「機動力は褒めてあげないとね」そんな風に私が感心していたのは金曜日、お昼のニュースでブラジル代表から戻って来たカセミロがバルデベバス(バラハス空港の近く)のレアル・マドリー練習場に車で入っていく映像を見た時のことでした。いやあ、この9月の各国代表戦週間はCONMEBOL(南米サッカー連盟)がコロナ禍により、進行が遅れていたW杯予選を1つ増やして3試合実施、通常より日程が長くなったせいで物議を醸していたんですけどね。プレミアリーグに倣って、ラ・リーガCAS(スポーツ仲裁裁判所)に招集拒否を認めるように訴えたものの、見事に蹴られてしまったため、各クラブ総勢28人にもなる選手たちを送り出したんですが、同時に超速帰還チャーター便大作戦が決行されることに。

ええ、南米予選の3試合目は木曜夜(スペインでは金曜早朝)に終わったんですが、まずはブラジルvsペルー戦(2-1)の開催されたレシフェから、カセミロ、ビニシウス、ミリトン(レアル・マドリー)、クーニャ(アトレティコ)、そしてペルー勢のルイス・アブラハム(グラナダ)、タピア(セルタ)が乗った飛行機がマドリッドに向かって出発。バランキージャからもコロンビアvsチリ戦(3-1)のすぐ後、クラウディオ・ブラボ(ベティス)、アラルコン(カディス)、エンソ・ロコ(エルチェ)らのチリ勢、先週土曜にラージョ入団が決まったファルカオ(ガラタサライとの契約を解除)を乗せた便が金曜午後には到着することに。

ただ、プレサ会長も「Es imposible que juegue mañana/エス・インポシブレ・ケ・フエガ・マニャーナ(明日の試合でプレーするのはムリ)。12時間前に試合したばかりで、回復する時間がないし、メディカルチェックもまだしていないから」と言っていたように、やはり土曜午後6時30分からのレバンテ戦でデビューはできず。この辺はCLグループリーグ1節が来週火曜にあることに忖度して、セビージャvsバルサ戦、ビジャレアルvsアラベス戦を延期することにしたラ・リーガの片手落ちと言っていい?

そしてチャーター便第3弾はウルグアイvsエクアドル戦(1-0)の後、モンテビデオを離陸。ヒメネス(アトレティコ)、バルベルデ(マドリー)、アランバリ(ヘタフェ)ら、マドリッド勢の他、アラウホ(バルサ)、マキシゴメス(バレンシア)、そしてエクアドルエストピニャン(ビジャレアル)が乗った飛行機は途中、アスンシオンに寄り、パラグアイvsベネズエラ戦(2-1)を終えた4人の選手を拾って戻って来たんですが、ちょっと遅れているのはAFA(アルゼンチンサッカー協会)の手配したフライトで来るコレア、デ・パウルのアトレティコ勢以下、モンティエル、アクーニャ、パプ(セビージャ)、ギド、ペッツェラ(ベティス)、ルリ、フォイス(ビジャレアル)。こちらは一夜明けてから、ブエノス・アイレスを出発と、別に週末のリーガ戦が延期になったチームの人たちはいいんですけどね。金曜夜のマドリッド着となると、日曜午後2時(日本時間午後9時)という早い時間に開催されるエスパニョール戦のため、バルセロナに前日移動しないといけないアトレティコは結構、貧乏クジを引いているかも。

まあ、リーガ戦のことはまた後で話すことにして、先にスペイン代表のW杯予選3試合目、水曜のコソボ戦がどうだったかもお伝えしておかないと。どうやら、ルイス・エンリケ監督にはスタメンを固定しない癖があるらしく、いえ、スウェーデン戦に2-1で負けた後、ジョージア戦で5人を変えていたのはわかるんですけどね。まさか、そのメンバーで4-0と快勝しながら、今度は6人も入れ替えてきたのにはちょっとビックリだったかと。しかも右サイドの中盤で2アシストと、ようやく代表でも本領を発揮できたマルコス・ジョレンテ(アトレティコ)を懲りずに右SBで先発させるって、天邪鬼にも程があると思うんですが、プリスティナ(コソボの首都)での試合の方はいつものようにスペインがボールを独占してスタート。

ただ、ゴールはなかなか入らず、ようやく先制点を挙げられたのは前半32分、ラポール(マンチェスター・シティ)のスルーパスをカルロス・ソレル(バレンシア)、モラタ(ユベントス)と繋いで、この日、初先発となったフォルナルス(ウェストハム)がゴール右隅に決めてくれたんですが、とてもそれだけでは安心感がわかず。というのも前半には2度、後半序盤にもスペインのボールロストから、敵選手がフリーでGKウナイ・シモン(アスレティック)に迫るシーンがあって、うーん、CBのイニゴ・マルティネス(アスレティック)は精神的疲労を理由にユーロ参加を辞退して、久々の代表戦でしたし、左SBのレギロン(トッテナム)など、ジョージア戦でふくらはぎを痛めたガヤ(バレンシア)の代わりに追加招集され、月曜に合流したばかりでしたからね。

仕方ない面もあるのかもしれませんが、どうにも今回の彼らは守備的なミスが目立ったかと。まあ、ルイス・エンリケ監督も「El balón no botaba en las mejores condiciones/エル・バロン・ノー・ボタバ・エン・ラス・メホーレス・コンディシオネス(いいコンディションでボールがバウンドしなかった)」と言っていたように、ピッチに難があったことは、後でラポールなども指摘していましたけどね。実力差が圧倒的にあったにも関わらず、後半45分、ミケル・メリノ(レアル・ソシテダ)のスルーパスを受けたフェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)がエリア前で敵をかわしてシュート。VAR(ビデオ審判)のオフサイドチェックを経て、やっと2点目がスコアボードに上がるまで、私もヒヤヒヤし続けでしたっけ(最終結果0-2)。

え、それでも同日、スウェーデンがアウェイでギリシャに2-1と不覚と取り、グループ首位に復帰していたスペインは勝ち点差を4に広げることができたんだろうって?ええ、その通りなんですが、相手は試合消化数が2つ少ないですからね。10月にスペインがネーションズリーグファイナルフォー、6日に準決勝イタリア戦、10日に3位決定戦or決勝をベルギーフランス相手に戦っている間にコソボ戦、今度はホームでのギリシャ戦をプレーして、ここで試合数が揃うんですが、連勝されれば、再び首位はスウェーデンの手に。

そうなっても11月のギリシャ戦、そして最終節の直接対決をスペインが制すれば、グループ1位で本大会出場権ゲットができるとはいえ、「Que dependa de nosotros no significa que lo vayamos a conseguir/ケ・デペンダ・デ・ノソトロス・ノー・シグニフィカ・ケ・ロ・バジャモス・ア・コンセギール(自分たち次第というのは、それを達成することを意味する訳じゃない)」(ルイス・エンリケ監督)とはごもっとも。まあ、今回はユーロ準優勝に貢献したペドリ(バルサ)やオジャルサバル(レアル・ソシテダ)、パウ・トーレス(ビジャレアル)、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)らが東京オリンピックとの連続勤務だったため、お休みをもらっていたというのもありますしね、逆にその不在のせいで、ユーロには呼ばれなかったカルロス・ソレルやフォルナルスが頭角を現すという収穫もあったため、10月は更に厳選されたメンバーが招集されるかと。何より、次回からは代表戦が3試合から2試合に減ってくれるというのは、これからヨーロッパの大会もスタートして、過密日程となる選手たちも助かるんじゃないでしょうか。

そしてマドリッド勢の近況を見ていくことにすると、土曜のラージョの後、エスパニョール戦で日曜のトップバッターを務めるのがアトレティコなんですが、とにかく水曜から、グリーズマン(バルサからレンタル移籍)祭りが続いていてねえ。そう、火曜のフランス代表のフィンランド戦で見事なgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を2発決め、今季はもう3得点と、自分がいない間に前線の定位置を確保するまで成長したコレアに遅れを取るものかいう意志を示した当人は、午前セッションでマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に顔を出すと、お昼休みにバッサリ髪を切って、ワンダメトロポリターノのピッチでセレソ会長と一緒にユニフォームを掲げる無観客プレゼンでポーズ。

その場には、2年前のバルサ移籍の際に「No te vayas del Atleti. Aquí serás leyenda, allí serás uno más/ノー・テ・バジャス・デル・アトレティ。アキー・セラス・レジェンダ、アジー・セラス・ウノ・マス(アトレティコから出ないで。ここでなら、レジェンドになれるけど、あっちではただの1人の選手よ)」という言葉で当人に警告した奥さんも同席。セレソ会長に「Tenías que haber hecho caso a Erika/テニアス・ケ・アベールエッチョー・カソ・ア・エリカ(エリカの言うことを真剣に受け止めるべきだったね)」とネタにされていましたが、まあこんなのは序の口ですって。

背番号8を受け継ぐ前にサウール(チェルシーレンタル移籍)には許可をもらったと言っていたグリーズマンは、次に収録したクラブメディアのビデオインタビューでも「Con Kokín siempre me llevé muy bien, hemos hablado por WhatsApp/コン・コキン・シエンプレ・メ・ジェベ・ムイ・ビエン、エモス・アブラードー・ポル・ホワッツアップ(コケとはすっと仲が良くて、WhatsAppで話していた)」と現キャプテンとツーカーであることを告白。更にはスタジアム併設のオフィシャルショップを訪れて、自身のネームをユニにプリントするわ、やはり併設のTerritorio Atleti(テリトリオ・アトレティ/アトレティコのクラブミュージアム)も見学と、ここまでビデオをガンガン出されると、来週水曜のCLポルト戦でホーム再デビューした時、できるだけファンのpito(ピト/ブーイング)を減らそうと、クラブが必死で印象操作しているように感じてしまうのは私だけではない?

そんな調子で盛り上がっているアトレティコでは、木曜に練習見学に行った際にはコケとジョレンテは1日オフで、イングランド代表のトリッピアーも戻っていなかったんですが、金曜には南米組を除いて、選手たちは全員帰還。モンテネグロ代表でまたケガをしたサビッチも回復しており、負傷のリハビリリーガデビューしていなかったジョアンフェリックス、フェリペ、エレーラ、そしてビジャレアル戦でヒザを痛めたルイス・スアレスも完治と、これならコレア、デ・パウル、ヒメネスがエルチェ戦に間に合わなくても大丈夫かも。でもねえ、まさか金曜の夜、ワンダで昨季のリーガ優勝への道のりを描いたアマゾン・プライムのドキュメンタリー、「Otra forma de entender la vida(オトラ・フォルマ・デ・エンテンデール・ラ・ビダ/人生を理解するもう1つの形)」のプレミア試写会まで大々的に開催しているとは、凄い余裕じゃないですか。

いえ、さすがにこの席には、昨季はバルサで3位に終わったグリーズマンはいないようでしたけどね。今季は彼の前にもデ・パウル(ウディネーゼから移籍)やクーニャ(同ヘルタ・ベルリン)といった実力派が加入。世間から史上最強のチーム構成になったと称えられ、リーガ2連覇やCL初優勝を期待されているアトレティコですが、「Son los resultados los que te marcan ser mejor o peor/ソン・ロス・レスルタードース・ロス・ケ・テ・マルカン・セル・メホール・オ・ペオール(最高か、最低か決めるのは結果だから)」というコケの言う通り、慢心は禁物ですからね。選手たちも初心を忘れず、キャパの40%、1万6000人のファンがエスパニョールを応援するRCDEスタジアムでの試合で勝利してくれるといいのですが。

一方、同じ日曜の午後9時(日本時間翌午前4時)から、約1年半ぶり、2020年3月1日クラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)以来となるサンティアゴ・ベルナベウでホームゲームを行うお隣さんはというと。いやあ、今週も私が水曜に近くを通った際、ザッと外から見た時には、まだ工事現場感が半端なかったんですけどね。金曜にはとうとうピッチの芝貼りも完成し、スタンドの客席も整えられていて、およそ2万人のファンをセルタ戦に迎える準備は整ったよう。負傷者が相次いだ開幕からの3試合とは違い、今回は欠場が確定しているのはオリンピックで足首を痛めたセバージョス、恥骨炎のクロースだけで、モドリッチ、ナチョ、メンディ、マルセロはもうチーム練習に参加しているため、アンチェロッティ監督も南米組を酷使する必要はない?

ええ、来週水曜には彼らもCLインテル戦がありますしね。今のところ、リーガではマドリーセビージャバレンシアバルサアトレティコ、マジョルカが同じ勝ち点で首位グループを形成しているため、足並みを揃えておけば問題ありませんし、火曜に入団プレゼンがあったカマビンガ(リールから移籍)がデビューするのかも興味が沸きますしね。2023年1月までベルナベウの改修工事は続くものの、ようやくホームスタジアムに足を運ぶことができるようになったファンの前で、きっと選手たちもいいプレーを披露したいと思っているんじゃないでしょうか。

そして弟分のヘタフェは月曜のエルチェ戦で、今季2度目のコリセウム・アルフォンソ・ペレスでのホームゲームを迎えるんですが、実は9月になって、マドリッドのスタジアムはキャパの40%から、60%まで観客数を増やすことが可能に。おかげで前回のセビージャ戦では入りきらなかったabonado(アボナードー/年間チケット購入者)全員がスタンドに座れるようになったんですが、これが紛れもなく朗報なのは、ヘタフェがまだ白星どころか、勝ち点すら、獲れていないから。ええ、開幕戦のバレンシア戦は1-0、セビージャ戦も0-1で負け、カンプ・ノウでは健闘したものの、2-1でバルサに負けてしまいましたからね。今は消化試合数が少ないため、エルチェに勝てば、前節グラナダに大勝して一気に10位まで上がったラージョのように、ミチェル監督のチームも躍進が可能とはいえ…。

どうにもゲンが悪いのはお隣さんも開幕早々、ドツボにはまってしまったようで、金曜にスポルティング・ヒホン戦をプレーした2部の弟分、レガネスは2-1で敗戦。とうとう白星なしのまま5試合が経過と、引き分けで勝ち点は2あるとはいえ、今季こそ1部復帰を遂げたいチームにしては、あまりに不本意なスタートかと。うーん、2部は1部のようにラ・リーガの日程変更の配慮がなく、火曜にカタールで中国戦に出た柴崎岳選手はベンチに入ったものの、プレーはせず。オメロウ(ナイジェリア)、バルセナス(パナマ)などはお留守番と、戦力的にも辛かったんですけどね。これではホントに先行きが不安になりますが、次節、ブタルケ開催のアモレビエタ戦では風向きが変わってくれることを今は願うしかありません。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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