エムエスアイコンピュータージャパングラフィックボードが、全国の主要家電量販店やECショップのPOSデータを集計する「BCNランキング」の2021年上半期(2011年1~6月の集計)で販売台数シェアNo.1を獲得した。同社は19年から国内のグラフィックボード部門でシェアトップを獲得しており、2年半連続で首位をキープするという快挙を達成したことになる。そこで、同社のグラボがユーザーから支持される理由や同社の最新製品について、グラボ担当者に聞いた。

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●MSIのグラボがシェアNo.1を達成するまで



 エムエスアイコンピュータージャパン(以下、MSI)は、PC自作ファンなら誰でも知っている大手マザーボードグラフィックボードベンダーの日本法人であり、最近はパーツだけでなく、高性能なゲーミングノートPCなどでも知られている。MSIマザーボードグラフィックボードは、高性能かつ信頼性が高いことで人気があり、特にeスポーツプレイヤーなどからの指名買いが多い。

 MSIは、各部門のBCNランキング年間1位に与えられる栄誉「BCN AWARD」を2019年から2年連続で受賞しており、21年上半期もシェアNo.1を達成。3年連続の受賞を目指している。最近は、高性能なグラボといえばMSIといった感もあるが、実は昔からシェアが高かったわけではないのだ。

 MSIは、11年からBCN AWARDを目指し始めたと、同社GNP営業部の冨原啓行氏は語る。

 「当初のシェアは6%ほどでした。そこからユーザーに受け入れられるグラフィックボードを目指し改良を行い、13年にはシェアが12~14%に上昇し、3位に入りました。そこから数年、順位は変動しなかったのですが、17年にeスポーツブームが起き、自作PCユーザーが増え、MSIグラフィックボードの高い品質が知られるようになり、シェアが20%まで上昇し、初めて2位となりました。

 最近は、配信などでゲーミングPCを自分で作る方も珍しくなく、目的に合わせて選んでいただけるようにラインナップを強化しています。そうしてMSIグラフィックボードの良さがさらに周知され、19年の初めから今に至るまでBCNランキングでシェアNo.1を維持できるようになりました。今回、またシェアNo.1を獲得でき、大変嬉しく思っています。」


●MSIのグラボが高い評価を得ている理由



 MSIグラフィックボードが、eスポーツプレイヤーのような性能と信頼性を重視するユーザーに高い評価を得ている理由としては、次の4点が挙げられる。

 ・冷却性能が高い

 ・静音性が高い

 ・信頼性が高い

 ・デザインも優れている

 MSIが最もこだわっているのが、やはり冷却である。グラフィックボードの心臓部であるGPUトランジスタ数はCPUを上回る速度で増えており、消費電力も増加傾向にある。GPUに高い負荷がかかるとそれだけ発熱も増えるため、高い冷却性能が要求される。

 個別の冷却技術については後述するが、MSIは以前から冷却技術にこだわっており、高性能ファン「TORX FAN」や高効率ヒートパイプ「CORE PIPE」など、独自冷却技術を次々と開発し、グラフィックボードに搭載している。

 グラフィックボード全体の温度を抑えることにより、安定して高い性能を発揮できるだけでなく、高温による部品の劣化も軽減できるのだ。GPUやビデオメモリを定格クロックよりも高いクロックで動作させる、オーバークロック機能を備えた製品も多いが、オーバークロック時は、さらに冷却性能が重要になる。

 静音性も重要なポイントだ。GPUに高い負荷がかかりファンの回転数が上がっている時は、ある程度騒音が大きくなるのは仕方ないが、負荷が低く発熱が小さい時はできるだけ騒音が小さいことが望ましい。MSIは、低負荷時にファンを完全に停止する「ZERO FROZR」機能を業界で初めて実現するなど、静音性にもこだわっている。

 信頼性については、高品質なパーツを惜しげもなく採用し、基板も独自設計のものにすることで、高い安定性と信頼性を実現している。また、最初に述べた冷却性能が優れていることも信頼性や寿命の向上に貢献している。

 最後のデザインだが、ゲーミングPCではサイドパネルが透明になっており、中のグラフィックボードやCPUなどのパーツが見えるケースが使われることが多い。そのため、グラフィックボードの外観やRGB LEDによるイルミネーション機能も、PCをより格好良く見せるためには重要な要素となる。

 MSIゲーミングPC向けグラフィックボードは、RGB LED「MYSTIC LIGHT」を搭載しており、PCを目立たせたい、格好良く光らせたいというニーズにも応えることができる。

 MSIグラフィックボードにはこうした魅力があるからこそ、eスポーツプレイヤーをはじめとするヘビーユーザー層から支持を受けているのだ。


●幅広いPCゲーマーにお勧めの「GAMINGシリーズ」



 MSIグラフィックボードは、エントリーモデルからフラッグシップモデルまで幅広いラインナップが用意されているが、その中から特にお勧めの製品を冨原氏に挙げてもらった。

 まずは、「GAMINGシリーズ」である。その名の通り、PCゲーマーにお勧めのモデルで、売れ筋製品でもある。GAMINGシリーズは、GPUの性能をフルに発揮できるように設計された製品で、デュアルファンタイプの「TWIN FROZR」とトリプルファンタイプの「TRI FROZR」とがある。

 GAMINGシリーズは14年に初めて登場し、現在、TWIN FROZRは8世代目、TRI FROZRは2世代目となっている。どちらも基本的な機能は共通で、冷却の要であるファンにはMSIが独自開発した「TORX FAN 4.0」を搭載する。

 TORX FAN 4.0は、一対のファンブレードの外周を結合した「Outer Ring design」の新型ブレードを採用し、従来の「TORX FAN 3.0」から静圧が20%向上し、低い回転数でもヒートシンクを効率よく冷やすことができるようになっている。

 GPUの熱を運び、拡散するために「CORE PIPE」と呼ばれる断面が四角形のヒートパイプが採用されている。通常の断面が楕円形状のヒートパイプと比べてGPUとの接触面積が大きくなるため、より効率良くGPUの熱を運ぶことができる。

 ヒートシンクにはファンからの風を整流し、必要な場所に効率良く送り込めるデフレクタ(整流装置)が追加されているほか、フィンを波状に湾曲させることで表面積を増やし、騒音も抑えている。また、RGB LED「MYSTIC LIGHT」を搭載しており、互換性のある他のデバイスとライティングを同期させ、一括コントロールすることが可能だ。

 さらに、GAMINGシリーズの中でも上位となるGeForce RTX 3080/3070搭載のGAMING TRIOでは、バックプレート新素材のメタルバックプレートが採用されており、従来のプラスチックバックプレートと比べて強度は4倍、熱伝導率は20倍に向上している。


●最高性能を追求する人にお勧めのハイエンドモデル「SUPRIMシリーズ」



 最高性能を追求したいユーザーにお勧めのハイエンドモデルが「SUPRIMシリーズ」である。SUPRIMシリーズは、GAMINGシリーズの上位として位置づけられ、搭載GPUGeForce RTX 3070以上に限られている。

 GAMINGシリーズで培った冷却技術をさらに進化させた「TRI FROZR 2S」を搭載。メモリにも専用ヒートパイプが増設されており、高速だが発熱も大きいGDDR6Xを搭載したGeForce RTX 3070 Ti以上のモデルで、その冷却性能が発揮される。

 外観にもこだわっており、表側とバックプレートに磨かれたブラッシュドアルミニウムプレートを採用。ダイヤモンドをイメージした切り抜きが行われ、エッジ部分には金メッキが施されており、シャープで美しい外観を実現。バックプレートには、MSIドラゴンロゴがあり、RGB LEDによってさまざまな色でライトアップされる。

 性能も見た目も妥協を許さないという人にふさわしい製品であろう。


●コストパフォーマンス重視の人にお勧めの「VENTUSシリーズ」



 SUPRIMシリーズやGAMINGシリーズのように、RGB LEDによる派手なライティングなどが不要で、グラフィックボードとしての基本性能を重視する人にお勧めのモデルが「VENTUSシリーズ」だ。GAMINGシリーズの下位に位置づけられる製品であり、デュアルファンタイプの「VENTUS 2X」とトリプルファンタイプの「VENTUS 3X」がある。

 VENTUSシリーズでは、ファンが1世代前の「TORX FAN 3.0」になっているが、断面が四角形の「CORE PIPE」を採用し、高い冷却性能を実現。GPU負荷の高いゲームも快適にプレイできる。製品ラインナップも多く、内部のパーツが見えないケースを使うという人やコストパフォーマンスを重視する人に向いた質実剛健なモデルである。


●日本限定のゴジラコラボモデル「GeForce RTX 3070 SUPRIM SE 8G LHR x GODZILLA」



 最後に紹介するのが一風変わったゴジラとのコラボモデル「GeForce RTX 3070 SUPRIM SE 8G LHR x GODZILLA」(以下、SUPRIM GODILLA)である。これは、ゴジラの大ファンである国内マーケティング担当者が企画したもので、日本限定かつ数量限定で販売されている製品だ。

 ベースとなった製品は、GeForce RTX 3070を搭載したハイエンドモデル「GeForce RTX 3070 SUPRIM SE 8G」であり、グラフィックボードとしての基本性能は変わらないが、表側とバックプレートアルミメタリックプレートの色がメタリックレッドに変更されたほか、三つあるファンの中央には「ゴジラ」のロゴが、バックプレートにはゴジラのイラストとロゴが描かれている。

 また、製品パッケージにもゴジラが大きくデザインされており、店頭でも一目でそれと分かるようになっている。熱烈なゴジラファンなら欲しくなる逸品といえる。


●ゲーミングPCを自作するならCPUよりGPUに予算をかけるべき



 冨原氏から、ゲーミングPCを自作したいと考えている人へのアドバイスをもらった。「最新ゲームを快適にプレイするためには、CPUよりもGPUが重要です。CPUはミドルクラスくらいでも十分ですので、その分GPUのランクを上げた方が快適になります。MSIは、数多くのグラフィックボードをリリースしているので、予算と目的に応じて、最適な製品を選べると思います。」

 独自技術で基本性能はしっかりと担保し、こだわり層から質実剛健な層までを対象とした豊富なラインアップから選べるMSIグラフィックボードが、多くのゲーミングPCユーザーやeスポーツプレイヤーから支持されているのも納得できる。
eスポーツプレイヤーなどからの指名買いも多いMSIのグラフィックボード