レアル・マドリードについて語った宮澤ミシェル
レアル・マドリードについて語った宮澤ミシェル

サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第213回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、レアル・マドリードついて。リーガの新シーズンがついにスタートしたが、いまだに大型補強のニュースがないレアル・マドリード。そんなレアル・マドリードについて宮澤ミシェルは、「リーグ戦は問題ないと思うが、CLには不安がある」と語る。

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レアル・マドリードが鳴りを潜めてる。静かすぎる気がするくらいだよ。それだけにとんでもなく驚くことを企んでるんじゃと勘繰りたくなるんだよな。

レアルは昨季限りでジネディーヌ・ジダン監督が退任して、新監督にカルロ・アンチェロッティが就いた。

アンチェロッティ監督がレアルを率いるのは、これが2度目。前回は就任1年目の20132014シーズンにチャンピオンズリーグに優勝した。

準決勝で前年王者のバイエルン・ミュンヘンにホーム&アウェイで連勝し、マドリード対決になった決勝ではアトレティコ・マドリードとの死闘を延長戦の末に制したのは、よく覚えてるよ。

アンヘルディマリアを2列目で使ってクリスティアーノ・ロナウドカリム・ベンゼマガレス・ベイルを活かした。ハメス・ロドリゲスアンチェロッティ監督のもとでは輝いたよな。

だけど、2年目はサッパリ。ラ・リーガ優勝を2年連続で逃し、CLも準決勝でユヴェントスに敗れた。タイトルを手にできなくて、3年契約を1年残して解任された。

経験も実績も抜群の監督にようやくめぐってきたリベンジの機会だから、大型補強を仕掛けるのかと思ったら大きな動きはなし。

新型コロナ禍でどこのクラブも財政的に苦しいから、動きたくても動けない面はあるとは思うけど、本当に大丈夫なのか心配になるよ。

ベンゼマクロースモドリッチなど計算できるベテランが多いから、リーグ戦は普通にやれると思うけど、CLとなると不安要素がある。

そのひとつがCB。長いことDFリーダーをつとめたセルヒオ・ラモスが契約期間終了でパリ・サンジェルマンにフリーで移籍。相方だったラファエルバランマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。

守備の核が2人同時に抜けることでCBは大きなリスクを負ったよ。新たなCB候補は、ナチョ・フェルナンデス、エデル・ミリトンと、バイエルンを退団してフリーで獲れたDFダヴィド・アラバ。ここに昨季はレンタル移籍でグラナダでプレーしたヘスス・バジェホが加わるようだけど、相手の質と強度が高いCLの舞台で通用するのか。

観ている側が心配になるほど補強が進んでいないけれど、もともとレアルには戦力がダブついてる。そこをしっかり働かせればいいし。そうした既存戦力でなんとかしちゃうのがアンチェロッティ監督の手腕なんだよな。

「あの選手がほしい」「この選手は要らない」という監督のエゴを押し通したのがジダン前監督だけど、アンチェロッティ監督は手元にある素材でやっていこうとするタイプ。

とりわけ、レアルのように各国代表の自負心の強い選手が揃うチームを率いらせたら、選手のエゴや不満が噴き出さないように上手にまとめる。その手法で成績もそこそこ残してきたから、ビッグクラブから次々とオファーが来るんだ。

ただ、グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ)やクロップ監督(リヴァプール)のような明確なサッカー哲学を持つ監督ではないから、結果がついて来なければ切られちゃうんだけどね。

いずれにしても、選手個々のレベルが高いのは間違いないけれど、いまのレアルには華はないよな。銀河系と言われたレアルがいいわけではないけど、せめて一人くらい世界最高峰の選手は欲しいよ。ハーランドドルトムント)の獲得は今季は難しいようだから、噂に出ているキリアン・エムバペPSG)をどうにか連れてきてほしいな。

PSGメッシネイマールエムバペの揃い踏みも観たい。でもさ、メッシがいないバルセロナと、スーパースターのいないレアル・マドリードが引っ張るラ・リーガなんて寂しいじゃない。

それだけに移籍期限にレアルが何かを仕掛けてくれると期待もしているんだ。シーズンは始まるけど移籍期限最終日まで目は離せないよ。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太

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