JR東日本が運行している観光列車「SL銀河」は、C58蒸気機関車が、「キハ141系700番台のディーゼルカー」を牽引しています。しかしこの車両、もともと国鉄時代の50系客車で、様々な改造を経ているのです。

客車→ディーゼルカーに変身

2014(平成26)年4月より釜石線で運転している観光列車「SL銀河」。JR東日本が所有する動態保存機のひとつ、C58蒸気機関車がけん引する列車として人気がありますが、使用される車両は12系客車や14系客車でもなく「キハ141系700番台」です。

このキハ141系700番台、JR北海道キハ141系を譲り受けて改造したディーゼルカーで、もとは50系客車でした。

50系客車は、国鉄が1977(昭和52)年から1982(昭和57)年にかけて製造した車両で、赤い車体色から「レッドトレイン」とも呼ばれました。本州以南用のオハフ50形とオハ50形とともに、1978(昭和53)年から1982(昭和57)年にかけては北海道向けに小さめの二重窓となった51形(オハフ51形とオハ51形)も製造、総計953両が日本各地で使用されました。

50系客車は国鉄分割民営化によりJR東海を除く旅客会社に引き継がれましたが、客車列車を電車やディーゼルカーに置き換えることにより余剰が発生。JR北海道では札沼線学園都市線)の輸送力を増強するため、コストの面からディーゼルカーを新製せず、余剰となった50系客車(オハフ51形)を1990(平成2)年から1995(平成7)年にかけて改造してキハ141系としました。

キハ141系はキハ141形・キハ142形・キハ143形・キサハ144形からなるグループです。キハ141形は駆動するエンジンを1基、キハ142形は2基搭載し、キハ143形は出力を増強したエンジンを1基搭載、キサハ144形は運転台やエンジンを搭載しないといった違いがあります。

札沼線学園都市線)を中心に使われましたが、2012(平成24)年6月に桑園~北海道医療大学間の電化が完成すると余剰が発生。同年10月のダイヤ改正にて札沼線での運転を終了しました。現在、北海道では2両編成で室蘭本線室蘭~苫小牧間や札幌~東室蘭間の普通列車に使用されるに留まっています。

なぜ「SL銀河」にディーゼルカー?

さて、JR東日本では「SL銀河」を運行するにあたり、なぜキハ141系を導入したのでしょうか。

実は釜石線には急勾配区間があることから、C58蒸気機関車をサポートするために動力のあるキハ141系(キハ142形、キハ143形、キサハ144形)4両を譲り受けて改造したのです。

JR東日本では改造に際して、車内を「宮沢賢治の生きた大正から昭和の世界観」としてガス灯風の照明やステンドグラス、植物のパーテーションなどを設けており、50系客車の面影はあまり残っていません。しかし、キハ141系700番台にはJR北海道では見られなくなった、エンジンを搭載しないキサハ144形が連結されています。C58蒸気機関車のけん引でキサハ144形に乗車すれば、かつての50系の雰囲気を味わえるかもしれません。

ちなみに、50系客車をディーゼルカーに改造した例はJR西日本にもあります。それがオハ50形を改造したキハ33形です。JR北海道キハ141系よりも2年早い1988(昭和63)年に2両が登場し、主に境線や山陰本線で使われました。しかし、2010(平成22)年に廃車となり、このうちの1両(キハ33 1001)が「津山まなびの鉄道館」(岡山県津山市)で保存されています。

釜石線を走る「SL銀河」。JR北海道から譲り受けたキハ141系を改造したキハ141系700番台を使用する(画像:写真AC)。