2015年に国連が定めた17の目標「SDGs(持続可能な開発目標)」への取り組みが世界中で活発になる中、「誰ひとり取り残さない」社会を目指して行くうえで、強迫性障害で苦しむ人々とどう向き合えばよいのだろうか。

【漫画】本編を読む

今回、バイト先の店長のパワハラ・モラハラで強迫性障害になってしまった、漫画家・ゆめのさん(@kuma_yumeno)のコミックエッセイを紹介。漫画を描いた経緯や、同じ悩みを抱える読者への想いを聞いた。

■同じ“強迫性障害”で悩む方が病院に行けるきっかけを作れた

――本格的に漫画を描くようになったのはいつ頃からですか?

【ゆめのさん】今のようなコミックエッセイをインスタグラムに載せ始めたのは2018年頃からです。それまでは、趣味としてオフラインで絵を描いていた程度でした。

――これまでで一番反響のあった作品を教えてください。

【ゆめのさん】一番反響があったのは『強迫性障害になった話』です。同じく強迫性障害に悩む方や、病気を克服された方、ご家族やパートナーが強迫性障害で治療されている方などからたくさんメッセージをいただきました。

「ゆめのさんの漫画を読んで、ようやく病院に行く決心がつきました」

「漫画を読んで、今日病院に行ってきました」

というメッセージをいただいたときは、漫画を描いて良かった、この人が病院に行けるきっかけを作れて良かったと本当に思いました。

――SNSで漫画を発表するメリットとデメリットは?

【ゆめのさん】メリットは、アカウントさえあれば、お金もかからず気軽に自分の作品を公開できるところ。私もSNSがなければ、とうに絵を描くのをやめていたと思います。デメリットは、SNSなので、良い意味で悪い意味でも読者さんとの距離が近く、うれしいお言葉もいただける反面、厳しいご意見もダイレクトに届くので、メンタルが弱っているときは、それが少しきつかったりもします…。それでも、どんな意見でもまずはきちんと飲み込んでから、次に進むように心がけています。

強迫性障害を知らない人にも分かるように表現

――一番反響があったという、強迫性障害の漫画を描こうと思ったきっかけは?

【ゆめのさん】それまでは、自分の育った家庭や、自分自身の過去の話を長期連載物としてインスタグラムに掲載していたのですが、その話の流れを作る際、強迫性障害を発症した出来事は「過去の話とひとまとめにしたくない」「ひとつの連載物として描きたい、この病気のことをしっかり伝えたい」と思い描きました。それくらい、私にとっては強烈な出来事でした。

――実際に描いてみて、特に印象に残っている回を教えてください。

【ゆめのさん】印象深い回は2つあります。まず1つめは6話で、今まで店長が先輩にしていたパワハラをずっと目の当たりにしていて、そのストレスで強迫性障害を発症してしまった当初の症状を表現しました。

「自分がミスすれば、先輩のように殴られてしまうのではないか」

「先輩の負担が減るように、先輩の仕事をもっと手伝ってあげなきゃ」

と当時はそればかり考えていて、とにかく「ミスしたくない、間違えたくない」「店長が怖い」という感情が“病気の症状”に現れたことを、強迫性障害を知らない人にも分かるように表現しようと心がけました。

2つ目は9話です。仕事を退職した後も典型的な強迫性障害の症状に悩まされたことを描きました。6話と同じく、強迫性障害を知らない人にも分かりやすく伝わるよう、症状を完結に表現しました。

自分は一人じゃないんだと思えました」というメッセージをいただき、自分の表現に自信がなかったぶん、うれしかったです。

■「自分は一人じゃないと思えた」というメッセージがうれしかった

――“強迫性障害を知らない人に知ってもらいたい”、というゆめのさんの想いは伝わりましたか?

【ゆめのさん】同じく強迫性障害に悩む方や、ひょっとして私も病気なのかもしれない…という方から「漫画を読んで、同じように悩む人がいると知って、自分は一人じゃないんだと思えました」というメッセージをいただき、自分の表現に自信がなかったぶん、うれしかったです。

――最後に、今後どんな漫画を描いていきたいですか?

【ゆめのさん】インスタグラムでは、過去の印象に残った出来事、育った家庭で大変だったエピソード漫画と、現在の夫との平和な日常エッセイ漫画を同じアカウントに投稿しています。私自身、色んな過去を乗り越えたからこうしてのんびり、夫との日常を過ごせているんだなあと思っているので、引き続き自分自身の過去のエピソード漫画と、夫とののんびりとした日常エッセイ漫画を並行して描いていきたいと思っています。

それぞれの漫画の温度差に、読者さんを混乱させてしまっているかもしれませんが、以前日常エッセイ漫画を投稿した後に、「今のゆめのさんが幸せそうで、良かったです」というメッセージが送られてきたときは、とてもうれしかったです。

取材協力:ゆめのさん(@kuma_yumeno)

毒親の“心ない”ひとこと…/画像提供:ゆめの(@kuma_yumeno)