劇的勝利で悪い流れを断ち切った。巨人が15日の横浜DeNAベイスターズ戦(東京ドーム)で7―6と逆転サヨナラ勝ち。2点を追う9回裏に一死から代打・八百板卓丸外野手の適時打、坂本勇人内野手の同点適時打、最後に岡本和真内野手サヨナラ犠飛が飛び出すと一塁側ベンチの面々はグラウンド上で歓喜の輪を作った。

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球団から「続投要請」の可能性濃厚

 ここまで9月は半月の戦いを終え、3勝7敗3分。非常に苦しい星取りだが、16日現在でセ・リーグ3位に位置付け、首位の阪神タイガースを2.5ゲーム差で追っている。巨人のレギュラーシーズンは残り30試合になったとはいえ、2位の東京ヤクルトスワローズも交えた3つ巴の混セを制し、リーグ3連覇を達成する可能性はまだ十分に残されていると言い切っていい。

 そんなジャイアンツの命運を握っているのは、やはりタクトを振るう原辰徳監督であろう。采配について負けが込めば何だかんだと言われながらも3度目となる2019年シーズンの就任以来、チームをリーグ2連覇へと導いているところはさすがである。Gの指揮官として今季こそは逆転リーグV、あるいはリーグ3連覇を逃してもAクラス入りからCS(クライマックスシリーズ)を突破し、2年連続で辛酸を舐め続けている日本シリーズ制覇を成し遂げたいと考えているに違いない。

 そして、今季のチーム成績と大きく関係しそうなのが原監督の去就だ。原監督は3年契約の最終年。今季限りでの退任が濃厚視されており、後任には阿部慎之助二軍監督が最有力候補として目されている。その一方、一部からは大穴候補として桑田真澄投手チーフコーチ補佐や元木大介ヘッドコーチの名前も挙がっているが、現実的に見て可能性は低い。

 そうなると巨人がリーグ優勝を逃すか、あるいはCS敗退、もしくは日本シリーズへ進出しても9年ぶりの日本一奪回が失敗に終わった際に原監督は今季限りで退任し、阿部二軍監督へバトンを渡すことになるのか。現状で球団周辺の声や情報を拾い上げてみると、意外にも「今季がどういう結果になっても、原監督にはもう1~2年続投してほしい」という意見が根強いようだ。もちろん現時点では未確定だが、その手腕を高く評価している山口寿一オーナーを筆頭に球団幹部が原監督に今オフ「どういう結果になっても」続投要請を出す可能性は高い。

原監督に「頼りっぱなし」も問題

 今の原監督は「全権監督」として采配面だけでなく、チーム編成においても実権を握る立場にある。昨オフは桑田投手チーフコーチ補佐を緊急招へいし、今年8月下旬に北海道日本ハムファイターズ栗山英樹監督から電話連絡を受け、中田翔内野手無償トレード移籍を受け入れたやり取りも記憶に新しい。このように顔の広い球界人脈を駆使する“やり手”の側面も持つ背景から「ジャイアンツのあらゆる部門において影響力がとにかく強大。このタイミングで仮に原さんが抜けてしまったら(二次政権終了後の高橋)由伸監督の時のように歪みも多く生まれてしまうのではないか」との不安を抱く関係者も少なくないようである。

 ただ、いつまでも原監督に頼りっぱなしになるのは球団として問題だ。しかも原監督は2018年シーズン終了後に巨人からのオファーを快諾し、第三次政権を樹立した際に「指導者の育成」を1つのテーマとしていた経緯もある。そう考えれば球団側から契約延長を打診されたとしても原監督は“潮時”として断りを入れても何ら不思議ではない。

 それに原監督は既に複数のメディアでも報じられているように、ある重職の後任候補にも名前を挙げられている。野球日本代表侍ジャパンの新指揮官だ。東京五輪でチームを金メダル獲得へ導いた稲葉篤紀監督が任期満了で退任する見込みとなっており、その「次」の選考はNPB日本野球機構)の上層部や関係する有識者を中心に水面下で着々と進められているとみられている。当初は有力候補ともささやかれていた高橋由伸氏が複数のメディアによって観測気球気味に報道されたことでヘソを曲げてしまい、就任に難色を示しているとの情報もあり、他の複数候補も乱立する中において2009年の第2回WBCワールド・ベースボール・クラシック)で侍ジャパンを世界一連覇へと導いた実績を持つ原監督の侍ジャパン再登板を望む声は少なくないようだ。

 次の侍ジャパンが目指す国際大会は、早ければ2023年春に開催される第5回WBCとなる。3大会ぶりの世界一が至上命題となる1年半後のWBCで、第2回大会のような兼任ではなく巨人を円満に契約満了で退団した上での専任指揮官として原監督が侍ジャパンを率いてくれれば心強い――原支持派の侍ジャパン関係者はそのように考えているようだ。

阿部慎之助二軍監督には確実に成長してもらいたい

“渦中”の原監督、そして次期指揮官の有力候補・阿部二軍監督の両者をよく知る巨人のベテランOBも次のように述べている。

「来季からバトンが渡されるとの見方が強い阿部二軍監督には『時期尚早ではないか』『もう1~2年ファームか、あるいは一軍ヘッドコーチとして原監督の下でじっくりと帝王学を身につけさせるべきでは』とする主張も実は球団内やOBから出ている。つい先日、一部週刊誌で“厳し過ぎる指導”の実像が報じられたことでネット上を中心に波紋も呼び起こしていたが、そこでも露になっていたように何かと熱くなりやすい熱血漢ぶりが一軍では足かせになってしまう危険性もある。

 彼は誰から見ても間違いなく将来のジャイアンツを担う優秀な指導者であることはもう疑いようがない。先走って失敗して欲しくないという思いは、多くの関係者やOBの共通の思い。聞くところによれば阿部二軍監督本人もファームでダイヤモンドの原石を磨き上げ、光り輝く存在へと育成させることに“やりがい”を感じているそうだ。それならば、もう少し二軍監督で勉強する期間を経験として積んでもいいのかもしれない」

 果たして今オフに勃発するであろう原監督の去就問題はどのような決着となるのか。球界全体が固唾を飲みながら、その行方に注目している。

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読売ジャイアンツの原辰徳監督(写真:AP/アフロ)