新型コロナウイルスの流行が続く中で多くの小中学校が新学期を迎えましたが、埼玉県戸田市の学校給食の献立がネット上で波紋を広げています。市内の小学校の給食が「コッペパン1個と牛乳1つ」と報道番組で紹介されたためで、「月曜から金曜までずっと?」「給食だけはちゃんと食べさせてほしい」「せめて、おにぎりとかに」などの声が寄せられています。育ち盛りの子どもに対して、コッペパンと牛乳だけというのは気の毒な気もしますが、なぜ、市はこの献立を採用したのでしょうか。

 取材をすると、新型コロナの流行拡大の中で夏休みが明け、学校給食を実施するかしないか、実施するならどのようにするか議論があったようです。戸田市教育委員会事務局学校給食課に聞きました。

新型コロナ対策、午後は自宅で授業

Q.現在、戸田市内の小中学校で提供している給食の献立について教えてください。

担当者「市内の全小中学校を対象に、コッペパンと牛乳による『簡易給食』を9月3日から始めました。小学校の給食はコッペパン1個、ジャム1個、牛乳1つ、中学校の給食はコッペパン1個、ジャム1個、牛乳1つ、チーズ1個です。なお、9月7日からは、小中学校ともにデザートを追加しました」

Q.簡易給食を始めた理由について教えてください。

担当者「8月以降、市内で新型コロナウイルスの新規感染者数が急増したことがきっかけです。その影響で、小中学生の子どもを持つ保護者の中には『学校給食で感染リスクが高まるのではないか』と不安の声を寄せる人もいたため、当市は食事の際の感染リスクを軽減すべく、簡易給食の提供を8月25日に決定しました。

ただし、食材の調達の関係上、すぐに簡易給食を始めるのは難しく、8月26日から9月2日までは通常の献立で給食を提供しました。給食を一時的に停止するという選択肢もありましたが、家庭の事情で、給食がなければ困るという児童・生徒もいるので、最低限、パンと牛乳は提供しようということになりました」

Q.なぜ、簡易給食が感染リスクの軽減につながると考えたのでしょうか。通常時の給食と簡易給食の時間などの違いも含めて、教えてください。

担当者「簡易給食は通常時の給食よりも食事時間を短縮しているのが特徴で、それにより、児童・生徒がマスクを外す時間や、お互いにしゃべり合う時間を減らすことができると考えたからです。通常時の給食の食事時間は20分であるのに対して、簡易給食の食事時間は15分です。

先日、『(戸田市の小学校の)給食の時間が45分から15分に短縮された』とテレビで報道されましたが、『45分』というのは、食事のほか、配膳や片付けなども含めた時間です。食事の時間を45分から15分に短縮したわけではありません。また、通常時の給食の際は、給食当番の児童・生徒が配膳を担当していますが、感染防止対策のため、簡易給食の配膳はできるだけ、教員に担当させるようにしています。

なお、現在の献立と異なる部分もありますが、簡易給食は昨年6月の休校明けの際にも、感染防止策として10日間ほど実施しました」

Q.ネット上では「コッペパンと牛乳だけでは栄養が足りない」といった意見もありますが、この件についてはどのように考えていますか。また、栄養面を考える上で、おにぎりや野菜スープなど、コッペパン以外の食べ物を献立に加えようとは思わなかったのでしょうか。

担当者「確かに保護者から、『簡素過ぎる』『パンと牛乳だけでは少ない』『栄養が足りないのでは?』といった意見も寄せられていますが、栄養が不足するのは承知の上で簡易給食を実施しました。おにぎりなど、コッペパン以外の食べ物を提供する場合、事前に調理事業者に注文しなければならず、その分、簡易給食の開始が遅れたと思われます」

Q.簡易給食はいつごろまで続ける予定なのでしょうか。

担当者「9月10日まで実施します。翌週の9月13日からは、通常時の給食の献立よりも品数は少ないですが、コッペパン以外の食べ物も提供する予定です。最近は新規感染者数が減少傾向にあることから、いずれは通常時の給食の献立に戻すことができると考えています」

Q.ちなみに、給食後、市内の小中学校の児童・生徒はどのように過ごすのでしょうか。

担当者「給食後、児童・生徒は帰宅し、午後からオンライン授業を受けています」

Q.簡易給食は通常の給食よりも材料費が安くなる可能性がありますが、その場合、給食費を一時的に減額するのでしょうか。

担当者「今後、簡易給食の実施期間分を対象に給食費を減額する予定です」

オトナンサー編集部

給食がコッペパンと牛乳だけ?(写真はイメージ)