「猫を飼うとゴキブリがいなくなる」とのうわさをよく聞きます。活動が活発化する夏には、ゴキブリを家の中で見かけ、大騒ぎする人も多いと思いますが、うわさが正しければ、猫が退治してくれていると思われます。事実でしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。

地域性や生活環境も影響か

Q.「猫を飼うとゴキブリがいなくなる」とのうわさをよく聞きますが、本当なのでしょうか。

増田さん「『猫を飼うとゴキブリがいなくなる』という話を耳にしますが、一方で『猫を飼っても、ゴキブリを目にする機会はそれほど変わらない』という声も聞きます。実際、私の家でも長い期間、猫を飼っていますが、一年を通して、全くゴキブリを見なかったという経験は今のところありません。そのため、一概に『猫を飼うとゴキブリがいなくなる』と断定はできません。

いなくなるかどうかは地域性や生活環境、生息しているゴキブリの数など、複数の要因が関係しているのではないかと思います。一方で、もし、猫を飼ってゴキブリがいなくなった場合は、猫がゴキブリにちょっかいを出している、さらには、口にしていることは十分にあり得ると思います」

Q.「猫を飼ってゴキブリがいなくなった場合」についてですが、ペットの猫は基本的に餌は飼い主が与えており、獲物を捕まえて食べる経験がほとんどないと思います。なぜ、捕まえることができるのでしょうか。

増田さん「猫の習性として、動いているものに強い関心を示す傾向があります。猫を飼っていたり、猫の動画を見たりしたことがある人は分かると思いますが、おもちゃを使って猫の関心を引こうとすると、急に眼光が変わり、おもちゃに向かって、一目散に飛び掛かる様子を見たことがある人は多いのではないでしょうか。

猫の視界にゴキブリという『何か動くもの』が入り、捕獲する本能が活性化して追いかけ、捕獲し、最終的にそれを口にする行為に至ると考えられます。狩りをする習性が関係していると思います」

Q.どんな猫がゴキブリを捕獲すると考えられますか。やはり、強気な猫の方が捕まえようとする傾向が強いのでしょうか。

増田さん「人にもさまざまな性格があるように、強気な猫、臆病な猫など、さまざまな性格の猫がいます。加えて、ゴキブリそのものに関心を示すかどうかもそれぞれの猫によってさまざまです。本能的な部分以外に年齢や体力、持病の有無など、捕獲をしない、あるいはすることが困難な猫もいますので、猫の性格だけがゴキブリの数の増減を反映しているわけではないと考えられます」

Q.ペットの猫は普段、ゴキブリを食べませんが、もしも食べてしまったら、治療など対処をすべきでしょうか。

増田さん「猫がゴキブリを捕まえて食べることは十分に考えられ、体調不良になる可能性もあります。ゴキブリ自体がさまざまな細菌や寄生虫を保有しているからです。猫がゴキブリを口にしてしまうことで、回虫などの寄生虫が猫の消化器内に寄生する恐れや、消化管内の細菌バランスを乱し、おなかを壊す可能性もあります。

また、家庭内にいるゴキブリの中には、駆除剤などが体に付着しているものもおり、その薬品が中毒を招く可能性があります。ゴキブリを誤食した後、猫が何か不調を示している様子が見られたら、適切な処置が必要なので動物病院を受診しましょう」

オトナンサー編集部

猫は動くものが好きだが…