東大と並び称される京大はノーベル賞受賞者の多さなどで受験生に人気のある大学ですが、近年の合格者数学校別ランキングはどのように推移しているのでしょうか。今春の結果などを振り返ってみましょう。

北野、洛南、東大寺学園…

 今年の京大合格者数トップは4年連続で大阪府立の北野高校で、95人でした。2位は昨年より18人増と大きく増えた洛南(京都)、10人増えた東大寺学園(奈良)の70人。4位は11人増えて、63人だった西大和学園(奈良)、5位は甲陽学院(兵庫)の57人でした。西大和学園は東大合格者も大きく増えており、昨年に続いての躍進です。昨年、中高一貫生の女子が初めて卒業して実績が伸びましたが、今年も引き続き伸びています。

 今年の全体の傾向としては私立中高一貫校の合格者が増えたことです。トップ10では他にも、43人合格している大阪の2校が伸びました。13人増の大阪星光学院、高校野球などスポーツの強豪校としても知られる大阪桐蔭(10人増)です。

 一方、公立高に焦点を当ててトップ10を見ると、北野が5人減だったのをはじめ、昨年2位だった天王寺(大阪)が24人減の6位、7位の膳所(滋賀)も13人減でした。近年、京大合格者数では公立高の躍進が目立っていましたが、今年は中高一貫校が巻き返す結果となりました。

 関西では近年、中高一貫校の生徒の医学部志向が強くなっていました。京大の理系より、他大学の医学部を目指す傾向が強く、そのため、京大合格者数の減少が目立ち、その分、公立高の京大合格者が増えてきた面があります。しかし、今年は中高一貫校で京大人気が盛り返したようです。

 また、関東ローカル化が進む東大とは対照的に、京大は全国化が進んでいます。10年前の2011年の近畿2府4県(京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山)からの京大合格者に占める割合は55.5%でしたが、今年は50.7%に下がっています。近畿地方外からの合格者が増えているのです。例えば、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)からの合格者の割合は2011年の6.5%から、今年は12.7%とほぼ倍増しています。

 京大は入試で学部・学科別に募集しており、東大のような文科1類、2類などという大くくりでの募集ではありません。最初から、大学で何を学びたいのかが決まっている受験生に人気なのです。さらに、工学部や農学部では第2志望以下の学科を出願時に決められる方式をとっているため、合格チャンスが広がります。

 また、研究分野でのノーベル賞受賞者(学部卒業者)が東大より多いことも受験生に人気の理由の一つでしょう。もちろん、ノーベル医学・生理学賞受賞の山中伸弥教授が現役で在籍していることも大きいと思われます。

 東京圏からの合格者トップは東京都立西高校の21人です。西高は東大合格者が20人ですから、東京の学校でありながら、東大より京大の合格者の方が多くなっています。次いで、海城(東京)15人、(私立)武蔵(東京)14人、麻布(東京)11人などと続きます。

 今年の入試はコロナ禍の影響で、地元大学への進学志向が高まりました。全国区型の京大は昨年に比べて志願者が減りましたが、3.6%の微減にとどまりました。地元志向が強まると、やはり、受験生の志望の弱い地元以外の大学・学部には、わざわざ受けに行かなくなります。

 しかし、京大だけでなく東大もそうですが、受験生がどうしても行きたい、何が何でもと思う大学の志願者は大きくは減らないものです。この傾向は来年も続きそうです。今年は公立高の伸び悩み、私立中高一貫校の巻き返しが京大合格者数ランキングの特徴でした。来年は公立校の巻き返しがあるのか、注目したいところです。

大学通信常務 安田賢治

京都大学