コロナ禍で多くなった「おうち時間」に家のベランダや庭、畑などで「家庭菜園」を楽しむ人が増えています。自分で育てた野菜や果物を収穫して、食べるのを楽しみにする人が多い一方で、育った野菜や果物を勝手に摘み取って食べたり、持ち帰ったりする不届き者がいて、ご近所トラブルの原因になっているケースもあるようです。

 ネット上では「人が大事に育てたものを勝手に食べるなんて許せない」「普通に犯罪じゃん」といった声の他、「子どもの頃、隣家の木から落ちた柿をこっそり持って帰ったことがあるけど、これも罪に問われる?」など、疑問の声もあります。家庭菜園の野菜や果物を巡る法的問題について、弁護士の藤原家康さんに聞きました。

窃盗罪や遺失物等横領罪の可能性

Q.家庭菜園で育てた野菜や果物を勝手に摘み取った場合、どのような罪に問われますか。

藤原さん「ベランダや庭、畑など、家の敷地内で育てている野菜や果物を他人が許可なく、摘み取って食べたり、持ち帰ったりした場合の罪としては、窃盗罪(刑法235条、法定刑は10年以下の懲役、または50万円以下の罰金)や遺失物等横領罪(同254条、法定刑は1年以下の懲役、または10万円以下の罰金もしくは科料)に該当することが考えられます。

また、民事で損害賠償請求を行う場合は、当該野菜や果物の時価の他、迷惑を被ったことによる精神的損害に対する慰謝料と物理的損害(事件の対応に要した実費など)を合わせた額(おおよそ数万〜数十万円)も生じると考えられます」

Q.摘み取る際、「許可なく他人の敷地内に侵入」しているケースもあるようです。

藤原さん「この場合も同様に、罪に問われる可能性があります。他人の土地へ勝手に入った場合、少なくとも、庭など塀で囲まれた場所に侵入した場合は住居侵入罪(刑法130条、法定刑は3年以下の懲役、または10万円以下の罰金)に問われる恐れがあるでしょう」

Q.隣家の敷地内にある木についた実について、「自分の家の敷地内に落ちていたから、勝手に拾って食べた」ケースではどうでしょうか。

藤原さん「この場合も、先述の遺失物等横領罪になると考えられます。たとえ、自分の敷地内に果実が落ちていたとしても、その果実の所有権は特に事情がない限り、木の所有者にあります(民法89条1項『天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する』)。

つまり、果実を持ち帰る人(自分の家の敷地に果実が落ちていた人)が木を所有していなければ、果実の所有権を侵害したとみなされ、遺失物等横領罪に該当します。『公道に落ちていたから勝手に持ち帰った』ケースも同様の罪に問われる可能性があるでしょう」

Q.被害に遭った際、証拠として押さえておくとよいものやポイントについて教えてください。

藤原さん「録画や録音をし、犯行の状況を証拠にするとよいと思います。録画は防犯カメラを使用することも考えられますが、不鮮明な場合は証拠として十分ではないこともあるため、どのような映りになるかを普段から確認しておいた方がよいでしょう。また、防犯カメラの画像は1~2週間で消去されることが多く、さらに、捜査機関でなければ当該画像を取得できないこともよくあります。保存の方法を含め、早急に検討・対応しましょう」

オトナンサー編集部

家庭菜園の野菜や果物、勝手に「収穫」したら?