物語』)以降がアンコールみたいな」

――そのアンコール3曲の中に「変わらないもの」(『時をかける少女』)もありますね。

「この作品には『ガーネット』と『変わらないもの』という2大巨頭的曲があるんですけど、僕は『変わらないもの』が流れるシーンが好きなんで、こっちだよな、と(笑)

――でも、大事ですよね、そういったこだわりは。

「あと、『Angel beats!』はめちゃめちゃ象徴的な曲があって、どれもクオリティが高いんです。正直、使わせてもらえるならどれでもいいな、というぐらい(笑)。『一番の宝物』というバラードの候補として考えたんですけど、こういったノンストップミックスCDだと入れどころが難しいんですよね」

――いきなりチャンネルが切り替わるような展開になりますし。

「そうなんですよ。バラードで落とした後、どういう流れにするんだ、っていう。ノンストップで最後まで聴けるのが作品のコンセプトでもあるんで、あんまりこう、止まらないようにしたい。バラードはいちばん最後にするっていう選択肢もあるけど、すでに「secret base ~君がくれたもの~ (10 years after Ver.)」(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』)や『変わらないもの』という超泣けるバラードを選んでいたし。そういうせめぎ合いもありましたね」

――また、唯一「化物語」は「恋愛サーキュレーション」と「君の知らない物語」という2曲がピックアップされてますね。

「これは何ていうんですかね、『物語』シリーズ2000年代を象徴するような作品ですし、名曲も多い。これは入れなきゃダメだなと思ったんです」

――それぞれの曲を選んだ理由は?

「まず、『君の知らない物語』は、アニソンで有名な曲を上から数えて5番目以内に入るような、もはやワールドアンセムレジェンドアニソン感というか、これを外す理由はないな、と。『恋愛サーキュレーション』に関しては、今でも2年に1回ぐらいはバズってるというのもあって。最近もTikTokでかなり使われてたり」

――ポップで可愛らしい曲ですよね。

「それこそ、『恋愛サーキュレーション』は1曲目にしようと考えてたときもありました」

――結果、今回の1曲目は「もってけ!セーラーふく」(『らき☆すた』)になりました。

ミディアム調の『恋愛サーキュレーション』からスタートして、どんどんテンションを上げていく流れだと、結構スロースタートになるような感じもあって。それより、一気にロケットスタートした方がいいかなと思い、『もってけ!セーラーふく』を選びました」

――勢い重視というところだと、「ハム太郎とっとこうた」(『とっとこハム太郎』)から始めるようなことも考えたり?

「それも考えました(笑)

――改めて収録された曲を見ると、「ハム太郎とっとこうた」の存在感が凄いですよね。

「この曲はDJ界隈だとアンセムの一つなんです。僕も結構いろんな現場で流すんですけど、みんな”大すきなのは ひまわりのタネ”というキラーフレーズを叫べる。こんなに分かりやすくコールレスポンスができる曲ってなかなかないんです。で、調べたら2000年リリースされたというのもあり、これは入れるべきだな、と。それに、今の深夜アニメにつながるラインだけじゃなくて、夕方アニメも朝のアニメも全部があっていいなとも思って。2000年代って、そういったゴチャゴチャ感があったし」

――実際、今回のラインナップはアニソンという括りがなければありえないですよね。

「そうですね。それがこういったコンピレーションの面白さのひとつでしょうし。2000年代も後半になってくるとアニソンJ-POPラインに入ってきたりするんですけど、その流れも楽しめるかな、と。頭の中の感覚がどんどん揺さぶられていくので、それも味わって欲しいですね」

――現場で「ハム太郎とっとこうた」のリアクションが大きいというお話がありましたが、他にもそういったところのフィードバックで感じたことが選曲につながったモノはありますか?

「今回、いわゆるゲーム原作といわれるアニメの曲が並んでいるところがあって。『サクラサクミライコイユメ』(TVアニメD.C. ~ダ・カーポ~』)や『リフレクティア』(『true tears』)あたりなんですけど、このへんはアニソンのDJイベントだとめちゃめちゃアンセムですね。みんな、頭を抱えて寝転がるような楽しみ方をしてたり」

――えっ、それはどういった状況なんですか?

「おそらく、DJイベントといえば、みんなワーっと手を上げて楽しんでいるようなイメージがあると思うんです。EDMとか、ULTRA JAPANみたいなひたすら盛り上げる系だとそうなんですけど、アニソンの場合はそういう楽しみ方もできれば、泣ける曲が流れたら急に静かになって正座して聴いてたりとか、振り幅が凄いんですよ。アニメを観てた人にとっては、いろんなことを思い出すから」

――曲自体に感じることもあるけど、その作品についても想いも重なったり。

コロナ禍以前の話ですけど、クラブだとDJブースとお客さんの距離が近いんですね。だから、曲を切り替えた瞬間、いろんな奇声が聴こえてきたりもして。その作品や曲が好きすぎて、『やめろー! 殺す気かー!』とか、そんな声が飛ぶこともあります(笑)

――いわゆる押すな押すな状態(笑)

「聴くと泣いちゃうから、っていう(笑)

――『時間旅行[DJ和の"あの頃"アニソンMIX]』というタイトル通り、曲はもちろんのこと、作品に対してだったり、観ていたときの自分の状況等、いろんな感情蘇ってくるような1枚になっていますね。

「この作品をキッカケにして、つながっていくと嬉しいですね。結構、今までを振り返るとか懐かしむって、もっと大人がやることだと思ってて。今、僕は34歳なんですけど、そうやって懐かしむ世代になってきたんだなと実感してます(笑)

――DJ和さんはストリーミングサービスを使った形でのプレイリストもたくさん公開されているじゃないですか。でも、こういった作品はCDとして発表している。そのこだわりについてお話してもらえますか?

「時代的にストリーミングサービスYouTubeで音楽を聴くことが増えて、僕自身も超便利だなと思って使っているんですけど、まずはモノとして残したいという気持ちが一つ。ネット上にある音楽って、いってしまえばデータじゃないですか。ミックスCDの場合だと、いろんな曲がつながった一つのオーディオファイルになるわけですけど、僕の場合、他の方々の曲をお借りしてCDを作らせていただいている作品になるので、それだけだと価値が生まれないなと思ってるんですよね。ただ集めているだけど苦労が足りないな、と。だから、漫画家あらゐけいいちさんにジャケットを描いていただき、アニメ音楽評論家の冨田明宏さんに解説を入れていただき、それらを全部含めて一つの作品という感じなんです。0から1にしてるわけじゃないし、すでに100の価値があるモノを100のまま発表するんじゃなくて、いろんなモノをかけ合わせて200にしたい。そうすることによって、DJとして、僕としてのモノづくりの価値が生まれるんだろうなと思ってます」

――自分なりのひと工夫をして、改めて提示していきたいという。

「そうですね。例えば、多くのコンピレーションCDって歌詞が載ってなかったりするじゃないですか。でも、僕の場合、40曲入れたら40曲分の歌詞も載せる。だから、CD自体も結構重いんです(笑)

――確かに、DJ和さんが企画してるミックスCDって収録曲のボリュームだけじゃなく、物量的にも重いですよね。

「それって、重要なことだと思ってて。ただ曲が入ってるだけだとストリーミングサービスで聴けばいいじゃん、となったりもするし。取っておきたくなるモノにしたいという気持ちは昔からありますね」

――この『時間旅行[DJ和の"あの頃"アニソンMIX]』が29作目になるわけですけど、30作目は何かしらアニバーサリー的なことを考えたりも?

「いや、全然考えてなかったというか。何作目って気にすることがなくて、僕自身も忘れてたりもするぐらい(笑)。ただ、時代の流れを見極めつつ、常に新しいことを考えていくんですけど、CDという存在がこの先どうなるのか。その問題は常に抱えてまして」

――実際、CDを再生する機械を持ってない人も多いですからね。

「でも、そこでネガティブになるより、CDと共にどこまでいけるのか試したいという気持ちにもなってて。その限界への挑戦というか」

――あとは『時間旅行[DJ和の"あの頃"アニソンMIX]』で生まれたリアクションから生まれるアイデアもありそうですしね。

「そうですね。DJって、かけた曲の反応を待ってるというか、リアクションが良かったからこっちの曲へつなげる、といったこともしますから。作品としても反応次第で変わっていくところがあるし、そのあたりも楽しみたいですね」

取材・文=ヤコウリュウ

『時間旅行 [DJ和の"あの頃"アニソンMIX]』をリリースするDJ和/撮影=大石隼土