コロナ禍による巣ごもり生活で漫画や動画配信サービスが絶好調。そうしたなか、漫画版の終了から24年の歳月を経て実写ドラマ化された『湘南純愛組!』は、実はバイクファンにこそオススメしたい、名車ラッシュな作品です。

漫画『湘南純愛組!』は懐かしい名車のオンパレード

“バイク漫画の金字塔”といわれる作品は、『750ライダー』をはじめ、『バリバリ伝説』『疾風伝説 特攻の拓』などがありますが、そのなかでもバイクファン目線で隠れた名作といえるものが、2020年2月に連載終了から24年を経てAmazonプライムにて実写化されました。1990(平成2)年から6年間「週刊少年マガジン」で連載された『湘南純愛組!』です。

作者は藤沢とおるさん。アニメ化、ドラマ化、さらには映画化もされた人気漫画『GTO』の作者であり、『湘南純愛組!』はその主人公、鬼塚英吉や相棒の弾間龍二の破天荒な高校時代を描いた、『GTO』の前身となる青春漫画です。

その登場人物たちのほとんどがバイクに乗っており、改めて読み返すと、懐かしの絶版バイクで溢れかえっている作品なのです。作中に登場したバイクを、キャラクターとともに振り返ります。

カワサキゼファー1100」「ZII」

主人公の鬼塚英吉はカワサキ車に乗ることが多く、愛車とする「ゼファー1100」と「ZII」とも、生産が終了したレア車です。英吉はゼファーを通学や遊びなどの普段使いで乗っていた一方、ZIIは、“ここぞ”というときに英吉が乗ったバイクでした。

英吉のZIIは、師とも言える人物で初代「暴走天使(ミッドナイトエンジェル)」総長である真樹京介から受け継いだ、とても思い入れのある1台。作中(単行本23巻)の伝説的なシーン“西湘最高速レース(スピードキング)”では、英吉がZIIに乗り、「200km/hでウィリー」「300km/hの加速」などを披露しています。

ホンダ「CBX400F

もう1人の主人公・弾間龍二は英吉と対照的に一貫してホンダ車に乗っており、なかでもプロアーム仕様の「CBX400F」を愛用していました。

CBX400Fが発売された1980年代前半は各社がDOHC4気筒バイクを誕生させており、ホンダは出遅れていました。そうしたなかでホンダが世の中に送り出したCBX400Fは、瞬く間にベストセラーとなりました。しかし、1981(昭和56)年から4年間しか販売されておらず、いまではレアな1台になっています。

龍二は作中でなかなか無茶な乗り方を繰り返しており、崖からバイクごと落ちたことも。しかし、龍二は大破したCBX400Fを片手で持ち上げ、修理して乗り続けました。

VMAXでジャックナイフターン!?

英吉・龍二のライバルたちも、今では絶版となったバイクに乗っています。

ヤマハVMAX

かつては英吉と龍二がシメていた湘南極東高校の転入生として登場した神堂寺郁也の愛車は、2017(平成29)年に生産終了となったヤマハVMAX」。お兄さんの形見という思い入れの強い一台でした。

郁也が乗っていた初代VMAXは、当時世界最強と言われた排気量1200cc、Vブーストシステム付きエンジンを搭載したモンスターバイクとして知られます。そのVMAXで、郁也は後輪を浮かせて相手の顔面を殴る“ジャックナイフターン”を決めるという、なんとも衝撃的な乗り方を披露しています。

ホンダ「スティード」

“鎌倉の狂犬”という異名で当初は英吉たちの敵として登場し、後に仲間となった鎌田 純の愛車はホンダ「スティード」です。

「スティード」は1988(昭和63)年にホンダ初のアメリカンバイクとして登場。排気量の異なる400ccと600ccの2ラインナップで累計約8万台を売り上げ、90年代のアメリカンクルーザーブームを牽引しました。

鎌田はアメリカ人とのハーフというキャラだったためか、英吉たちの仲間の中で唯一アメリカンタイプのバイクに乗っていました。さらに鎌田は音楽でアメリカンドリームを掴むため渡米しましたが、アメリカでもスティードに乗っていたのでしょうか。

女性キャラが乗った「ジャジャ馬」

女性キャラも様々なバイクに乗って登場します。

カワサキKH250」

レディースチーム横須賀 炎舞踏」のリーダー、水無月沙也はカワサキKH250に乗って登場しました。こちらも今では伝説的となっている絶版車です。

カワサキKH250は1976(昭和51)年から1982(昭和57)年まで販売され、「ケッチ」の愛称で親しまれました。ジャジャ馬といわれたカワサキマッハ」シリーズの後継車であり、発進時には前輪が浮き上がることもある、そのジャジャ馬っぷりをしっかりと引き継いだ1台でした。

カワサキ「エリミネーター750」

弾間龍二の恋人である長瀬 渚は、過去の経験から“夜叉”と呼ばれる凶暴なもうひとつの人格を秘めており、それが覚醒したときに乗っていたのがカワサキ「エリミネーター750」です。

エリミネーター750はアメリカンバイクの風貌ですが、実はドラッガーであり、強烈な加速が持ち味。“最速のナナハン”と呼ばれた「GPZ750R」と同じエンジンを積んでいました。1985(昭和60)年からわずか数年しか販売されず、生産台数も少ないため、いまでは非常に貴重なモデルです。

ちなみに渚はこのドラッグマシンで大型トラックの側をギリギリで走るなど、なんともアクロバティックな乗り方をしています。

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『湘南純愛組!』には他にも多くの魅力的なバイクやクルマが登場します。まだまだ自粛期間が続く今だからこそ、是非手にとって読んでみてください。

弾間龍二が愛用したホンダCBX400F(画像:ホンダ)。