化学材料や食品などの製造工程で広く用いられる蒸発・蒸留装置は、大量のエネルギーを消費するため、これら装置の省エネ化が課題でした。木村化工機株式会社(以下「当社」)はこれまで、従来の装置に比べて大幅に省エネ化できる蒸発・蒸留装置の開発に取り組んできました。今年5月には、一般社団法人環境共創イニシアチブが公募した「令和3年度先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金 『(A)先進事業』先進設備・システム」(以下「本補助金」)に、当社が開発した4種類の装置が採択されました。このたび、これらを含む、当社が開発した全ての省エネ型蒸発・蒸留装置を解説する論文が、月刊誌『化学装置』(発行:工業通信、以下「本誌」)に、2021年9月号から11月号にわたって掲載されます。

で解説する(本補助金に採択された4つの装置

装置1.ヒートポンプ式アンモニア回収装置(図1)
 ヒートポンプを用いることで、熱回収コンデンサの冷却水から廃熱を回収し、リボイラの熱源として再利用する。また、熱回収コンデンサを追加することで、ヒートポンプの低温水温度を95℃である高温水に近い温度するため、高COPヒートポンプ(COP:5~7.5)を採用することができる。蒸留塔を分割することにより、熱負荷の小さな濃縮部の塔径を回収部の1/3~2/3にすることができる。
ヒートポンプとは、エアコンや冷蔵庫と同様に、電力と内部に循環する冷媒を用いて、熱を温度の低い場所から高い場所へ移動させる装置のこと。熱を発生させるのではなく、電力を用いて低温の廃熱を回収し、ヒートポンプで温度レベルを上げることで、エネルギーを効率的に利用でき、省エネ効果が期待できる。
 詳細:https://www.kcpc-engineering.co.jp/ede/nh3-rqp/

図1.ヒートポンプ式アンモニア回収装置(当社尼崎工場内に設置したテスト装置)


装置2.省エネヒートポンプ式蒸留装置(図2)
 汎用ヒートポンプを蒸発・蒸留プロセスに導入して、コンデンサの冷却水から排熱を回収し、加熱器(リボイラ等)の熱源として再利用することで、蒸気の使用量を削減し、コストダウンと省エネ化・CO2削減を実現する。
 詳細:https://www.kcpc-engineering.co.jp/ede/ghp-ed-tech/
図2.省エネ型ヒートポンプ式蒸留装置 (名糖産業(株) 八王子工場にて施工)


装置MVR型蒸発濃縮装置
 自己蒸気機械圧縮(MVR;Mechanical Vapor Recompression)型の蒸発濃縮装置。供給液を濃縮する際にヒーターから発生するベーパーを圧縮機によって昇圧・昇温させ、自己の加熱源として再利用できることが特長。定常運転時には加熱用熱源蒸気および冷却水がほとんど不要となる。当社のMVRは環境省による2019年度L2-Tech認証製品として認証を受けた。本装置の定常運転時のエネルギー源は圧縮機の電力となるが、圧縮機がベーパーを圧縮するためのエネルギーは、蒸発に必要な熱エネルギー(蒸発潜熱)に比べて非常に小さいため、エネルギー消費量を飛躍的に低減させることができる。ベーパーの熱エネルギーを圧縮機で昇圧・昇温させることでエネルギーを連続的に再利用することから、大幅な省エネルギーを実現する。
 詳細:https://www.kcpc-engineering.co.jp/ede/mvrtype-evaporator/
図3.MVR型蒸発装置(3Dイメージ)


装置4.MVR型高沸点溶剤回収装置
 MVR型蒸発濃縮装置をさらに進化させ、蒸留装置に適用した装置。蒸発ベーパーを蒸留塔の塔頂から蒸気圧縮機に送って昇圧し、圧縮蒸気を蒸留塔のリボイラ熱源として再利用するヒートポンプシステム。塔頂ベーパーの蒸発潜熱を凝縮で損なうことなく自らのプロセスに再利用することにより、大幅な省エネルギーを実現。当社では、本システムについて数多くの実績を有しており、安定した蒸留操作と省エネルギーを実現するノウハウを確立している。
 詳細:https://www.kcpc-engineering.co.jp/ede/mvrtype-hybrideqp/
図4.MVR圧縮機(3Dイメージ)



●本誌掲載の概要
・掲載誌:
   月刊誌『化学装置』(発行:工業通信)2021年9月号・10月号・11月号

・論文タイトル:
   「脱炭素社会に向けた省エネヒートポンプ式および蒸気圧縮機式蒸留装置活用による大幅なCO2削減」

・論文の概要:
 1.はじめに
    国内外のエネルギー消費量が拡大し、地球温暖化が問題となっているが、依然として蒸留プロセスでは
    大量のエネルギーが消費されている。そこで木村化工機は蒸発・蒸留プロセスの省エネ化に
    取り組んできた。

 2.当社の省エネ蒸留装置開発の歴史
    木村化工機は1999年にNEDOの研究開発プロジェクトで、理論上最高の省エネ性能を持つ
    「HIDiC(内部熱交換型蒸留塔)」の実証実験に世界で初めて成功。その後、
    「省エネヒートポンプ式蒸留装置」、「ヒートポンプ式アンモニア回収装置」、
    「MVR式蒸発濃縮装置」、「MVR型高沸点溶剤回収装置」などの省エネ蒸留装置を開発してきた。

 3.省エネヒートポンプ式蒸留装置の詳細
  3-1.ヒートポンプの原理
       ヒートポンプの原理を説明。
  3-2.ヒートポンプに採用できる低GWP冷媒
        (株)コベルココンプレッサ製スクリュー式水冷ヒートポンプに採用できる低GWP冷媒の紹介。
  3-3.蒸留装置へのヒートポンプ適用時のポイント
       熱源水と加熱温水の温度差ヒートポンプの加熱COPとの関係、
       また、その温度差が大きく加熱COPが小さくなる時の設計上の工夫を紹介。
  3-4.当社開発の省エネ型蒸留装置へのヒートポンプ適用マップ
       当社の開発した省エネヒートポンプ式蒸発・蒸留装置を、温度域と熱需要集中部によって分類。
  3-5.各装置の紹介
       各種ヒートポンプ式蒸留装置を詳細に説明。

 4.MVR式蒸発・蒸留装置の詳細
    各種MVR式蒸発・蒸留装置を詳細に説明。

 5.蒸気圧縮機式蒸留装置の詳細
    100℃を超える蒸留設備に適用可能な各種蒸気圧縮機式蒸留装置を詳細に紹介。

 6.ヒートポンプ式蒸留装置に対応するシミュレーションプログラムの詳細
    当社が開発した、複数のヒートポンプを組み込む蒸留装置に対応するシミュレーションプログラム
    について説明。そのプログラムを適用したヒートポンプ式蒸留装置の最適化へのアプローチ方法を説明。

 7.おわりに
    当社の革新的な省エネ型蒸留装置の開発経緯のまとめと今後の開発テーマおよび課題を説明。



●本誌(論文掲載媒体)概要
誌 名:化学装置(Plant and Process)
U R L:http://www.opt-online.jp/products/list52.html
版型・頁:A4判(本文80~112頁)
発 行 日:毎月25日 (該当日が日・祝祭日の場合は翌日発行)
発行部数:月18,000~20,000部
購 読 料:1部1,848円(税込)(別途送料200円)
出 版 社:株式会社 工業通信
住 所:〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-2-6堀口第2ビル



●本補助金の公募概要
公 募 元:一般社団法人 環境共創イニシアチブ
https://sii.or.jp/cutback03/overview.html
事業内容:環境・エネルギー制約及び経済的社会的環境の変化から生じる課題解決に向け、オープン・イノベーション等をもって、技術革新と市場創出を主導することを目的として各種事業を行っています。
公募期間:2021年5月26日(水)~6月30日(水)
交付決定:2021年8月下旬(予定)
事業期間:交付決定日~2022年1月31日(月)
補助対象経費:設計費、設備費、工事費
補 助 率:2/3以内(中小企業者等),1/2以内(大企業、その他)
補助金限度額:15億円/年度(上限額),100万円/年度(下限額)



●当社会社概要
社 名:木村化工機株式会社
U R L :https://www.kcpc.co.jp/
創 業:1924年11月  会社設立:1950年6月9日
資 本 金:10億3000万円
代 表 者:代表取締役会長兼社長 小林 康眞
従業員数:377名(令和3年3月31日現在)
上場取引所:東京証券取引所 市場第一部
住 所:〒660-8567 兵庫県尼崎市杭瀬寺島二丁目1番2号
TEL:06-6488-2501(代表)
FAX:06-6487-0303

配信元企業:木村化工機株式会社

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