国際航業株式会社(代表取締役社長:土方 聡、以下「国際航業」)は、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科の佐藤彰洋教授の研究グループと共同で研究を行い、2021年度統計関連学会連合大会において「スマートフォンの位置情報を用いた人流データの信頼性評価ならびにメッシュ統計※1データの生成方法」を発表しました。

本研究は今年度からスタートし、スマートフォンの位置情報から得られるビッグデータを、より価値あるものとして活用する方法について分析を重ね、中間報告として公表したものです。

研究のポイント
人流データの元となるセンシングにおけるサンプル抽出方法モデル化
センシング領域における人口密度に着目したメッシュ統計の生成方法開発
用途に適した信頼度を付与するための信頼性評価の判断となる指標を作成

<研究背景>
コロナ禍で人の動きの変化に関心が高まる中、当社は自社で開発したWi-Fiの接続情報を基にした人流解析データ(接続情報は個人を特定できない形で第三者提供する旨を全ユーザーから同意を得ている安全なデータ)の社会における効果的な活用方法を求めていました。そのため、首都圏で初のデータサイエンス学部がある横浜市立大学に、当社より共同研究の申し入れを行いました。今回の共同研究は、「人の動きと変化」について知る際の指針となることを、成果の一つとして目指しています。

<研究内容(概要)>
本研究で扱うスマートフォンの位置情報付きログデータは、スマートフォンがWi-Fiのアクセスポイントへ接続したときに収集されます。このデータは位置情報も含むことからプライバシーへの配慮と対策が必要であること、そして、大量のデータが生成されること等から、その利用の際にはさまざまな課題が指摘されていました。共同研究では、Wi-Fiアクセスポイント位置情報を含むログデータからメッシュ統計プロダクトの生成過程を取り上げ、その性質を調べました。また、これを利用した意思決定を支援するために、必要な機能とユースケースについてその特性も分かり易く整理しました。

さらに、このプロダクト(人流データ)をより効果的に利用するために、生成過程の特徴から信頼性評価も行っています。一様にどこからでもサンプル抽出可能な通常の標本調査と異なり、今回のセンシングにおける標本調査は、母集団のうち観測窓から見える部分だけがサンプル抽出されるといった課題があります。そこで今回のサンプル抽出方法を「のぞき窓モデル」(図1)と名付け、このモデルを前提とした人流データの活用方法を検討しました。研究チームではまずセンサとなるWi-Fiアクセスポイントの電波領域を推計し、観測窓の大きさや数量、重なりを確認しました。さらに観測領域内での人口密度(1mメッシュ)を算出し、集計しました。このとき調査対象エリアのうち観測窓がカバーするエリアがどの程度あるのかを信頼性評価基準の一つと捉え、メッシュ統計データを作成しました。

図1 サンプル抽出方法のモデル化(のぞき窓モデル)
今後の展開
スマートフォンから得られる位置情報データを用いた人流データには、さまざまな特徴があります。当社の「Wi-Fi人口統計データ」には、属性情報(性別、年代)や推定居住地などの情報も含まれていますが、これらの情報は、例えばある施設に来訪された方の属性比率、あるいはどこからの来訪者が多いのか、などの分析に活用することができるため、官民問わず幅広いニーズが期待できます。しかし、このデータもサンプル分析であるため、どの程度のサンプル数があれば母集団の属性や移動傾向を正しく推計できるのか、という信頼性評価が必要になります。現状では未だ手法が固まっておらず、過去の経験や別の計測手法による計測結果との照合による評価が一般的となっています。この点についても統計学の観点から客観的な指標を提示できることにより、より信頼できる人流データの活用方法を見いだせるのではないか、と期待されています。なお、本共同研究についての論文発表は2021年度内に行う予定としています。

<関連情報>
国際航業主催 無料ウェビナーのお知らせ 
日時:2021年9月15日(水)14:00 - 15:00
タイトル:流通小売業DX ~人流データが多店舗経営を変える!~
内容:Wi-Fi人口統計データの詳細はもちろん、特に多店舗展開されているお客様における活用ケースなどをご紹介します。
申込みURL:
https://biz.kkc.co.jp/eventsdetail/20210915/ 
※ウェビナーの開催URLは申込者に後日送付いたします。

CEATEC 2021 ONLINE 出展予定
日時:2021年10月19日(火)- 22日(金)
https://www.ceatec.com/ja/about/

※1 メッシュ統計:都道府県市区町村などの行政区画とは独立に、より細かく、緯度と経度により網の目のように細かく区切った区画(メッシュ)を集計・公表単位として作成した空間統計。元データを統計化することにより秘匿性を有するとともに、行政区画と異なり時間的に統計単位が変化しない優位性を有する。更に、任意の形状にメッシュ統計を再集計することができるなどの計算可能性と、離散近似による高速な探索可能性もある。

配信元企業:国際航業株式会社

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