勇者に選ばれたごく平凡な少年が、伝説の剣を手に世界の存亡を懸けた戦いに挑む!多彩な妖怪が大戦争を展開するエンタテインメント超大作『妖怪大戦争 ガーディアンズ』が公開中だ。本作は、1968年に公開された、大映の「妖怪三部作」を代表する痛快作『妖怪大戦争』、スペクタクルを満載し大ヒットした2005年の平成版『妖怪大戦争』に続く令和版。日本古来の妖怪や妖怪獣に大魔神と、ありとあらゆる妖怪たちが集結し、過去三作中でも最大級のバトルを繰り広げる。

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■おなじみの日本古来の妖怪たちが登場する『妖怪大戦争』(68)

1968年版で描かれるのは、日本に飛来した古代バビロニアの妖怪ダイモンとの大戦争。人間に乗り移り勢力を広げていくダイモンを倒すため、日本の妖怪たちが立ち上がる。時代劇として製作された本作には、河童や油すまし、から傘、ろくろ首など日本古来の妖怪たちが登場する。人間側の主人公が幼い兄妹ということあり、どれも素朴で不気味ないっぽう、愛嬌も漂うルックス。デザインにあたっては、江戸時代の画家である鳥山石燕や、漫画家の水木しげるによる妖怪画が参考にされた。一人一人は弱い彼らが手を組んで、圧倒的パワーのダイモンに挑むけなげな姿は、思わず応援せずにはいられない。

■「ガメラ」シリーズも手がけたエキスプロダクションが、妖怪の造形で参加

妖怪たちの造型には、同時期の「ガメラ」シリーズでも怪獣たちを手がけたエキスプロダクションが参加。河童はマスクに甲羅を背負った生身の俳優、ダイモンや隠神刑部は着ぐるみ、美しい顔と怖い顔を持つ二面女はメイク、から傘やろくろ首は操演などキャラクターに合わせた手法が使い分けられた。デジタル時代の現在に比べ技術的には粗さもあるが、それが“キモカワイイ”味わいを醸しだしている。背の小さい油すましやひとつ目小僧を子役が演じ、河童は江戸弁、油すましは関西弁など口調でも色分けするといった徹底したキャラ作りは、その後の『妖怪大戦争』にも生かされた。

『妖怪大戦争 ガーディアンズ』にも多数の妖怪が登場するが、1968年版から性格や立ち位置が受け継がれた妖怪も少なくない。大将格のぬらりひょんは油すまし、大御所的な隠神刑部は雲外鏡、子ども好きの姑獲鳥は二面女など多くの妖怪にそのルーツが見て取れる。また1968年版の黒田義之監督は、1966年に3作が製作された「大魔神」シリーズで特撮監督として腕を振るった人物。さらにダイモン役の橋本力は、すさまじい目力でシリーズすべての大魔神を演じていた。今回『妖怪大戦争 ガーディアンズ』に登場する大魔神は、実は所縁のあるキャラクターといえる。

特殊メイクを施した演技派たちが妖怪を演じる、リブート版『妖怪大戦争』(05)

水木しげる、荒俣宏をはじめ妖怪研究の第一人者が集結した2005年のリブート版は、現代を舞台に設定が一新された。今作の敵は、歴史から葬り去られた古代民族の怨念を宿した魔人の加藤保憲。彼が妖怪と人間に使い捨てられたモノ(廃棄物)を合体させた、妖怪ならぬ“機怪”を使って復讐をもくろむ物語だ。

妖怪たちは河童の川太郎や川姫、砂かけ婆、油すまし、から傘、ろくろ首など、1968年版をベースに新キャラクターをプラス。水木しげるが参加したため、ぬりかべやカラスヘリコプターなど「ゲゲゲの鬼太郎」でおなじみのキャラも登場する。特殊メイクや造型の技術が格段に進歩した今作の妖怪たちは、肌の質感など細部までリアルに表現された。妖怪を演じているのは、阿部サダヲや近藤正臣、遠藤憲一竹中直人ほか超がつく演技派、個性派の俳優たち。彼らの演技を生かす方向でデザインされ、目や表情からふとした仕草まで“らしさ”をストレートに伝えてくれる。河童を演じた阿部サダヲなりきりぶりは、トラウマ級の迫力だった。

妖怪たちは百武朋、井上淳哉竹谷隆之、機怪デザインを故・韮沢靖と、日本映画を代表するクリエイターが担当。伝統的スタイルをベースに、いまの時代に合わせスマートにデザインされている。デジタル時代の今作では、一反木綿や機械から手足が生えた非人間的な機怪も登場。CGだから可能になった自由なデザインの妖怪たちも楽しめる。

■リブート版の要素が継承された『妖怪大戦争 ガーディアンズ

泣き虫少年タダシ(神木隆之介)が救世主である麒麟獅子に選ばれ、加藤に戦いを挑む2005年版の設定は、弱虫少年ケイ(寺田心)が妖怪ハンターとなり妖怪獣に挑む『妖怪大戦争 ガーディアンズ』に継承された。妖怪たちは引き続き井上淳哉がデザインし、2005年版を踏襲しながら狐面の女、猩猩、鬼の一族、そして大魔神などの新キャラクターを追加。小豆洗い(岡村隆史)ら前作そのままの続投キャラの存在もファンにはうれしいプレゼントだ。

2005年版には雪女(吉井怜)や鳥刺し妖女アギ(栗山千明)がオトナの色気を放っていたが、今作では雪女(大島優子)がその役割を担っている。大魔神や妖怪獣、土蜘蛛など怪獣系の“大物”キャラクターはCGで描かれ、空前のアクション・スペクタクルが展開。そんな過去作の総決算+αの妖怪たちの大戦争は、ぜひスクリーンで味わってほしい。

文/神武団四郎

『妖怪大戦争 ガーディアンズ』へ続く、『妖怪大戦争』の歩みを“造形”でプレイバック/[c]KADOKAWA1968