現在のにじさんじで活躍しているライバーは、以前から何かしらのクリエイター活動を続けてきた方が選ばれている傾向にあり、にじさんじは才能を表現する場所としての裾野が広がっている。

【動画】緑仙がえるに変身して「えるが2人」になってしまった回

 この状況を鑑みれば、「歌やゲームが好き」というだけでは入り込む隙間がないことや、それ以外のオリジナリティが重要だということに気が付く方もいるだろう。

 では、にじさんじ元1期生はどうだろうか。元1期生の8人はストリーマー/配信者を念頭に置いて選考されているわけではなく、一般向けに発表する無料配信アプリのテストユーザーだったことは広く知られている。

 最初期の配信を見れば、配信設定でミスをすれば協力してトラブルを解決しようとしたり、8人の配信時間を調整して途切れることがないよう配慮していた時期があったりなど、いまとは全く違い、不慣れながらもDIYなムードで視聴者に「にじさんじ」を届けようと四苦八苦する8人が見られる。

 いくつかの配信で語られているが、元1期生を選んだ基準は「声」だったと言われている。これは元1期生の数名が同意しているので、大きな要素だったことは間違いない。樋口楓月ノ美兎がシンガーとしてデビューしていることも踏まえれば、「声」がいかに重要なファクターであるかが分かるだろう。

 今回紹介するえるも、彼女らと同じ元1期生だ。エルフの国から東京に上京してきたエルフの女の子で、「える」は仮の名前。本名を書くと字数が多くなってしまうので割愛させていただくが、23の単語で綴られるその本名に負けないほど、彼女はいくつものキャラクターをモノマネできてしまう多彩な声色とセンスを持ち合わせている。しかもその突飛さや捉え方も、どこかにじさんじらしいマニアックなセンスがある。

 普段のテンションであれば人懐っこく優しい印象だが、一度話し出すと止まることを知らぬおしゃべり好き。雑談やゲーム配信中に火がついてしまうと、一人コントや上述したモノマネを流れるように始め、見ている者を楽しませてくれる。

 現在公式サイトにも書かれている「話し始めたら誰にも止められないどんぐりマシンガントーク」という紹介文にも負けることのない、彼女のオリジナリティだと言えよう。

 元々は温かくやわらかな声色なのだが、喜怒哀楽がトーンや口調にもハッキリ出やすいこともあり、イジリ役が多い元1期生との会話ではイジられやすい立場になりがちだが、笑い上戸で気さくな性格は後輩ライバーや外部のストリーマーに愛されており、コラボ配信の多さからもそれが伺える。

 おしゃべり好きで愛されキャラ、100件を超える雑談配信には驚くが、いま現在の彼女といえば「Apexプレイヤー」と思うファンも多いだろう。2019年7月19日にコラボ配信で初めてApexをプレイして以降、その後積み重ねてきたAPEXプレイ配信は400件を超えている。

 プレイ中にもおしゃべりが途切れることはなく、周りの状況を確認しつつナチュラルに一人コントを始めたり、急な接敵などで多少の暴言を吐くなど、彼女らしいトークのなかにFPSプレイヤー気質が宿ったことによって、スーパープレイで魅せるというだけではない、オリジナリティあるFPS配信が生まれている。

 仕事やプライベートの都合などで配信しない日もあるが、朝10時から「朝活」と題してAPEX配信を1年近く続けており、公式グッズとして「えるのFPS語録ボイス集」を発売したり、自身がもっとも愛するキャラクターであるローバ・アンドラーデの日本語版声優である御沓優子ともコラボ配信をするなど、その影響は非常に大きい。それまでは「どんな配信にしようか?」と悩むことが多かった日々を過ごしてきたなかで、彼女の活動を一変させた出会いだったといえるだろう。

 2020年1月からは緑仙、三枝明那らとともにRain Dropsとしての活動を開始。彼ら2人に比べれば歌動画などは少ないが、コンピレーションアルバム『IMAGINATION vol.1』やにじさんじ内ライバーが中心となった『にじさんじMusic MIX UP!!』『SMASH The PAINT!!』に参加しており、持ち前の声色を活かした歌唱を披露している。

 それだけでなく、6人それぞれの異なった声色と調和性に重きをおいたRain Dropsの音楽において、「声」の魅力を求められた彼女の存在は大きい。気さくで和やかな性格や配信中でも映える声色をもった彼女には、元1期生として活動を続けてきた芯の強さや理知的な表情がチラリと伺える。今後彼女がどのようなスタイル・内容の活動を見せてくれるのか、非常に楽しみだ。(リアルサウンドテック編集部)

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