交通違反切符を切られた際、押印または指印が求められますが、これは「任意」であると国家公安委員長が改めて周知しました。押印にはどのような意味があり、なぜいま、改めて周知されたのでしょうか。
都道府県警察のウェブサイトでも「任意」を示す
印鑑の印肉、朱色なら朱肉ですが、黒いと黒肉と呼ぶそうです。この、あまり使われない黒肉が最もポピュラーに使われているのが交通違反の反則告知書ではないでしょうか。印鑑を持ち歩いていない人のために警察官が携帯し、違反者が人差し指に付けて自署の横に押す。ちなみに、親指の場合は拇印ですが、そのほかは「指印」というそうです。
その押印も指印も、いわゆる反則切符には不要だったって知ってましたか。
2021年9月7日(火)の閣議後会見での出来事です。棚橋泰文国家公安委員長が突然、このようなことを話し始めました。
「交通反則切符に押印や指印を押さなければならないことに対して、国民から疑問の声があるという問題提起をいただきました。違反者の押印や指印は任意で求めているものであり、法的に強制されるものではありません。このことを改めて国民に周知を図ってきます」
すでに一部の都道府県警察のホームページには「供述書欄に署名・押印を求めますが、強制するものではありません」(山口県警)など記載されている場合もありますが、警察庁では、こうした形で全国に周知を図っていく予定です。
なぜいま周知を? 背景に河野太郎氏
反則切符で印鑑を求められるのは、供述書の最後に異議のあるなしに関わらず、内容に間違いがないことを示すためです。社会通念上は、書面の内容を認める場合に押印しますが、違反を認めるから押す、認めないから押さない、という意味は反則切符にはありません。
では、何のために押すのか、ということになります。
これは違反者が反則金制度を利用して反則金を納付するか、家庭裁判所の交通裁判に移行するか、という判断が影響しています。
棚橋氏はこうも言います。
「押印や指印を求めるのは、捜査書類に当たる箇所であるから、現在進めている刑事訴訟のIT化の中で、法務省と連携しつつ合理化のあり方を検討します」
棚橋氏が押印や指印は任意であるということを話すきっかけになったのは、河野太郎行政改革相に寄せられた国民の声でした。免許証更新時の持参写真の在り方についても、ここで取り上げられました。さらに、今回の押印・指印とは別に昨年11月、河野担当相は行政手続きの押印不要を打ち出していました。
今年9月にはデジタル庁が発足し、行政のデジタル化が加速します。アナログの押印は行政手続きとしても難しくなります。それでも押印や指印は、電子サインのような形で残るのでしょうか。
「IT化については、刑事手続き全般に関わる。押印・指印の問題は関連してくるので、その中で国民の理解が得られるようにしたい」(棚橋氏)
取締りで違反を指摘されると、素直に応じられず、勢いにまかせて押印や指印を拒否することがあります。しかし、押すか押さないかはあなた次第。指摘された違反を冷静に振り返った結果で決めたいものです。
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