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オーラで登場 「走り」極めたニスモ

text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

日産のカスタマイズカーブランドには「オーテック」と「ニスモ」がある。

【画像】2つのレシピ【オーラ・ニスモとノート・オーテックを比較】 全162枚

前者はセミオーダーメイド感覚のプレミアム性を軸としたカスタマイズを特徴としている。

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日産ノート・オーラ・ニスモ    山本佳吾

一方、ニスモはモータースポーツで培ってきたノウハウや発想を活かした内外装や走りの味付けを特徴としている。

試乗したオーラ・ニスモはノートの上級発展モデルとして開発されたオーラをベースに、ニスモ専用の内外装やサス、ホイールなどのカスタマイズが加えられたコンプリートカーとして設定されている。

内外装の違いは写真を見れば一目瞭然だが、外装については単なるドレスアップではなく、ダウンフォースの向上や空気抵抗(Cd値)の低減を図った性能向上アイテムでもある。

走行ハードについては前後ともにバネ定数アップ。ダンパーは減衰力を専用設定としたほかにフロントストラットは外筒の板厚増での剛性アップ、リアダンパーは応答性に優れた単筒式に変更。

車体補強の追加や専用にチューンされた電子制御パワステの制御特性など、全体のバランスを配慮したきめ細かな改良が加えられている。

パワートレーンはベース車と共通だが、出力制御特性を専用化。

ドライブモードは「ニスモ」、「ノーマル」、「エコ」の3モード設定となり、それぞれ加速応答性とエンブレ回生の利きが異なる。

また、エコモードはベース車のスポーツモード相当、ノーマルモードはニスモ専用チューンであり、実質的には全モードとも専用設定と考えていい。

カタログスペックに現れない走りの昂揚感を期待するには十分な内容だ。

すべてニスモ流 3つの走行モード

車重が10kgほど増加しているが、パワーウェイトレシオはほぼ同等。全開加速も目立った変化はない。

ニスモの動力性能の勘所は持てる力の使いようにあり、具体的にはパワーのコントロール性や加速感の演出にある。

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日産ノート・オーラ・ニスモ    山本佳吾

前項でも述べたように3つのドライブモードが設定されているが、ドライブフィールはモードによってけっこう異なっていた。

1番気になるのはブランド名を冠した「ニスモモード」だろう。

ふつうに考えればニスモの走りの神髄を示すモードと捉えるべきだが、実際は体感加速感を演出したモード。

一言でまとめるなら、踏み増し時の瞬発力を誇張しているのが特徴。

巡航や感減速から踏み増し直後の蹴り出しが利いている。

滑らかで連続的な加減速コントロールを求めるには不適であり、またそのままに踏み込んでいくと後の加速の盛り上がりに欠くのが難点だが、瞬発力がパワフルな印象を生み出す。

正確なコントロール性を求めるドライバーに最適なのはノーマルモードだ。

これもニスモのチューンであり、リニアリティを重視した特性。ニスモの標準(ノーマル)と納得してしまう。

応答遅れがほとんどなく、ペダル操作に性格に追従。加減速で微妙にコーナリングラインをコントロールするような走り方で絶妙な相性を示す。

エコモードになるとレスポンスは良好だが、踏み増し時のトルクが控え目。

ただ、深く踏み込んだ時の加速の盛り上がりやエンブレ(回生)の強化でニスモ/ノーマルモードと違ったスポーティな走りが楽しめる。

回生強化のニスモ流エコモードといった印象である。

プレミアムクラス? 全速度域で「扱いやすい」

フットワークの狙いどころはこれまで試乗したニスモ車と同じ。

操る手応えを演出するための無用な味付けはなく、操安性のセオリーに則った挙動と特性を基本としている。

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日産ノート・オーラ・ニスモ    山本佳吾

つまり、癖を理解して手当をするように乗りこなす必要がないわけだ。

ハンドリングの基本特性は、当然の如くコントローラブルな弱アンダーステア。

じわりと減速させてラインを絞るも開けながらラインを拡げるのも自在。

ロールなどではオーバーシュート気味の挙動が少なく、収束のための抑え操作もほとんど必要としない。ラインコントロールのための必要最小限の操作しか要求しない。

しかも、しっかりと後輪をグリップさせた挙動で前後輪のグリップバランスが安定しているので速度やコーナー半径が変わっても扱いを大きく変える必要がない。

どの速度域でも同じような感覚で操れるのも大きな長所。プレミアムクラスの高性能車を彷彿させる特性である。

ただし、逆に操舵だけで振り回すような扱いには反応が鈍く、一般的にいう軽快感とか切れ味という面では鈍なタイプでもあるが、そこはニスモ車の狙いではない。

ベースとなったオーラの素性のよさもあるのだろうが、スポーツ仕様相応の硬さは多少感じるものの乗り心地も悪くない。

路面段差には多少神経質な部分もあるが、総じてストローク制御はしなやかであり、収束性も良好。乗り心地の側面でも質感に優れたフットワークである。

レカロはOPも 意外に買い得感のある価格設定

現行ノートにニスモ仕様の設定はないのだが、カスタマイズ仕様としてオーテックが設定されている。

冒頭でも述べたように落ち着きのある大人っぽいプレミアム感が特徴。

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日産ノート・オーラ・ニスモ    山本佳吾

そしてニスモ仕様はノートの上級発展モデルとなるオーラへの展開となる。

オーテックとニスモの2つのキャラを使い分けた形となっている。

ちなみに価格はノート・オーテックが約250万円、オーラ・ニスモが約287万円。

ベース車の価格差は装備揃えなら20万円くらいの見当なので、ごくごく大雑把ながらオーテックとニスモの価格差も20万円程度と見積もっていいだろう。

ニスモ仕様はパワートレイン制御やシャシーにまで手を加えているので、意外と買い得感のある価格設定だ。

なお、オーラ・ニスモのインテリアの売り物の1つ、専用設計のレカロシートは39.6万円のオプションであり、前記価格には含まれていない。

ノートもオーラもプレミアムコンパクトとして完成度の高いモデルのため、無理してカスタマイズ仕様を選ぶ必要はないと思えるのだが、ベース車の持ち味を伸ばすようにカスタマイズされているので、「自分へのご褒美」的な贅沢を考えてしまうのがミソ。

しかも、オーラ・ニスモは良質な高速ツアラーとしての資質も高めたモデルなので、とくに長距離用途が多いユーザーにはメリット大。

カスタマイズ仕様はカーマニアのためのモデルと短絡せずに、走りの質にこだわったプレミアムコンパクトとして評価すべきモデルである。


【全方位ニスモ流】日産ノート・オーラ・ニスモ試乗 オーテックとは異なるレシピ