9月9日北朝鮮の建国記念日だった。首都・平壌の金日成広場では、予備軍組織の労農赤衛軍や各地の工場、企業所の従業員らが参加した軍事パレードが行われ、多くの市民がその様子を見守った。ここで注目されたことの一つは、金正恩総書記や高級幹部のみならず、一般の参加者もマスクをしていなかったことだ。

公式に国内での新型コロナウイルス感染者の発生を認めていない北朝鮮とはいえ、あまりにも無謀ではないかとの声が上がっていたが、そんな懸念が的中してしまったようだ。

デイリーNKの内部情報筋によると、9・9節の閲兵式、舞踏会などの祝賀行事に参加した人全員が、行事翌日の10日から15日間の自家隔離に入った。当局は参加者に「隔離」と書かれた紙を配布し、自宅の玄関扉に貼り付けて家に閉じこもっておくように指示した。期間が終わるまで一切の外出が認められないが、食糧などの配給の有無について、情報筋は触れていない。

これら参加者は、リハーサルでは全員徹底してマスクを着用し、閲兵式開始直前まで1日5年の検温を受けるなど、徹底した管理の下に置かれていた。中でも、金正恩氏に花束を渡し腕組みをするなどした少年団員に対しては、行事の始まる5分前まで検温が繰り返され、手はもちろんのこと口の中まで消毒される徹底ぶりだった。また、体調を崩した者は参加対象から外され、別の人員に入れ替えられた。

各地の祝賀行事でも徹底したコロナ対策が取られたようだが、感染を疑わせる症状を見せる者が現れてしまった。

金日成広場ではなく、平壌郊外の楽浪(ランラン)区域で女盟(朝鮮社会主義女性連盟)が主催した舞踏会に参加した一部の人が、38度以上の高熱を出し、平壌から離れた平安南道(ピョンアンナムド)安州(アンジュ)の国家隔離施設に移送されたというのだ。

隔離施設は環境が劣悪なことで知られており、コロナではなく別の病気や栄養失調で亡くなる人が出るほどだ。

金日成主席の生誕記念日である太陽節(4月15日)の記念舞踏会や、昨年8月28日の青年節の舞踏会でも、クラスターと思しき大量の発熱者が発生する事態となっている。

国境を閉鎖し、貿易を停止するなど、コロナ感染拡大に異常とも言うほどの徹底した対策を取る一方で、感染を広げかねない「密」を政治の事情からわざわざ作り出してしまう、北朝鮮のちぐはぐなコロナ対策。

今のところ、金日成広場での行事の参加者の間でクラスター発生は報告されていないが、今後どうなるかは未知数だ。

北朝鮮の建国73周年を祝う「民間および安全武力閲兵式」(2021年9月9日付朝鮮中央通信)