声優・アーティストとして活躍中の竹達彩奈。最近、テレビの“大食い”企画のオファーが舞い込んできたそうだが、決して“大食い”ではないという。

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「最低1キロは食べないといけないと聞いて、すぐに『無理です!』と断りました(笑)。私、大食いのイメージがあるみたいなんですけど、そんなにいっぱい食べる自信はないんですよ。普通の女の子よりちょっと食べるかな?くらい。謙遜しているわけではなく(笑)、本当にそんなに量は食べないし、大食いキャラのイメージがついてしまって、ちょっと困ってますね」

■実家に帰ると必ず作ってもらう料理

彼女に大食いキャラというパブリックイメージが植え付けられたのは、吉野家の牛丼“アタマの大盛”とのコラボレーションCMが制作されたり、ライブで吉野家から贈られた巨大牛丼をステージ上でつまみ食いするというエピソードが大きいだろう。だが、大食いに加え、もともとはお肉も苦手だったという。

「小学生の頃はお肉もお魚も苦手で基本的に野菜ばかり食べていましたね。野菜は、キャベツ、ナス、ブロッコリー、なんでも好きで、ピーマンも平気だった。肉の入ってない野菜炒めが一番好きだったし、一番好きな料理は何?って聞かれたら、お母さんが作った里芋の煮っころがしって答えます。子供の頃にお母さんがよく作ってくれた思い出があって。実家に帰ると今でも作ってもらうんですけど、野菜だし、里芋がしょっぱいからご飯を一緒に食べられるんですよ。子供の頃は食べられないものが多かったので、すごく助かってましたね」

野菜しか食べられなかった彼女が肉を食べるようになったのは中学生になってから。軟式テニス部に入ったことがきっかけだったそう。

「朝練もあるし、放課後も夜の6時くらいまで練習してて。すごくお腹が空くようになったので、お肉も食べてみたらおいしい!って思うようになって。そこからは焼肉が好きになって、よくカルビを食べていましたね。今も焼肉やしゃぶしゃぶは好きだけど、煮たお肉はあまり得意じゃなくて…。ビーフシチューや角煮のように分厚くて脂身の多いお肉とか、カレーのお肉も苦手なので、自分でカレーを作るときは挽肉を入れてます。歳を重ねて、体が大きくなるにつれて、食べられるものがどんどん増えていって。骨が刺さるのが嫌だった魚も食べるようになったし、匂いが苦手だったチーズやトマトも食べられるようになった。好き嫌いは減った気がしますね。高校生の頃は友達とファミレスに行くことにハマり、サイゼリヤの当時299円で食べられるペペロンチーノに感動して、しょっちゅう行ってました」

■竹達にとって、ご褒美の食

今ではなんと昔は食べられなかったお肉を週4ペースで食べてるという。

「鶏肉、豚肉、牛肉。スーパーに行くと一通り売ってるから、週4で作れますよね。私は食べることが一番の幸せなんですけど、今はダイエットにも励んでいて。なるべく無理はしないと決めているので、食べてはいるんですね。ただ、食べる量を腹5分目くらいでやめたり、夜は炭水化物を食べないようにしたりしています。お肉を食べたほうが痩せるし、筋肉の元になるタンパク質も摂れるので、身近で当たり前の存在になってますね。だから、逆にラーメンのほうが神格化されちゃってますね。麺類は大体友達っていうくらい好き。食べたらいけない、食べたら太るという気持ちがあるから。今、何も気にせずに食べてもいいよって言われると、ラーメンになっちゃいますね。ご褒美と聞いてすぐに浮かぶのはラーメン。でも、ラーメンも無理せずに週に一回くらいは食べるようにしていて。ダイエットをしている時でも、よく噛んで、スープは飲み干さないというルールを決めて、お昼帯に食べています。今、一番食べたいのは、永福町の大勝軒のラーメン。あれ、食べたいよ〜(笑)」

遠距離恋愛中の恋人のことを語るような眼差しで遠くを見つめる彼女。“大食いキャラ”ではないが、食べることが大好きで、食への興味が強いのは確かなようだ。声優としての活動を始めてからは、外食の機会も増えていった。

「焼肉とか、しゃぶしゃぶとか、いろんなお店に連れて行ってもらうようになったんですよね。埼玉の田舎者だった私は、東京にはめちゃめちゃおいしいお店がいっぱいあるんだ!ってことにすごく感動してしまって。こんなにおいしいお肉を食べられるなんてすごいと思ってました。初めて“今半”に連れて行ってもらって、すき焼きを食べた時の感動もあったし、“叙々苑”では見たことのない霜降り肉が出てきたし、お店の真ん中にピアノやハープを弾くお姉さんがいて。なんだ、ここは? 竜宮城か?って思いました(笑)。そのくらい夢みたいなワクワク感があって。お肉との新たな出会いに感動してたし、『お肉、最高!』みたいなテンションでした」

霜降り明星・粗品が作詞・作曲を手掛けた新曲を収録

彼女が「一番お肉が好きだった」という時期に生まれたのが、2013年にリリースされた1stアルバム『apple symphony』に収録された「ライスとぅミートゅー」。ビーフポークへの愛を叫ぶライブの定番曲をはじめ、“食”を題材にした彼女の楽曲を集めたコンセプトアルバムがリリースされた。

「レコードメーカーさんから『竹達さん、食べ物の曲がいっぱいあるから、食べ物のアルバムを出しませんか?』って言われて。自覚はしてなかったですけど、改めて曲を並べてみたら、こんなにあったんだ!ってびっくりしましたね」

TVアニメ『デンキ街の本屋さん』のOPテーマで、筒美京平が作曲を手掛けた「齧りかけの林檎」やアニメ『だがしかし』の第1期EDテーマ「Hey!カロリーQueen」などの既発曲に加えて、新曲2曲が制作されている。ひとつは、音楽ゲームアプリ『DEEMO』の楽曲を手掛ける音楽制作集団・Mili葛西大和による提供曲で、彼女が「ちょっと寂しくて、あったかくなる。歌詞のポツンと感がキュンとくる」というバラードお月見団子は晩夏に冷えた」。もう1曲が、実家が焼肉屋『味希』というお笑い芸人・霜降り明星の粗品が手掛けたポップな失恋ソング「世界が一瞬だけ恋をするような時間」。粗品が自身のYouTubeチャンネルで“好きな声優”として竹達を挙げたことがきっかけで、彼女のFCイベントにゲストとして出演。ステージ上でのセッションに手応えを感じ、粗品が立ち上げた個人レーベルに彼女がシンガーとして呼ばれたこともあり、今回のコラボレーションが実現したという。

「普段は提供してくれた方に歌詞の意味を聞かないんですけど、ちょっと腑に落ちないところがあったので、レコーディングの前日に聞いたんですね。そしたら、『恋に恋するような年齢の若い女の子が、年上のちょっと悪い男に捕まったけど、クズ男だって気づいて。そいつから卒業する歌です』って言われて(笑)。びっくりしたけど、なるほどと思って。私は歌詞にあるように<本も映画も音楽も絵も/全部あなたの好きなものだけ>になるようなタイプではないので、そういう女の子を竹達彩奈としてどう表現するかが難しくて。ifの世界を想像しながら膨らませていったんですけど、私が歌ってきた史上一番難しかったですね」

■自ら考えた造語のアルバムタイトル

あなたの好きな食べ物を我慢して食べる女の子もいれば、冷えた団子を前に体育座りしている子もいる。肉とライスとマシュマロキャンディリンゴストロベリーが入った一枚に、彼女は『Méli-mélo meli mellow』というタイトルをつけた。

「とてもバラエティに富んだ内容なので、ひとつのショーを楽しんでもらうような感覚で聴いてもらえたらいいなと思いながら、自分で選曲を考えて。タイトルは、ごちゃ混ぜ感を出したいなと思ったので、フランス語で“ごちゃ混ぜ”という意味の“Méli-mélo”に、“甘美な”という意味もある“mellow”をつけたら、甘いごちゃ混ぜ感も出るし、ちょっと早口言葉みたいで可愛いかなと思ったんですね。自分で作った造語なんですけど、ごちゃ混ぜな楽しさもありつつ、タイトルを読んだ人が言いづらくて噛んだら面白いかなと思ってつけました(笑)。1stシングルのカップリング曲もあるので、初期から現在までーー10年分くらいの竹達を食というテーマを通じて楽しんでもらえたらうれしいですね」

(取材・文/永堀アツオ)

「食」をテーマとしたコンセプトアルバムをリリースする声優・竹達彩奈/(Photo by Satoshi Hata)