手紙がメールに置き換わり、スマートフォンが当たり前になり…とデジタル化が進む一方で、手帳やペン、シールスタンプなど、アナログ文房具も根強い人気を誇る。万年筆インクにハマってコレクションする人たちを指して、“インク沼”という言葉があるほど。そうした万年筆インクを使って、おしゃれな装飾文字を手書きする「ハンドレタリング」にも注目が集まっている。自身も“インク沼”の住人で、レタリング作家として活動するbechoriさん(@bechori777)に、レタリング作家になったきっかけや、手書き文字の魅力について聞いた。

【画像】文字に自然にできる濃淡や、にじみがインクで書く文字の魅力!

■海外作家の動画で感銘。自分も書いてみたい!から万年筆インク沼にドボン

もともと、文字を書くことが好きで、小学生から中学生にかけて習字は習っていたというbechoriさん。

「自分では覚えていないのですが、小さいころには新聞紙の上に紙を置いてなぞり書きをしていたくらい文字に興味がありました。習字も自分から行きたいと言いだして通って。ただ、西洋の書道とも言える“カリグラフィー”や“ハンドレタリング”のことは知らずにいたんです。2016年ごろにYouTubeで海外作家の有名な手書き文字の動画を拝見して、そこで『自分でも書いてみたい!』と思い、ペンやインクを揃えました。そこからどんどんのめり込んで、最初は趣味としてインスタグラムに書いた作品をアップしていたのですが、今は作家として活動しています」

のめり込んだ結果、インクは約2000色、ガラスペンは約100本所持しているという。特にインクは一口で「青」といっても、ニュアンスが異なっていたり、ラメが入っていたりとメーカーによってさまざまなので、どんどん増えてしまうんだそう。

「通常の万年筆だと一度インクを充填すると同じインクを使い続けないといけず、色を気軽に変えることができません。つけペンやガラスペンだと、色をテンポ良く変えることができるので、好んで使っています。ぷっくりとしたアルファベットを書くのにはオーナメントニブというペン先が丸い特殊な金属製のものを使っているのですが、2〜3mm幅の太い文字が簡単に書けるので、ラメ入りのインクがとても映えます。インクティッシュに付けると分かりやすいのですが、このインクにはこんな色も混じっていたのか!という驚きもあります」

オーナメントニブを使った作品では、2種類のインクを交互に使って文字を書くのが“bechori流”。文字と文字のつなぎ目に生まれるグラデーションが美しいインクで文字を書くと自然と濃淡ができ、そのゆらぎも大きな魅力の1つとなっている。

■「字を書くことで重要なのは上手い、下手ではなく、楽しいかどうか」

bechoriさんいわく、文字を書くことは「心の骨盤矯正」なのだそう。ペンを持ち、集中して紙に向かうと、おのずと気持ちが落ち着いていくという。

インスタグラムアップしている作品は、その日ごとに書きたいことを考えて取り組んでいます。レイアウトは事前に別の紙に下書きした上で本番に臨みます。でも、書き損じは多くて、10回やり直したりとかはザラです。一番難しいのは日本語の2、3文字の単語。画数が少ない文字ほどバランスをとるのが難しいですね。作業場が乱れていると文字にも表れてしまうので、机の周りに余計な物は置かないように、普段から整理整頓は心掛けています。レタリング作家になったことで、文字を書くことが仕事になりましたが、飽きるとか、書きたくないということは全くないです。できることなら毎日いろいろな画材でいろいろな字を書いてみたいですね」

手書きに興味はあるけれど、自分の文字が好きではないという人へのアドバイスを求めると「周りと比べないことが大事」とのこと。

インスタグラムとかを見ていると、素敵な文字を書く人がたくさんいて、自分もそういう字を書かなきゃいけないと思ってしまうことがあるかもしれません。しかし、重要なのは上手い下手ではなく、楽しいかどうか。周りと比べないこと。それと、完璧主義にならないことも大事です。自分が楽しめるペースで文字を書ければ、それでいいのではないでしょうか」

ハンドレタリング万年筆インクでなくても楽しめる。bechoriさんの作品のなかには大手文房具メーカーが広く販売しているペンを使ったものもある。“おうち時間”が増えた今、ゆっくりと文字を書き、心を整える時間を持ってみはどうだろうか。

取材・文=西連寺くらら

「夢を羽ばたかせよう!」という意味のポジティブなフレーズを、気分の上がるポップな色のインクで