学校の成績を上げたかったり、どうしても合格したい資格があったりするのなら、一夜漬けするよりも、適度に休憩をはさみながら反復して勉強したほうが学習効果が高い。
これは「分散効果」や「分散学習」と呼ばれるもので、すでに19世紀にはドイツの心理学ヘルマン・エビングハウスによって指摘されていた。
分散効果の正しさはその後もずっと確認されてきたが、それが発揮される具体的な仕組みは今もなおよくわかっていない。
『Current Biology』(7月28日付)に掲載された研究では、その背後にあるらしき神経細胞の活動が観察されている。それによると、その仕組みはちょっと直感に反するものであるようだ。
ドイツ、マックス・プランク神経生物学研究所などのグループは、適度に休憩をはさみながら反復して学習した方が記憶力が上がるという「分散効果」の仕組み理解するために、迷路に隠されたチョコレートをマウスに探させるという実験を行なっている。
マウスは1日に3回だけ迷路に挑戦できた。迷路の構造やチョコレートの位置は毎回同じなので、隠し場所をきちんと覚えておけば、その都度ご褒美をゲットすることができた。
ただし再挑戦できるまでの間隔はマウスによって違う。すぐに再挑戦させてもらえるマウスもいれば、次の挑戦までしばらく待たされるマウスもいた。
さらにこの実験の翌日にも同じ迷路に挑戦してもらう。マウスは前日のことを忘れずに覚えており、見事チョコレートをゲットできただろうか?
長期的には休憩を長くとったマウスの方が記憶力がアップ
面白いことに、短期的には、再挑戦までの間隔が長かったマウスは、なかなかチョコレートの場所が覚えられなかったという。この点、集中して迷路に挑戦したほうがご褒美の在処を記憶しやすかったようだ。ところが翌日になると、学習効果が逆転する。チョコレートの場所をはっきりと覚えていたのは、間隔を長くとったマウスだったのだ。
意外な神経活動のパターン
研究グループは、このとき脳内で起きていた出来事も観察している。彼らが観察したのは、学習プロセスを担う「背内側前頭前皮質(dorsal medial prefrontal cortex)」という脳の領域だ。直感的には、迷路に再挑戦するまでの間隔が短いときは、似たような神経回路が活性化すると思えるのではないだろうか?
挑戦が連続していれば、それらを同じ出来事として処理するだろうと考えられるからだ。一方、再挑戦までの間隔があけば、新しい出来事として処理されるので、別の神経細胞が活発化する。
ところが実際に起きたのは、それとは正反対のことだった。
同じ神経細胞が活発になったのは、再挑戦までの間隔が長いときだったのだ。そして短い間隔で連続して挑戦した場合、異なる神経細胞クラスターが活発になった。
分散効果の背後にあるメカニズム
研究グループによると、この直感に反する現象は、学習と学習の合間に長期記憶が強化されることを示すものと考えられるのだという。そして、これこそが分散効果の背後にあるメカニズムであるようだ。ちなみにマウスの場合、翌日にチョコレートの在処を一番覚えていられたのは、30分か60分間隔をあけたときだったという。これより短くても長くてもダメだったそうだ。
なら人間はどうなのかって? そう焦らずに、まずは繰り返し勉強する習慣をつけてみてはどうだろうか?
References:Neuroscientists discover how taking breaks while learning improves memory / written by hiroching / edited by parumo
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