自治体の責任者や著名人が相次いで、東京五輪の女性メダリストを蔑視したと受け取れる発言をしたことが波紋を広げています。名古屋市河村たかし市長(72)は8月4日、女性ソフトボール選手の表敬訪問を受けた際、「ええ旦那をもらって」などと発言。また、野球解説者の張本勲氏(81)も8月8日テレビ番組で女性ボクシング選手について、「女性でも殴り合いが好きな人がいるんだ」「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って」と発言し、それぞれ問題となりました。

 その後、2人は謝罪しましたが、ネット上では「辞職した方がよい」「口先だけの謝罪」など批判がやみません。河村市長、張本氏は誠意をもって謝罪していたといえるのでしょうか。広報コンサルタントの山口明雄さんに聞きました。

たわ言ばかりの河村市長?

Q.河村たかし市長は8月4日東京五輪ソフトボール代表の後藤希友選手が表敬訪問した際、後藤選手が自身の首に掛けてくれた金メダルをかんだほか、後藤選手に対してセクハラともとれる発言をして、批判が殺到しました。その後、河村市長は3度の会見で謝罪しましたが、会見時の対応をどう評価しますか。

山口さん「危機管理広報のコンサルタントの立場から見れば、河村市長の3度の会見はいずれも謝罪ではなく、『たわ言』に終始した会見だったと思います。8月5日の1回目の会見冒頭で、河村市長は何度もつっかえながら謝罪文を読み上げた後、『ということでございます』と、他人が書いた文章だと言わんばかりの言葉で締めくくりました。そこに市長自身の謝罪の気持ちは込められておらず、市の当局者が準備した謝罪定型文書を代読しただけだったと思いました。

その後の質疑応答でも、河村市長は『歯が食い込むようなかみ方はしていない』『あのときは非常にフレンドリーな感じだった』など釈明にもならないたわ言を繰り返しました。『ええ旦那をもらって』といった、河村市長の嫌がらせとも女性蔑視とも受け取れる発言については『後藤投手を喜ばせたい意図もあった』『嫌がらせの認識は全くなかった』と釈明しましたが、私には、これもたわ言だとしか言いようがありません。

8月12日の2回目の会見冒頭で、河村市長は『行き過ぎた発言がありまして…』と形式的な謝罪はしたものの、行き過ぎた発言の内容について問われると『(自分の発言を)受け取る側がハラスメントと感じると、そういうことになってしまう。(ハラスメントだと思われるようなことは)言わないようにする』『名古屋市としても、発言についてのガイドラインみたいなものを作らなければならないと思っている』と話しました。

ガイドラインを作らないので、まともな発言ができなかった』と言わんばかりで、あきれてものが言えません」

Q.8月16日の3回目の会見時、河村市長の言動で気になったことは。

山口さん「この日は定例会見でしたが、パフォーマンスが目立ちました。河村市長は『私も72歳になりまして、このたびのことは自分自身、本当に情けにゃあと心から思っております』などと話した後、『一応、心を込めて頭を下げさせていただきます』と言って、10秒ほど深く頭を下げました。『一応』とは何でしょう。自らパフォーマンスだと宣言したのでしょうか。その後も泣きだしそうな表情で、何度も『私の不徳のいたすところ。ざんきの念に堪えません』と謝罪を繰り返したのです。

この豹変(ひょうへん)ぶりに、記者が『なぜ、これまでの会見とこれほど違うのか』と聞いたところ、『(8月13日に)ハラスメント講習を受けて、自分は意地悪のつもりで話をしていなくても、相手が不愉快だと受け取ればハラスメントになり得ることを深く理解したから』だと答えました。いまさら、この常識を知らない社会人はいないと思います。たわ言を超えて『虚言』と言ってもよい釈明です。

会見の最後に『市長は数回ほど頭を深々と下げていたが、これは市長ご自身の思いなのか、市当局などと相談の上で頭を下げることになっていたのか』と質問されたときも、河村市長は『市の当局とは相談しておりません』と答えました。仮に事実だったとしても、いったい、誰がこの回答を額面通りに受け取るでしょう。

『自分の失言は市がガイドラインを作らないから』だと言わんばかりの発言をした人です。発言のどこがどう悪かったのか、いまだに理解していないのではないでしょうか。市当局などから、『深く謝罪しないと政治生命に関わりますよ』と言われて、心機一転の一大パフォーマンスを試みたのだとしか思えません」

Q.張本勲氏は8月8日TBSの報道番組「サンデーモーニング」で、東京五輪ボクシング女子フェザー級の入江聖奈選手が金メダルを獲得したことについて、「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合って」などと発言し、批判が殺到しました。15日の番組放送時には、まず、女性アナウンサーが謝罪しましたが、張本氏は「今回は言い方を間違えて反省しています。以後、気を付けます」と言うのみで、張本氏や番組に対する批判が強まりました。この謝罪をどう評価しますか。

山口さん「不適切発言をした張本氏本人ではなく、番組が主体となって謝罪したことがさらなる炎上を招いたと思います。なぜ、多くの『知識人』が出演するこの番組がこのような謝罪形式を選んだのか、理解に苦しみます。張本氏が『不当な批判だ』だと怒りだすのをTBSや番組責任者は恐れたのでしょうか。

張本氏の発言は、テレビスポーツコメンテーターとしては絶対に口にしてはいけない言葉だと思います。『性別の違いや障害の有無にかかわらず、どんな人間にもスポーツの機会は平等に与えられるべきだ』というのが世界の主流の考え方だからです。あくまで想像ですが、張本氏と同様、『女性はボクシングなどするべきではない』と思う人は意外と多いのかもしれません。

ある報道番組で知った話ですが、入江選手の母親も『嫁入り前の大切な顔を傷つけられるかもしれない』と思い、当初は、入江選手がボクシングを始めることに猛反対したそうです。しかし、娘の意思を尊重する方がより大切だと思い、許可したそうで、彼女の決断は素晴らしいと思います」

謝罪に見る2人の共通点は?

Q.河村市長と張本氏の謝罪から見えた、2人の共通点は。

山口さん「2人が『老い』のせいにしようとしている点は共通しています。河村氏は『私も72歳になりまして、このたびのことは自分自身、本当に情けにゃあと心から思っております』と、不適切な行動や発言は老いに起因しているとでも言いたげな発言で会見を始めました。頑固一徹のコメントで度々、炎上を引き起こしている張本氏は81歳だそうです。

確かに、年を取ってから、他者への配慮を欠く発言をする人もいるかもしれません。しかし、第一線で活躍する高齢者の中には作家でも、音楽家でも、画家でも、年齢を重ねれば重ねるほど、豊穣(ほうじょう)で新鮮な作品を作り出し、かつ、発言も立派な人が数え切れないほどいます」

Q.河村市長と張本氏の今後の課題について教えてください。

山口さん「2人の今後は、自身の発言の問題点に真の意味で気付くことができるかどうかにかかっていると思います。河村市長は名古屋市長選連続5回当選の実績を持ち、市民の支持を得ています。張本氏は実は、私が大好きなスポーツコメンテーターの一人で『今や、日本のプロ野球アメリカを完全に超えたね』など、他のコメンテーターがなかなか言えないことをズバッと言う点が魅力です。

2人とも、自身の失言が原因で炎上した場合、少なくとも、発言のどこに問題があったかは理解すべきです。それができないのであれば、また、失言を老いのせいにするようであれば、すぐに表舞台から退場してほしいと私は思います」

オトナンサー編集部

謝罪文を読み上げる河村たかし市長(2021年8月、時事)