<レビューで「星5」以外の評価攻撃はやめて下さい!>

そんな文言とともに、ウーバーイーツのアプリで「星5」以外の評価をつけた配達員の顔写真を店先に張り出し、情報提供を募っている飲食店があると、ネットで話題になっている。低評価をつけることは業務妨害だという風に読める。

店は「ウーバーイーツ 星4.9獲得!」ともうたっており、配達員をさらす問題だけでなく、「レビュー操作ではないか」との指摘も飛んでいる。

●名前、住所、電話番号に「懸賞金」

店舗は都内某駅の高架下ナントで、人目にも触れやすい場所にある。

拡散されている画像によると、張り紙はあたかも「指名手配書」のようで、配達員の登録名と顔写真とともに、次のような文言が記されていた。

<▲▲は、ウーバーイーツのレビューで当店を誹謗中傷し、当店に「星3の評価」と「バッド評価」をし、業務妨害をはかりました>

<右の者の完全な名前、住所、電話番号を知らせて頂いた最初の方に謝礼として▲万円(編注:話題のツイート画像では3万円と1万円が確認できる)をさしあげます>

●ウーバー配達員「怖い」「やりすぎ」

話題になった元ツイート9月14日に投稿されており、編集部員が現地を訪れた9月17日にはすでに剥がされていた。画像を見る限り、少なくとも9月7日までは貼ってあったようだ。

実際にウーバー配達員はどう思っているのだろうか。

近隣エリアで配達している20代の男子学生は、張り紙のことは知らなかったものの、話題のツイートを見せると間髪入れず、「怖いですね」「やりすぎでしょ」という反応が返ってきた。

この学生によると、ウーバーの配達員には店を評価する仕組みがあるという。グッドまたはバッドのボタンを押し、バッドの際には出現する複数の選択肢から「問題点」を1つ選ぶというものだ。自由記述はないという。

「料理を取りに行って、10分以上待たされる店も珍しくなくて、自分は迷わずバッド評価で『待たされた』を選びます。それで名前や顔をさらされたら怖いです。文句ならウーバー本部に言ってもらいたいです」

ちなみに配達員には客を評価する仕組みもある。「顧客の態度が失礼だった」「受け渡し場所に現れなかった」という評価もあるので、ウーバーユーザーはくれぐれも気をつけてほしい。

あるいは今回のケースはウーバー配達員がユーザーとして店を評価したという可能性もあるが、他のユーザーには星以外の寸評などは見えない仕様のようだ。

名誉毀損のリスク

店舗に「指名手配書」は万引き被害などでおこなわれることがある。しかし、実際にそれが真実だったとしても、張り紙によって社会的評価が低下するため、書き方や確度によっては名誉毀損になるリスクがある。

今回のようなアプリでの評価に至っては、主観的な部分が大きい。もちろん、店舗側からしたら身に覚えのない不当評価である可能性も否定はできないが、それでも虚偽の証明は困難だ。

名誉毀損に詳しい藤吉修崇弁護士に画像を見てもらったところ、「知っている人が見れば誰かがわかるので名誉権の侵害は認められるでしょう。刑法の脅迫罪になる恐れもあります」との回答があった。

ただし、可能性ということでは、これらの配達員が存在せず、話題作りの一環ということも考えられる。

手配書に書いてあった「責任者」の番号にかけたところ、出たのは都内のタクシー会社だった。「担当者は不在」とのことで詳細について聞くことはできなかったが、張り紙は「剥がした」という。

●美味しい店でも一線を超える不幸

問題の飲食店で実際にランチ食べてみた。プリプリのエビが大量に入ったトムヤムクンラーメンは、辛さも控えめで優しい味わい。何よりセットでついてきたガパオライスが絶品だった。

隣のテーブルの女性が注文していたパッタイも食べ応えがありそうだったし、わざわざ「星5以外はやめて」と言わなくても、十分評価されるだけのポテンシャルがあると思われる。

「手配書」があったとみられる位置には現在、次のような張り紙がある。

<Cウイルスの最中、世界中の料理店は、皆、一生懸命やっています。どうか、料理店を暖かく包み、心ある力で支えていただいて、世界の、日本の、地域の景気を盛り上げていきましょう!>

コロナ禍で好立地の飲食店が苦しいのは理解できる。しかし、だからと言って、配達員を「お尋ね者」扱いしてしまうようでは、店の印象はかえって悪くなってしまう。

人の感覚はそれぞれ違う以上、店舗側としては虚偽の事実はともかく、一定の不評は甘受せざるを得ない。どんな名店でも「星5」はありえない。ただ、店舗側がそれすら許容できないのは、利用する側が他人のつけた星評価しか信用できなくなっているからでもある。便利なはずのネット社会の悲しく、不便な側面とも言えそうだ。

「業務妨害だ」 ウーバー配達員の顔写真さらしあげた飲食店「星5以外の評価攻撃やめて!」