2021年10月23日(土)~11月3日(水・祝)新国立劇場 オペラパレスにて、2021/2022シーズン 新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』<新制作>が上演される。

本作品は吉田都舞踊芸術監督の就任第1作目として2020年10月の上演が予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の諸影響により延期となり、2021年10月の上演となった。

クラシックバレエのアイコニックな作品として有名な『白鳥の湖』。古典の最高傑作とも称される本作は、王子と姫の恋、それを邪魔する悪役、そして情景を美しく表現するコール・ド・バレエというクラシックバレエの基本要素が凝縮され、バレエ団としての真価が問われる作品だ。白鳥のオデットと黒鳥のオディールの二役を一人のダンサーが踊るのも本作の大きな特徴で、主役ダンサーの性格の違う二役を踊り分けるテクニックと表現力は注目すべき要素のひとつだ。

(C)Takuya Uchiyama

(C)Takuya Uchiyama

また、チャイコフスキーの叙情的な音楽は「情景」「四羽の白鳥の踊り」など有名な曲も多い。そうしたクラシックバレエの王道の魅力に加えて、今回上演するピーター・ライト版では演劇的な要素が加わり、まるでシェイクスピア劇のようなドラマティックさが際立つものになっている。さらに、フィリップ・プラウズによる重厚感のある美術・衣裳も、観客をその世界観へと誘ってくれる。

ピーター・ライト版ではプロローグ冒頭、王の葬儀のシーンから物語がスタートする。このように、王子をはじめとするキャラクターたちの置かれた状況や設定が論理的に示され、それぞれの心理描写も緻密に表現されている。3幕の宮廷の舞踏会、王子の花嫁候補たちの踊りも独特な演出のひとつ。民族舞踊の群舞だけでなく、3人の花嫁候補がバリエーションを踊り、各々が国を代表してやってきたというストーリーがしっかりと見える演出となっている。その他、4幕のそれぞれが意思をもった白鳥たちのドラマティックな群舞や衝撃的なラストなど、ライト版の見どころは多数。本公演の厚みのあるストーリー展開を楽しんでみてはいかがだろうか。

(C)Takuya Uchiyama

(C)Takuya Uchiyama

【ものがたり】
先王である父の死後、王子ジークフリードは新たな王として戴冠し、結婚することが求められていた。彼はそれまでの自由を失うことを恐れ、愛してもいない結婚相手を選ぶことにためらいを感じていた。ジークフリード21歳の誕生日の夜、彼に弓矢のプレゼントを贈るために宮廷の友人たちが集った。友人でもある侍従ベンノがジークフリードの気晴らしのために催した宴の真最中に、王妃である母が現れる。宮廷がまだ喪に服している中での大騒ぎにショックを受けた王妃は、翌日には花嫁を選ばなくてはいけないと王子に告げ、意気消沈した彼をその場に残して立ち去る。ベンノはジークフリードを元気づけようと、友人たちと未来の王位継承を祝って乾杯のダンスを踊る。友人たちが帰っていった後、白鳥の一群が空を渡っていく。ベンノはジークフリードにプレゼントの弓矢を試すよう促し、二人は白鳥たちを追っていく。
湖岸に着いたジークフリード王子は、ベンノに白鳥を探しに行かせる。一人残った王子は、そこに魔術師ロートバルト卿の邪悪な存在を感じとる。突然一羽の白鳥が舞い降りてくる。そして王子が驚き見つめるなか、美しい乙女に姿を変える。その若い娘こそオデット姫であった。オデットと彼女の仲間たちはロートバルト卿によって白鳥の姿に変えられ、夜の間だけは人間の姿に戻れるのだ。オデットにかけられた魔法は、まだ恋をしたことをない者が彼女に永遠の愛を誓い、結婚の約束をすることで解くことができるという。ジークフリードはオデットへの永遠に続く真実の愛を誓う。姿を現したロートバルトジークフリードが矢を向けるが、オデットはそれを遮り、魔術師が死ぬと、魔法の呪いは永久に解けなくなると話す。さらにオデットは、もしジークフリードが愛の誓いを破るようなことがあったら、彼女は永遠に白鳥の姿でいなくてはならないと伝える。やがて夜明けが訪れ、オデットと仲間たちは白鳥の姿に戻り、湖へと帰っていく。
翌日、壮麗なレセプションには、ジークフリード王子の結婚相手の候補として3人の王女が招かれていた。3人の王女たちはそれぞれジークフリードのために踊りを披露するが、彼は心ここにあらずの様子で、花嫁を選ぶことを断ってしまう。ファンファーレが鳴り響き、予定されていなかった客人の到来を告げる。それは使節に身を扮したロートバルトと、魔法でオデットそっくりに姿を変えた、彼の娘オディールだった。
王子は驚くほどオデットに似たこの見知らぬ客人に心奪われ、やがてこの女性が白鳥の姫だと信じ込んでしまう……。


舞踊芸術監督 吉田都より 上演に寄せて

この度、満を持して新制作の『白鳥の湖』を上演できることを嬉しく思います。新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年10月上演予定から延期となりましたが、バレエ団のダンサーたちと関係を築きながら1年間歩んでまいりましたので、より良いものをお見せできると確信しております。
 
今回のピーター・ライト版の『白鳥の湖』は、英国でも長年上演され愛されている、特別な作品です。ドラマ性が際立つ演出で、バレエ団を演技の面でも引き上げてくれるものと思います。私自身もコール・ド・バレエから主役まで、あらゆる役を経験しましたが、どんな役も一人ひとりが役割を持って存在しているとてもロジカルな演出で、ダンサーたちも演技に自然と入りやすいのではないかと期待しています。
 
このような状況下ではありますが、だからこそ観に来てくださるお客様には夢心地になるような、上質の舞台をお届けしたいと切に思っております。ぜひ劇場にて、非日常の世界をお楽しみいただけましたら幸いです。

2021/2022シーズン 新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』<新制作>