SNSいじめゲーム依存、性被害……。子どもスマホ利用の実態はどうなっているのか。ジャーナリスト・石川結貴による『スマホ危機 親子の克服術』(文藝春秋)から一部抜粋して、子どもスマホ問題を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

◆◆◆

テレクラのアプリ版も

SNS」と聞いて、おとなが思い浮かべるのはツイッターフェイスブックインスタグラムなどだろう。ツイッターなら140字以内の短文を投稿、利用者同士は文字を打ち込んでメッセージを交換し、コミュニケーションする。

 一方、子どもたちの間では数年前から「トークアプリ」や「ボイスSNS」の人気が高い。ボイスSNSではその名のとおり「声」を使う。つまり会話をするのだ。

 中高生に人気のアプリ「斉藤さん」や「KoeTomo(こえとも)」は、利用者同士がランダムにつながり、匿名で会話できる仕組みだ。いわゆるマッチングアプリで、どこの誰につながるかはわからないが、自動的に誰かにつながる。90年代に流行したテレクラ(テレホンクラブ)のアプリ版、そう考えるとわかりやすい。

クラスの女子の半分くらいは使ってますよ」と話すのは、高校2年生の愛莉さん。2年前から週に一、二度利用するという。

「ヒマつぶしにちょっと誰かと話そうかって使い方もできるし、友達と一緒にいたずら半分でやることもあります。『キモイ人に当たった』とか、『いきなり下ネタ振られた』とか、話のネタにするとみんなにウケるんです」

 愛莉さんはツイッターインスタグラムも利用するが、「やっぱり声で会話できたほうが楽」だと笑う。

テキストメッセージ(文章の投稿)は微妙なニュアンスが伝わらない。LINEグループトークでも、ちょっとした言葉を誤解されてハブられる(仲間はずれにされる)ことがありますからね。その点、斉藤さんとかなら相手の声から年齢や雰囲気がわかりやすい。話がおもしろいとか、ノリがよさそうとか、少ししゃべるだけで伝わってくるじゃないですか。優しそうな人に当たると、『リアルで会ってもいいかな』って気持ちになるんです」

 実際には会ったことがないというが、その理由は「話した相手が遠くに住んでいたから」。逆に近くの人なら「今から会おう」と会話が弾み、ノリに任せて行動するというのだ。

投げ銭狙いで顔出しコスプレする子もいる

「斉藤さんにはビデオ通話やライブ配信の機能もあって、よくできてますよ」と言うのは、高校3年生の菜穂さんだ。声だけでなく、利用者同士が互いの顔を見ながら話したり、自分の話している様子をそのまま動画配信して多くの人に聞いてもらうことができる。ライブ配信は映像のオンとオフを選択できるため、実際にはラジオ番組のように声だけを流す利用者が多いという。

「私もたまにライブ配信をやるけど、顔出しはNGにしてます。ひとりでやると途中で話がつづかなくなっちゃうから、たいていは友達と一緒ですね。要は友達としゃべってることを、まんま他人に聞かせちゃうんですけど、わざとおバカっぽいトークをしてます。お笑いライブじゃないけど、聞いてる人にウケること言うとコメントが多くなるし、チップがもらえたりするんです」

 おもしろいラジオ番組にリスナーからの反響があるように、斉藤さんのライブ配信でもコメントが寄せられる。加えて「投げ銭」という機能があり、チップが与えられる仕組みだ。チップとはゲームコインのようなもので、利用者がアプリ内で課金し、自分が気に入ったり、仲良くなった相手にプレゼントできる。

「配信やって、投げ銭もらえたら、それをアマゾンのギフトカードとかに引き換えられるんです。投げ銭狙いの子は、顔出ししてアイドル気取りで歌ったりとか、コスプレでしゃべったりしてます。私はそこまでガチでやる気はないんで、もらえるチップは月に数百円くらいですね。でも、顔出ししなければ少しくらいバカやっても平気だし、TikTokより自由度が高くて好きなんです」

「絶対に怪しい人間じゃないんで、1分だけ切らないでもらえますか」

変な人に当たったら即切り(すぐに通話を切る)か、ブロックすればいい」、そう話す子どもたちはいたずら電話のような感覚でトークアプリボイスSNSを利用する。どこの誰ともわからないという匿名性に加え、相手はアプリによって無作為に当たっただけ。つまり自分で選んでいないわけだから、そのぶん「切る」ことへの心理的ハードルが低くなる。

 一見、危険な相手を防ぎやすいのだが、逆に「いい人」ならどうだろう。前出の愛莉さんが「優しそうな人に当たると、会ってもいいかなって気持ちになる」と話したように、たまたまつながった相手と意気投合する場合もあるはずだ。

 現在は社会人として働く尚斗さん(23歳)は、数年前まで斉藤さんやKoeTomoを利用して数十人の少女と連絡先を交換した。最年少は小学4年生の女の子、一番多かったのは中学生で、いずれも簡単に個人情報を聞き出せたり、少しおだてると「すぐに食いついてきた」と笑う。

女の子につながったら、まずさわやかに挨拶します。そのあと『絶対に怪しい人間じゃないんで、お願いだから1分だけ切らないでもらえますか』と低姿勢で頼むんです。1分って言われると、相手もまぁそれくらいならと思うじゃないですか。1分なんて軽く過ぎちゃうけど、時間だからって切る子はまずいなかったです」

中学生から「パンツいりませんか?」と…

 尚斗さんは「自分が振って、相手に返させる」ような会話で個人情報を聞き出したという。たとえば「僕は横浜に住んでます」と自分の話をしたあとで、「キミはどこらへん?」と尋ねて居住地を返答させる。「僕は大学生だけど、キミは何年生?」と振って学年を聞き出したら、学校での活動や友達関係などの話題につなげていく。相手の話に応じて、「がんばってるね」とほめたり、「僕もそうだったから、気持ちわかるな」と共感したりすると、たちまち警戒を解く女の子も多かった。

「距離が縮まったら、『楽しかったけど、これ切ったらもう話せない。寂しいな』とか言うんです。たまたまつながってることを逆利用するっていうか、実際なんにもしないで切っちゃったら同じ相手とはもう話せない。そういう仕組みって、お互いにいい感じになった場合には『連絡先、交換しなくちゃ』って焦りやすいと思うんですよ」

 すぐに切れる関係性は、反面では「切ったら終わり」だ。このまま終わるのは寂しい、そんな相手の気持ちを突いてまずは自分の電話番号を伝える。「お願いだから1時間以内にかけて。待ってるから、絶対だよ」と念押しすると、8割くらいの確率で女の子からの連絡があったという。

「そこからはショートメッセージとか、LINEでやりとりするとか、個人的につながる方法はいくらでもありますよ。僕はヘタなことして逮捕とかされたくないんで、小中学生とはリアルで会いませんでした。ただ、女の子たちは『誘ってください』とか、『前にも男の人と会った』とか平気で言ってくる。『パンツいりませんか?』って下着を売りつけようとする中学生の子もいました」

オンラインゲームの会話も音声へ

 かつて中高生の間で人気を集め、800万人もの利用者数を獲得した『ひま部』(2019年12月サービス終了)というSNSは「学生限定」。つまりおとなの参加が禁止されている子どもだけのSNSだが、ここでも「だれ通(誰でも通話ができる)」、「だれビ(誰でもビデオ通話ができる)」という機能があり、つながった相手と会話(ビデオ通話)ができた。

 国内で最大のSNSであるLINEにも、通話やビデオ通話機能が備わっている。こんなふうにSNSでのコミュニケーションは、すでに文字でのやりとりに限らない。互いの声を聞いたり、表情を見たりして、より関係性を深められるようになっている。

 コミュニケーションの広がりは、オンラインゲームも同様だ。仲間と一緒に闘ったり、ゲームを通じて友達を作ったりするソーシャルゲームでは、一部に「ボイスチャット」という機能が備わっている。

 もともとゲーム内では、「チャット」と呼ばれる文字でのやりとりが一般的だった。マンガの吹き出しやテレビ番組のテロップのように、利用者同士が文字を入力して会話する。とはいえ、ゲーム操作をしながらの文字入力では手間も時間もかかってしまう。そこでボイスチャット、つまり声で会話しながら遊ぶという形態が広がってきた。ちなみに子どもたちは略して「ボイチャ」と言う。

 株式会社ゲムトレの調査(2020年5月)では、小学生に人気のゲームは「フォートナイト」(22.1%)、「マインクラフト」(17%)、「あつまれどうぶつの森」(14.1%)などだ。1位の「フォートナイト」は利用者同士が生き残りをかけて闘うバトルロイヤルゲーム、同種の「荒野行動」や「コール オブ デューティ」は中高生の人気が高い。

ボイスチャットで飛び交う暴言

 フォートナイト荒野行動などのゲームボイスチャット機能を備えて仲間との意思疎通がしやすく、隣り合って遊んでいるような臨場感がある。一緒に叫んだり、笑い合ったりできることは、ボイスチャットならではのメリットだろうが、一方で深刻なトラブルが生じている。たとえば暴言や悪口、仲間はずれだ。

子ども部屋から毎日のように『死ね』、『殺す』、『消えろ』なんて言葉が聞こえてくるんです。何度注意しても『ふつうだから』と言って本人はケロッとしている。あんなに汚い言葉を使いながら遊ぶのはやめさせたいんですが……」

 小学6年生の息子を持つ母親(39歳)は、スマホパソコンフォートナイトに熱中する子どもの様子を懸念する。子どもは同じクラスの男子数人でチームを組み、LINEで「今日は○時スタート」とゲーム開始の連絡を取り合う。いったん遊びはじめると汚い言葉を連発し、興奮して大声を上げたりすることもあるという。

「お互い協力して楽しく遊ぶならともかく、子ども同士で『クソ』、『ダッサ(ダサイ)』とけなしあったりするみたいです。それで本当に友達なの? 学校で大丈夫? と心配なんですが、息子はこれくらいやらなきゃダメだと言う。なんでもおとなしタイプの子は、仲間から一方的に責められたり、バカにされたりすると」

 フォートナイトは生き残りを賭けて闘う、逆に言えば殺し合いをするゲームだ。だからといって必ずしも残虐というわけではなく、流血や体がバラバラになるような描写は使われていない。あくまでも遊びだと自覚し、ゲームマナーを守って利用するぶんにはいいのだろうが、小学生のような未熟な関係性ではむずかしい。

 おまけに会話となれば、相手の調子に合わせてつい感情的にもなるだろう。「なにやってんだ、バーカ」と言われたら、「おまえこそバカじゃん。失せろ」などと返してしまいがちだ。こうしたやりとりがエスカレートし、リアルの学校や家庭生活に影響が及ぶことも増えている。

 便利な機能は人と人とをつなぎやすくするが、だからといって人間関係がより豊かになるわけでもない。SNSにしろ、オンラインゲームにしろ、「声」を通じて不特定多数のおとなと関わるようになった子どもたちは、この先どんなリスクを抱えていくのだろうか。

小2息子の検索履歴に「おっぱい」「入浴シーンのある動画」が…早すぎる息子(8)の性的興味に父親がとった行動 へ続く

(石川 結貴/文春新書)

©iStock.com