大手スマホメーカーのSamsungは11日、同社新製品発表会「Galaxy Unpacked」をオンラインで開催し、最新折り畳みスマホ「Galaxy Z Fold3 5G」と「Galaxy Z Flip3 5G」を発表した。この2モデルに関する海外メディアの反応は、賛否両論だ。

【写真】横に折りたたむ最新型スマホ「Galaxy Z Fold3 5G」

ハイエンドモデルと普及版の2段構え

 Galaxy Z Fold3 5GとGalaxy Z Flip3 5Gはともに折り畳みスマホではあるが、位置づけが異なる。前者は大画面かつ多機能のハイエンドモデルなのに対して、後者は価格を抑えた普及版だ。

 Galaxy Z Fold3 5Gの特徴を要約すると、以下のようになる。

・スマホの側面を軸として折り畳む設計。折り畳んでいる状態で画面サイズは6.2インチ、開くと7.6インチ。開いた時にはメインセルフィ―カメラが見えにくくなる。
・Dolby Atmosステレオスピーカーに対応し、没入感のあるサウンドを実現。
・大画面をフル活用するUI「One UI」を採用。
Samsungの折り畳みスマホとしては初めてSペンに対応。
・大画面を3分割して3つのアプリを表示できる。
・カバーディスプレイとメインディスプレイの両方が120Hzのリフレッシュレートに対応。

 Galaxy Z Flip3 5Gの特徴を要約すると、以下の通り。

ガラケーのように端末中央部を折り畳む設計。折り畳むと4.2インチとなり、ポケットにすっぽり収まるほどにコンパクトになる。
クリームファントムブラック、グリーン、ラベンダーの4色のカラーバリエーション。
・1.9インチのカバーディスプレイを使えば、端末を開かずにメッセージの確認、写真撮影
音楽の再生などが可能。
・6.7インチのメインディスプレイは120Hzのリフレッシュレートに対応。
・画面を2分割してマルチタスクを楽しめる。例えば、YouTubeを見ながらメッセージが送信できる。
Galaxy Z Fold3 5Gに比べて安価。Flip3 5Gは999.99ドル(約11万円)。Fold3 5Gは1799ドル(約19万9,000円)。

 両モデルのさらなる詳細は、それぞれの公式サイトを参照のこと。なお、日本での販売スケジュールに関しては、現時点では未定である。

・Z Flip3 5Gで折り畳みスマホ普及は加速?

 Galaxy Z Fold3 5GとGalaxy Z Flip3 5Gを報じた海外メディアのなかでも、CNETが公開した記事は両モデルを高く評価している。その記事では、両モデルの設計は折り畳みスマホが「見た目ほどには壊れにくいことを消費者に安心させること」を目指しており、価格に関しても「折り畳みスマホは超高額」という印象を払拭しようとしている、と述べている。

 両モデルの価格については、Samsung電子アメリカ法人のモバイル製品管理担当バイスプレジデントのDrew Blackard氏が「私たちはついに想定していた価格帯に辿りついたと考えています」と発表イベント前のインタビューで答えていた。

 Galaxy Z Flip3 5Gを報じた他のCNETの記事は、同モデルこそが折り畳みスマホの普及を前進させると期待を寄せている。そのような期待を寄せる理由として、前述のように折り畳みスマホとしては廉価であること、そして豊富なカラーバリエーションを挙げている。

 さまざまなアクセサリーがあることも、Galaxy Z Flip3 5Gの魅力となっている。ケースだけでSilicone Cover with Ring、Silicone Cover with Strap、Clear Cover with Ring、Leather Cover、Aramid Coverの5種類がラインナップされているうえに、Galaxy Watch4と同期するのだ。

・折り畳みスマホはかつての3Dテレビ?

 CNETGalaxy Z Fold3 5G/Flip3 5Gを高く評価する一方で、US版WIREDは両モデルが属する折り畳みスマホ市場自体に疑念を呈した記事を公開した。

 WIREDの記事は、Samsungの最新折り畳みスマホ2モデルが以前のモデルより印象的であるとして評価する一方で、それでも折り畳みスマホ市場は依然としてかつての3Dテレビのようである、と評する。

 2010年代初頭に登場した3Dテレビは、需要が沈静化した薄型液晶テレビに続く新たなテレビ製品カテゴリーとして注目された。しかし、対応コンテンツが普及しなかったために、2010年代半ばには3Dテレビ市場は衰退して、3Dテレビが次々と生産中止となった。

 折り畳みスマホ市場も、3Dテレビ市場と同じ末路をたどる可能性が否定できない。というのも、現状では折り畳みスマホに最適化されたアプリが不足しているからだ。折り畳みスマホが登場したタイミングも3Dテレビに似ている。折り畳みスマホはスマホ市場が成熟して売上がかつてのようには成長しなくなった時期に、こうした停滞を打破する新カテゴリーとして開発されたと考えられている。しかし、現状では折り畳みスマホ市場はスマホ市場全体の小さい一部に過ぎない。

 もちろん、折り畳みスマホ市場が成長すると予想するアナリストもいる。例えば、調査会社IDCのモバイルデバイス部門リサーチマネージャーのJitesh Ubrani氏は、2021年の折り畳みスマホの出荷数は前年の190万台から700万台に増えると予想している。同氏が考える折り畳みスマホ市場が成長する根拠は、折り畳みスマホは潜在的にスマホ、タブレット、PCのすべてを代替するデバイスだからだ。

 Galaxy Z Fold3 5GとGalaxy Z Flip3 5Gは折り畳みスマホとして魅力的ではあるが、折り畳みスマホ市場自体が今後成長するかどうかは、意見が分かれるところだろう。同市場の成長は、もしかしたらiPhoneシリーズから折り畳みモデルが登場するかどうかにかかっているのかも知れない。(吉本幸記)

「Galaxy Z Fold3 5G」(左)と「Galaxy Z Flip3 5G」(右)