人気アーティストのMVや企業タイアップ動画など、近年アニメーションが多く用いられるようになった。SNS上で自主制作アニメを中心に発表する場「#indie_anime」(インディーアニメ)の盛り上がりもあり、新しい才能が次々と登場している。

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若手アニメーターイラストレーターうなばら海里さんもまた、数多くの企業タイアップや商業作品などを担当する注目クリエイターの1人だ。

小学校時代、自宅にあったMacPhotoshopを使って、工作の課題にPCで描いたイラストを本にして提出。「今思えば最初の同人誌です(笑)」と話すほど、幼少期から絵を描くことに親しんできた。その後、多摩美術大学グラフィックデザイン学科に進学。大学で学んだアニメーションに魅了され、アニメーターを志すことになる。

アニメスタジオ勤務を経て、現在はフリーランスとして活動するうなばら海里さんは今回、高速インターネットでお馴染み「NURO」のループアニメ作業用 "高速" Lo-fi Hip Hop』を担当した。

ループアニメの魅力は終わりがないこと」と語る一方で、制作時間に比べすぐ消費されるアニメの儚さも魅力だと言う、うなばら海里さん。そんな若手アニメーターが、現在のアニメシーンに馳せる思いとは──。

取材・文:阿部裕華 編集:恩田雄多


全く予想をしていなかった、アニメーターへの道



──小さい頃からアニメはお好きでしたか?

うなばら海里 好きでしたね。親の影響もあって、小さい頃からスタジオジブリ作品が大好きでした。

レーザーディスクの『天空の城ラピュタ』を見たり、家族でドライブに行くときはジブリサウンドトラック主題歌のCDを聴いたり、原初的なアニメ体験はジブリ作品です。

──DVDでもBlu-rayでもなくレーザーディスク……当時としても貴重なメディア媒体で鑑賞されていたんですね。

うなばら海里 レアですよね(笑)小学生くらいは、キッズステーションカートゥーン ネットワークで放送されているアニメ、あとは「おもしろフラッシュ倉庫」のフラッシュアニメも見ていました。

──幼少期から幅広くアニメに触れていますが、アニメーターを志したのは大学入学後とうかがいました。多摩美術大学グラフィックデザイン学科は「タマグラアニメーション」という呼称でも知られているので、てっきり入学前から意識されていたものと思いました。

うなばら海里 周りからも驚かれます(笑)アニメがやりたくて入学してきた人も多い中、恥ずかしながらアニメの授業があることを知らずに入学しました。

昔から絵を描くのが好きで、小学生の頃からイラストレーターになりたかったので、大学に入るまで、まさか自分がアニメをつくるとは思っていなかったんです。

──アニメーション制作に興味を持ったきっかけは?




うなばら海里 授業の課題でパラパラ漫画の手法を用いたアニメピッケ』をつくったときです。自分の描いた絵が動いたのを見て「面白いかも」と思い、アニメーション制作に興味を持ちました。

興味の範囲から仕事にしたいと思うようになったのは、その後に制作した『アンクレットと蒼い海』の影響が大きいですね。『ピッケ』は1人で制作をしていたのですが、『アンクレット』は3人グループによる制作で、意見を出し合う中で人とつくり上げる面白さに気づきました。




うなばら海里 『ピッケ』はパラパラ漫画的な個人制作ですが、『アンクレット』はかなり商業アニメーションに近いつくり方をしています。メンバーの1人が当時すでにスタジオに通っていて、商業アニメの制作に精通している子だったんです。その子からいろいろ教わることで、どんどんアニメーションの仕事が面白いと思うようになりました。

あとは、課題以外で制作したアニメーションSNSで評価を得たことも大きかったかもしれません。自分の投稿に国内外のユーザーからたくさんの感想が寄せられたときに、アニメーションの持つ力を強く実感しました。

──課題作品である『ピッケ』『アンクレットと蒼い海』もですが、卒業制作の『その先の旅路』はSNSでの反響や様々な賞の受賞など、ご自身にとっても印象的な作品なのではないでしょうか?




うなばら海里 『その先の旅路』は「死」をテーマにしていたこともあり、ちょっと敬遠されてしまうのではないかと考えながら制作していました。それがSNSやコンペティションの場で評価され、多くの人に受け入れてもらえたことは、その後の作品をつくる上で重要な出来事だったと思います。

イラストや漫画で同じテーマを描いても、ここまでの反響には至らなかったと思います。ピアノだけの音楽とセリフなしの3分間アニメーションという表現が、自分の伝えたかったテーマにとてもマッチしていたんだと感じています。アニメーションだからこそ、伝えたいメッセージを作品として表現できました。

作品づくりにおける「公共性」と「共感」



──アニメーターとしてだけでなく、イラストレーターとしても活動されていますね。1本に絞らなかった理由はありますか?

うなばら海里 イラストアニメーションは互いに延長線上にあるものだと思っています。絵を何枚も描いて動かすことで、描かれたキャラクターに命を吹き込むのが手描きアニメーションの手法です。

なので、一枚絵の力はとても大切です。自分の線や色を持っていることは作家性にも繋がりますし、大事にしていきたい。アニメーターイラストレーター、今後も両方やっていきたいです。

──うなばらさんがSNSに投稿されている作品の多くは「女の子」「動物」「食べ物」がモチーフになっていると感じます。何かこだわりがあるのでしょうか?

うなばら海里 SNSに投稿する作品に関しては、「公共性」や「共感」を大切にしてきました。大学でビジュアルコミュニケーションを学んだことから、作品をつくる上では見た人に与える感情に重きを置いています。同時に私自身、人を喜ばせたり楽しませたりするのが好きな性格なのも大きいかもしれません。

その点で、「女の子」「動物」「食べ物」の3つは特に共感を集めやすいモチーフだと感じています。それに、描いていて楽しいです(笑)



うなばら海里 一方で、創作という意味では、自分の深いところにある“共感されないかもしれない”部分の表現に対する執着もあって。その1つが『その先の旅路』における「死」というテーマだったりします。

宮沢賢治作品のような、平原にぽつんと立って遥か遠くを見ているときみたいな感情を、自分のアニメーションで表現できないかということは常々考えています。ただ、そういう私自身の内側を見せるような作品をつくれていないのは課題でもあるので、今後表現できるようになっていきたいです。

──楽しみです。モチーフ以外に、たとえば動きの部分で、アニメを制作する際に意識していることはありますか?

うなばら海里 作画の部分では、『NHK みんなのうた』や『らんま1/2』、『キョロちゃん』のOP映像などを手がけてきた南家こうじさんのような動きに憧れています。

アニメーションの動きをよく「ヌルヌル動く」と表現することがありますが、南さんはただヌルヌル動くのではなく、メリハリが効いた絶妙な塩梅のアニメをつくられるので、すごく好きなんです。


「人脈が直接自分の力に」フリーランスへの転身

──これまでにサントリーローソンの企業タイアップアニメも制作されていますが、現在はフリーランスとして活動しているのでしょうか?

うなばら海里 そうですね。大学卒業後に就職したアニメ制作会社で2年間働いて、今年の6月に退職してフリーランスになりました。

ありがたいことに、会社に勤めていたときから外部のお仕事の依頼があって。どんどんやってみたい企画のお誘いが増えてきたのと、若いうちにいろいろな仕事を経験してみたい思いがあり、気兼ねなく仕事を受けられるフリーランスの形を選びました。



──タマグラ出身のクリエイターの中には、個人でご活躍されている方も多くいます。キャリア選択において、そういった方々の存在が少なからず影響を与えているのかなと感じました。

うなばら海里 影響は受けていますね。特にタマグラ出身の久野遥子さんは、アニメーションのみならず漫画やイラストなど、様々な分野で大活躍されていて、働き方から活躍の仕方まで素直に憧れています。

実は久野さんとは何度かお仕事をご一緒していまして、最近も久野さんがアニメーション監督をつとめる映画『化け猫あんずちゃん』のパイロットフィルムにも関わりました。近くでお仕事をさせていただいていることもあり、大変影響を受けています。



──個人でアニメーション制作をする選択が取りやすい要素が周囲に揃っていたのかもしれませんね。

うなばら海里 まさに環境がよかったと思います。コロナ禍の影響で会社がテレワークの体制になり、在宅で作業することのハードルが下がったのもあります。

それまで、誰にも見られていない状況で作業をしても仕事が進まないのでは……と考えていたので、フリーランスには抵抗がありました。だけど、実際に在宅で作業をするようになって「意外とできる!」と気づいたのは大きかったですね。

──実際、フリーで働いたことでの発見や変化などはありますか?

うなばら海里 当然ですけど、フリーランスフリーランスで大変ですよね。確定申告や休みの管理を自分でしなければいけないとか(笑)。自分のキャパシティがわからない状態で仕事を受けた結果、休まず働かなければならなくなってしまうこともあり、仕事とお休みの調整が難しいなと思います。

でも、自分の裁量でやりたい仕事ができるのはとてもいいですね。人脈が直接自分の力になっていくのも、フリーランスのいいところだと思います。次の仕事に繋げられそうと希望が抱けるのはワクワクします。

“やり過ぎる面白さ”を表現したループアニメ




──8月31日に公開された「NURO 光」のアニメ作業用 "高速" Lo-fi Hip Hop』について教えてください。インターネットミームになっている「Lo-fi Hip Hop×女の子」の動画をオマージュした作品ですが、もともと「Lo-fi Hip Hop」はご存知でしたか?

うなばら海里 作業中にLo-fi Hip Hopはよく聴いていたので、今回の企画を聞いたときは純粋に面白そうだなと思いました。

NURO 光」さんから「うなばらさんの絵とLofi Hip Hop動画の親和性が高い」とお誘いいただいたこともあるのですが、何より「『NURO 光』は高速インターネットなのでアニメーションも高速にします!」と言われて思わず笑ってしまいました(笑)

──『作業用 "高速" Lo-fi Hip Hop』動画ではどういった役割を担当されたんでしょうか?

うなばら海里 作画、背景、色彩設計を担当しています。キャラクターデザインもお任せに近かったですね。「大学生くらいの課題に追われている女の子」という設定だけいただいて、私が普段描いている絵柄に近い子を描かせてもらいました。



──キャラクターデザインで意識したポイントはありますか?

うなばら海里 私の好きな女の子の要素を詰め込んでいます(笑)。着飾っていない、自然体な女の子が好きなんですよ。なので、部屋着だしカメラも意識しない感じにしました。

今っぽい女の子がいいのかなとも思いつつ、どちらかというとレトロな雰囲気にしています。今どきのアニメなら目をもう少しキラキラさせていいかもしれないけど、あえてシンプルに。

私が小さい頃に見ていたアニメキャラクターが根底にあると思います。自分の好きな要素を詰め込んだ子を描かせてもらえたのは嬉しいです。



──背景や小道具なども動画の雰囲気にあっていますね。

うなばら海里 背景は部屋の雰囲気やどこに何を配置するかなど、すべて自分で考えて描きました。日本のマンションのようなイメージでつくり込んでいます。

あと、背景には3Dを少し使っています。「CLIP STUDIO」の3D機能を下敷きに、机に置かれている物のパース参考にしました。もともと3Dに対して取っつきづらいイメージがあり、ずっと使っていなかったのですが……必要に迫られて少しずつ勉強していたので、役に立ちました(笑)

3D機能を使えば、実際に本や積み木を並べた写真を使ってパース取りするのと同じ感覚で描けるので、時短にもなりますし画面にも説得力が出ていいなと気づきもあり、勉強してよかったです。



──制作する上で楽しかった点はありますか?

うなばら海里 「やり過ぎる面白さ」を試すことができて面白かったです。今まではゆったりした動きのアニメーションをつくる機会が多かったのですが、今回は徐々に速度が上がっていき、最終的には超高速になることを想定して描きました。

特に、ラストの「オラオラオラオラ」と手が増えるシークエンスを描くのは楽しかったです(笑)。以前つくったGIFアニメチューペットを折る女の子』を思い出しました




クリエイターにとっても回線速度は大問題



──うなばらさんが感じる「NURO 光」の印象について教えてください。

うなばら海里 「すごく速いインターネット」という噂はかねがね(笑)。自宅の回線は「NURO 光」ではないのですが、友人からよく「『NURO 光』にした」という話を聞いていました。

──アニメ制作などクリエイティブな仕事をする上でも、回線速度の速さは重要ですか?

うなばら海里 とても重要です。特にデータのやり取りをする際に感じますね。アニメーションデータって何ギガもあるんですよ。クラウドデータを提出する際、納期が残り1時間なのに、回線速度が遅いとアップロードに3時間かかることもあって。冷や汗をかいた経験が何度もあります

最近ではリモートでミーティングをする機会も増えたので、回線速度が遅いと画面が止まることも……。今の時代、回線速度の遅さは由々しき問題ですよ。今回つくったループアニメくらいの速さで作業ができるのであれば、早急に検討したいです(笑)

──『作業用 "高速" Lo-fi Hip Hop』には、クリエイター夏休み最終日の学生など、時間に追われている人を応援するというメッセージも込められています。うなばらさんは締め切り間近で終われている時、どう集中力を高めていますか?

うなばら海里 まずは、寝ます! 寝ずに頑張るクリエイターの方は多いと思いますが、私は寝ないと頭が回らなくなってしまうんです。

寝不足の状態だと5時間かかる作業が、ちゃんと寝れば3時間で終わることもある。それくらい集中力に差が出ると実感しているので、集中力を上げたいときは、寝ることをオススメします。

幾ばくもなく終わるアニメへの“儚さ”と“尊さ”



──うなばらさんは以前からループアニメを制作されていました。今回のような「ループアニメならではの魅力」をどのように感じていますか?

うなばら海里 見たいと思えば永遠に見ていられるところです。アニメーションって制作にすごく時間がかかるのに、見始めたら一瞬で時間が過ぎ去って終わってしまうじゃないですか。私自身は「こんなに時間をかけて描いたのに、もう終わっちゃった」という部分にも魅力を感じてしまうたちなんですが。

その点、クオリティの高いループアニメは終わりなく見ていられるのが良いですよね。私もループアニメを制作する上では、できるだけ途切れず、飽きの来ない映像にすることを意識しています。

なので「ずっと見ていられます」と言ってもらえるとかなり嬉しいです。

──最近では自主制作されたインディーアニメの隆盛で日々新しい作品が生み出されている一方、作品が消費されるスピードも速くなっているように感じます。

うなばら海里 頻繁にクオリティの高い作品に出会えるのは嬉しいですし、個人で活動するアニメーション作家が活躍しやすい時代になったなと感じます。スマホタブレットなどで手軽に作品をつくれるようになったこと、SNSなど発表の場が増えたことは大きいですよね。

ただ、1つの作品が見られて次の作品にいくまでの時間は、確かに速くなっていると思います。インディーアニメではないですが、最近は倍速でアニメを見る人もいるようなので、実は見ているようで見ていない人も多いのかなと感じることもあります。

つくり手としては動きのタイミングまで一生懸命考えて1枚ずつ描いているので……無料で見られる動画コンテンツが溢れている時代なので仕方がない面もありますが、なんというか諸行無常(笑)

とはいえ、アニメーションにもいろいろな表現手法がありますし、つくり手としては時代に適したスタイルに合わせていくことが重要なのかもしれません。たとえばインディーアニメや最近のアニメMVは、絵自体にインパクトを持たせて、枚数は描かないことで消費スピードの速さに対抗しているのかなとも思います。



──時代ごとに適した表現を模索するというのは大変ですね。

うなばら海里 本当に大変な時代だと思います! 私も頑張って追いつこうとしているものの、私自身は手描きで1枚1枚地道に描いていくのがすごく好きなんですよね。

でも先ほど言ったように、時間をかけたものが一瞬で終わるというアニメーションの儚さ・尊さも魅力を感じるし、それは無くなってほしくないとも思います。ちょっと特殊な感性かもしれないですが(笑)

──共感や公共性を考える一方で、作家として抱える儚さや尊さへの強い思いもある。今後発表されていく作品が楽しみですが、何か具体的な構想はありますか?

うなばら海里 作品の具体的な構想は内緒ですが、80〜90年代に隆盛していたような少年冒険譚やジュブナイルSFのアニメーションを自分の手で作るのが夢です。

今は個人作家としても商業アニメーターとしても駆け出しなので、様々なプロジェクトに参加して勉強を重ねていますが、ゆくゆくは少人数のチームを組んで新しい表現に挑戦してみたいとも考えています。

個人制作だとできることに限界がある、だからと言って規模が多すぎると全体が見えづらくなる。結束力の強い少人数のチームアニメーションを制作していくのが理想です。それを実現するためにも、まずは自分が人を集められるくらい実力をつけないとなと思っています。

そして、手描きアニメーションが好きではあるのですが、新しい技術や表現も勉強して、頑張って時代に追いついていこうと思います(笑)。その中で私がまだ表に出せていない作家性が表現できたら嬉しいですね。
インディーアニメの台頭と作品消費の加速 うなばら海里インタビュー