ドラマホリック!『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京 水曜深夜0時)の第9話が放送された。「雪映がこんなエグい人だとは思わなかった…」「冷え切った日常と引き換えに手に入れた絆は代償が大きすぎた…」「これまでの人生で最高にコワイドラマ」「ストーリーも北山宏光の演技も、深夜に放送するにはもったいない」「追い込まれてく2人を見るのが辛い」とSNSでも、あまりの鬱展開にさまざまな声が噴出した。



忍び寄る恐怖と日常が混在する正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)の生活。救いがどこにも見当たらず、エグ過ぎる展開に、見るだけで精神も肉体も疲労困憊してしまうという人も多いだろう。だが、そんな中にも希望はある。といっても物語ではない。すでにSNSでも多くの投稿が寄せられているが、正隆を演じる北山宏光の芝居が回を増すごとに際立っていくことだ。(以下、第9話の一部ネタバレあり)


冒頭、佐野(深水元基)を殴りつけたにもかかわらず、妹・菜穂(西川可奈子)の前ではまるで何事もなかったかのように笑顔を浮かべる雪映。佐野の傷跡を抑えながら、北山は雪映の変ぼうぶりに、はっ!と驚いた表情を見せている。それまで息づかいしか聞こえなかった中、息を止めたことで時間が一瞬、止まったかのように錯覚させられてしまうほどだった。


そして流れるモノローグ。「きっとあのときから、俺も雪映も少しずつ心も体も生活も、萌に侵食されていたんだ」。

その正隆の言い方は、まさに萌に侵食され、異臭に気づかないほど麻痺していたことを予想させる。やがて異臭騒ぎは市役所の職員が来るほどに。家の中を調べる職員に敵意を持った目を向けていた正隆だが、目の動きだけで職員の立っている場所が、萌の死んだ場所だということが分かる。目を下にすると同時にゴクリと唾をのみ、おびえと緊張の目をしたからだ。フラッシュバックで萌の死体が映し出されるが、そんなことをしなくとも北山の芝居だけで、状況が分かってしまう。


そんな北山の芝居の中でも今回、とりわけ凄みを感じたのが萌の死体を掘り起こしたときと、山へ埋め直しに行ったときだ。


正隆は雪映と埋めた萌の死体を掘り起こす。萌が土の中から姿を現したことで腰を抜かした正隆は、ふと空を見上げる。輝く満月を見て、正隆は涙ぐみながら、再び土を掘り始めた。そのときの表情は、もういやだ、助けてくれ、こんなことはやりたくない。しかし満月を見て少し冷静さを取り戻し、それでもやるしかないのか…という涙だ。言葉のない芝居で観る人の想像力を掻き立てている北山に圧巻させられた。


また雪映と2人で腐敗の進む萌の死体を山の中へ埋めに行ったときのこと。雨の中、2人は明け方までかけて死体を埋めた。車へ戻るも、正隆は死体を埋めた場所をチェックするため、1人で戻る。その帰り際、疲れて下を向き歩いていた正隆を何かが引き留めた。後ろを振り向くと、そこに立っていたのは萌。しかし、死に際のクマで目の下を真っ黒にした険しい表情の萌ではない。真っ白な服を着てキレイな顔の萌だった。朝の陽ざしの中、たたずむ萌を見た正隆は何を思ったのだろう。最初は驚いたように目を見開いていたが、やがて今までにはない表情を見せる。後悔のような、哀しさのような、愛情のような。雨に濡れ、いまにも泣きそうな寂しい表情をする北山の芝居にすさまじさを感じさせた。


北山がジャニーズだから世辞を言ってるわけではない。そもそもアイドルが、ここまでの鬱ドラマに出るのがおかしいのだ。北山がジャニーズの演技派俳優として名前をあげるまで、そう長くはかからないだろう。


文:今 泉


第10話あらすじ(9月15日(水)放送)

正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)の元に刑事の池崎(甲本雅裕)と萌(萩原みのり)の弟・創甫(北川拓実)がやってくる。2人は萌と佐野(深水元基)の失踪について問い詰めるが、雪映は冷静なまま、不倫相手だった萌を心配したフリをする。


池崎は2人が殺されている可能性を指摘し、家中の部屋を見せるよう要求するが…?


一方、正隆の仕事部屋に監禁されている佐野は結束バンドを切り、逃げ出す機会をうかがっていた…。


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■ドラマホリック!「ただ離婚してないだけ」
毎週水曜 深夜0時放送
放送局:テレビ東京ほか
配信:動画配信サービスParavi』『ひかりTV』にて配信予定

©「ただ離婚してないだけ」製作委員会

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