約2300万年前から350万年前にかけて、海には史上最大級の強力な捕食者が存在した。絶滅種のサメ、メガロドンだ。
太古の海では、ハクジラ類最大のマッコウクジラといえども、メガロドンの脅威とは無縁でいられなかったようだ。
米ノースカロライナ州で新第三紀(約2300万年前から250万年前)の物と思われるマッコウクジラの歯の化石が発見された。そこには巨大なサメのものと思わしき歯形が残っていたのである。
『Acta Palaeontologica Polonica』(8月9日付)に掲載された研究によると、それは巨大ザメがマッコウクジラと争った痕跡で、そのサメこそがメガロドンである可能性があるという。
このマッコウクジラの歯は、ノースカロライナ州にあるニュートリエン・オーロラ・リン酸塩鉱山で1970~80年代に発掘された。
大きさが11.6センチで曲がっていることから、すでに絶滅した種のものと考えられるという。
歯の大きさから推測すると、体長は4メートル程度で、現代のマッコウクジラ(15メートル以上)に比べれば小さな種であったようだ。
このマッコウクジラがいつ生きていたのか、正確な年代はわからない。発掘当時、鉱夫が上部の土を掘って捨てていたために1400万年前(中新世)の古い地層と500万年前(鮮新世)の新しい地層が混ざってしまった。いずれにせよ、歯は「新第三紀」(2300万年~250万年前)のものだ。
当時、地球は今よりも暖かく、北極や南極の氷が解けていたおかげで海面が高かった。
「ノースカロライナ州の沿岸は、大西洋の広大な浅瀬におおわれていました。そこには海洋生物がたくさん生息していました」と米カルバート海洋博物館の古生物学者スティーブン・ゴドフリー氏は語る。
歯にはノコギリのような歯でかじったと思われる3つの溝がついていた。
古代マッコウクジラの歯にのこる、巨大なサメの歯がかじりついたと思われる3つの溝 / Photo credit:Godfrey et al., Acta Palaeontologica Polonica, 2021
メガロドンの攻撃によるものか?
噛み跡の大きさと溝の間隔から、その犯人として考えられるのは、2800万年~1300万年前に生息していたメズミザメ目の仲間「オトドゥス・チュブテンシス(Otodus chubutensis)」か、その子孫である「メガロドン(Otodus megalodon)」(2000万年~350万年前)だという。オトドゥスは当時の頂点捕食者として君臨していたサメで、その仲間である体長18メートルを超えるメガロドンは史上最大級の捕食者だったと考えられている。
ゴドフリー氏によると、「(メガロドンの)噛み跡はほかの絶滅したクジラやイルカの骨で見つかっていますが、マッコウクジラの頭部で見つかったという話は聞いたことがない」そうだ。
死闘を繰り広げたマッコウクジラと巨大サメ
巨大ザメがマッコウクジラの死体に噛み付いた可能性がないわけでもない。しかしゴドフリー氏らは噛み付いたときクジラは生きていたと推測している。なぜなら顎骨に埋もれていたはずの歯の根本に傷がついていたからだ。
この場合、歯に傷をつける前に、まず顎骨を切り裂かねばならない。そこにほとんど肉はない。そのためクジラが死体だったとしたら、あえてそこを狙うメリットはない。
サメが頭部に噛み付いたのならば、むしろそれは「致命傷を与える目的で攻撃」したことを示唆している。つまり、そのときマッコウクジラはまだ生きており、サメは殺そうとして頭に噛み付いたと考えられるのだ。
なお今回の研究には参加していないイタリア、ピサ大学のアルベルト・コラレタ氏によると、現代のシャチもクジラの肉付きのいい舌や脂がたっぷり乗った喉を食べることがあるのだそうだ。
そのため当時の巨大ザメがマッコウクジラを食べていたとしても、それほど意外なことではないとのことだ。
まあでもシャチはマイルカ科目ハクジラ亜目なので、サメとはちょっと違う気がするんだけどね。メガロドンはネズミザメ科だし。
References:Acta Palaeontologica Polonica / Megalodon's mortal attack on sperm whale revealed in ancient tooth | Live Science / written by hiroching / edited by parumo
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