西島秀俊が主演を務める映画「ドライブ・マイ・カー」(公開中)の初日舞台あいさつが8月20日に都内の劇場で行われ、西島、岡田将生、濱口竜介監督が登壇した。同作は、村上春樹による短編小説を映画化した作品。主人公・家福(西島)は愛する妻と満ち足りた日々を送っていたが、妻が秘密を残して突然この世からいなくなってしまう。行き場のない喪失を抱えて生きていたが、演劇祭で寡黙な専属ドライバーと出会い、それまで背を向けていたことに気付かされていくという人間ドラマ。

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公開を迎え、主人公の家福を演じた西島は「こうやってたくさんの方とお会いしてお話ができてうれしい。皆さんに見ていただけて感無量です」とあいさつ。

家福の妻・音から紹介されたキーパーソンとも言える俳優の高槻を演じる岡田も「本当に集中してこの作品に関わらせていただいていたので、早く見ていただきたいと思っていました。初日を迎えられてうれしく思っています」と話した。

濱口監督は「素晴らしいものを撮れていると思いながら撮影していた」と撮影当時を回顧。「それがようやくこうして多くの方に見てもらえてうれしい」と公開の喜びを伝えた。

■「『おまえの英語は赤ちゃん英語だ』って言われました(笑)」

同作には外国人キャストも出演し、9つの言語が飛び交ったという。演じた感想を聞かれ、西島は「監督が選ばれたキャストは、共通して、作品に対しても、演技に対しても、監督の演出に対しても“真っすぐ”な人だったので、気持ちよく演技をしていました」と言い、「労力や時間をかけた本読みも楽しむような方たちが集まっていたので、毎日が豊かで喜びのある現場でした」と当時を振り返った。

岡田も「迷いながらみんなで答えを見つけていっている感じでしたね。刺激になりましたし、お芝居は日本に限らず、どこでもできるんだと感じられた現場でした」と真面目に語りつつ、「英語でコミュニケーションを取っていたのですが、『おまえの英語は赤ちゃん英語だ』と言われていました(笑)」と、笑いながら撮影中のエピソードを明かした。

■「監督が僕を通して見ていることを感じながら演じました」

同作では演出家を演じた西島。どのように役を組み立てたか問われると、「いくつかの劇団にお邪魔して演出家の方から聞いたことを参考にしていましたが、僕の役はどこか濱口監督に影響を受けているし、監督の一部分でもあると思っていたので、僕が見ているけど、監督が僕を通して見ていることを感じながら演じていました」と、独自の役作りを告白した。

そんな西島に対して「現場では本当に演出家でした」と明かした岡田。「ものすごく緊張感のある中で撮影をしていたのですが、カットがかかると濱口監督の後に西島さんの顔色をうかがってしまうくらい、それくらい家福としていてくれたので、僕もなるべく現場では高槻でいようという気持ちになりました」と空気感を明かした。

■「岡田くんは『この世界にいて大丈夫かな?』というくらい純粋な人」

同作が初共演だという西島と岡田。西島は「『(岡田は)この世界にいて大丈夫かな?』というくらい純粋な人」と印象を話すと、「僕もう32(歳)ですから!」と岡田がツッコむ場面も。

ツッコミに笑いながらも「もちろん経験を積んだ大人でタフな男性だけど、繊細でもろい部分もあって。そこをずっと持ちながら、外側を強くして、両方持ってもらえるといちファンとして幸せかなと思う」と言葉を送った。

濱口監督は「お二人とも思慮深くて真っすぐな方。本当にいい人たちに頼めてよかった」とコメントした。

カンヌ国際映画祭脚本賞は「役者さん全員に贈られた賞」

同作は、第74回カンヌ国際映画祭日本映画初の脚本賞を受賞。イベントでは、トロフィーがお披露目された。

トロフィーが登場すると、思わずアクリル板から身を乗り出してのぞく西島と岡田。濱口監督が「意外と小さいでしょ?」と言い、会場から笑いが起こるシーンも。

さらに受賞について濱口監督は「世界最高峰の映画祭で受賞できるなんて光栄です。村上春樹さんの物語というベースがあり、自分も今までにない脚本が書けました。ですが、特に今回は役者さんの言葉がそのまま映画になっているので、役者さん全員に贈られた賞なのではないかと思っています」とコメントした。

最後に岡田が「僕自身、見た時に涙が止まらなくなったくらい、心に何か感じる作品になっていると思います。皆さんのお力をお借りして、この映画がたくさんの方に広まっていくとうれしいです」と、西島が「出演している側ですが、どこか自分ではないような感覚になる、フィクションの中の人間ですが、そこで彼らが生きているような感覚になる作品です。もしまたこの登場人物たちと会いたいと思ってくだされば、いつでも劇場に足を運んでください」と話し、イベントを締めくくった。

西島秀俊、岡田将生、濱口竜介監督が映画「ドライブ・マイ・カー」初日舞台あいさつに登壇