将来建設されるであろう火星の基地は、宇宙飛行士の血と汗と涙から作られるかもしれない。これは例え話ではない。文字通りの意味だ。
英マンチェスター大学の研究グループが、月や火星の土壌を模した土に人間の血と汗と涙といった体液を混ぜることで、一般的なコンクリートよりも丈夫な宇宙コンクリートを開発することに成功したのだ。
かつて行われた試算によると、小さなレンガたった1つを火星へ持ち運ぶには、およそ2億2000万円もかかるのだという。
そのため火星基地を建設するにあたって、地球からすべての資材を持っていくことはできない。できるだけ現地調達することが現実的なやり方となる。
火星で資材として利用できそうなものとしては、岩石や土などが考えられるがそのままの状態では使えない。建築資材にするためには加工が必要だ。
そうだ!火星に乗り込む宇宙飛行士たちがいるじゃないか!そうして人間である彼らにスポットライトが当たったのだ。
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人間の血液を混ぜて作る宇宙コンクリート
『Materials Today Bio』(21年9月10日付)に掲載された研究では、人間の体液から作られた宇宙のコンクリート、「アストロクリート」が紹介されている。
これは月や火星の土に似せた模擬素材に、人間の血液に含まれるタンパク質(ヒト血清アルブミン)を混ぜることで作られた。
血液タンパク質が凝結するとできる「βシート」と呼ばれる構造には、素材をがっちりと保持する力がある。そこで研究グループは、これをコンクリートの結合材として利用したのだ。
そうして出来上がったアストロクリートの圧縮強度は25メガパスカルで、通常のコンクリート(20~32メガパスカル)にも匹敵する丈夫さだ。
汗と涙と尿でさらにコンクリートを強化
だがそれだけではない。尿、汗、涙といった体から流れる老廃物には「尿素」が含まれているが、これを混ぜることで、さらに300%も圧縮強度を強化することができる。
研究で作られたもっとも頑丈なアストロクリートは、40メガパスカル。地上にある普通のコンクリートよりもずっとしっかりしている。
6人の宇宙飛行士が2年いれば500キロ以上の宇宙コンクリートが作れる
研究グループの試算によると、仮に宇宙飛行士が6人いたとすれば、2年で500キロ以上のアストロクリートを製造できるだろうという。
土嚢に詰めたり、レンガとして利用したりすれば、宇宙飛行士が暮らすための住居を十分作ることができ、さらにミッションごとに2倍に拡大できるとのことだ。
実は動物の血液はモルタルの結合材として使われてきた歴史があるという。
「宇宙時代の難題が、中世の技術をヒントに解決されるかもしれないというのはワクワクする話です」と研究グループのアレド・ロバーツ博士は語っている。
References:Affordable housing in outer space: Scientists develop cosmic concrete from space dust and astronaut blood / written by hiroching / edited by parumo
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