ドラマホリック!『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京 水曜深夜0時)の第10話が放送された。「こんな苦しいドラマ初めてだ…」「もうダメじゃん、絶対ダメじゃん」「佐野の執念と演技凄い…」「とにかくガリガリ具合がすごい」「ついつい佐野!はよ逃げて!!って思っちゃったわ(笑)」など今回もすさまじい展開にSNSでも大きな反響が寄せられた。


最悪という言葉が螺旋のごとく、ぐるぐると渦を巻いて正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)に降りかかる。あまりの展開に目をそむけたくなるが、出演者たちの「目」がチャンネルを変えることを許さない10話となった。(※以下、第10話ネタバレあり)



突然、家にやってきた刑事の池崎(甲本雅裕)と萌(萩原みのり)の弟・創甫(北川拓実)。玄関の前で2人を出迎えた正隆は妙に落ち着いている。今まで修羅場をくぐり抜けたことで、度胸がついたともいわんばかりの表情。家の中へ入らせてくれという池崎に軽い笑みまで浮かべた正隆は、2人が家に入った瞬間、とても悪い目をしている。これ、今までになかった表情だ。家の中で事情を聞く池崎は、疑いのある目を2人に向ける。


ひねくれた刑事そのものの芝居をする甲本雅裕は、さすがベテラン俳優。そんな池崎に対し、堂々と嘘をつく正隆。たまに目を泳がせることがあっても、以前ほどおびえるようなことはない。そして嘘をつくことにまったく迷いのない目を向けるのが雪映である。


本心を決して出さない3人の違った思惑を、目だけで見せる演出と芝居は筆舌に尽くしがたい。だからこそ、粗暴が悪くとも姉の身を思う創甫の純粋な思いが映えるのであろう。


創甫の姉を思う気持ちはそれだけでおさまらない。萌と住んでいたアパートに帰ってきた創甫は池崎の言葉を思い出す。「2人とも殺されている可能性です」。姉ちゃんは殺されているかもしれない、殺したのは誰だ、やっぱり柿野の野郎なのか…と、何も言わずとも創甫の目が物語っている。そのとき鳴った吊るし飾りの涼し気な音。一瞬、萌を思い出し、優しい目をする創甫だが、萌のプレゼントしてくれたスーツではなく、いつものジャケットを身に羽織る。そしてフードを被ったときの目は殺気を帯びていた。この創甫を演じる北川拓実もジャニーズなのだが、とてもそうとは思えないヤバさを芝居で醸し出している。


一方、警察を追い返したことで安心したのか、正隆と雪映はわずかな時間の幸せをかみしめた。「私そろそろ行くね、検診」「俺が送ってくよ」。洗い物もして雪映を気づかいながら「そろそろ運転もひかえてさ。それに、俺の子どもが見たい」とマジメで少し穏やかな目を見せる正隆。本当に未来を見据えての言葉なのか。それとも、ただの空想なのか測りかねる表情。とても家に佐野(深水元基)を監禁しているとは思えない。この陰と陽のギャップが今後の恐怖を倍増させているのは間違いない。


逃げ出そうとした佐野に電子レンジを振り下ろし、「見つかったら私たち終わりよ」と正隆に詰め寄る雪映。悩んでいるような表情から、雪映は一瞬にして何を考えているか分からない表情へ。何が変わったというわけではない。少し顔をあげただけだが、その目はまるで心を持ってない人形のような目となり「衰弱死させる」とぽつり。そんな雪映に正隆の表情がぴくぴくと痙攣する。もう、とても芝居とは思えない。苦しい、苦し過ぎる!


まもなくぐったりとして縛られた佐野を前に何も言わず、涙ぐむ正隆。佐野は本当にひどいヤツである。正隆も身をもって、そのことは知っている。だが、雪映は言った。「水も食べ物も与えない、それだけでいい」。これから死にゆく者への同情の涙なのだろうか。それとも自分が殺さなければならない哀しみだろうか。正隆は何も言わず、電子レンジを片付ける。もうお前に与える食い物はない…これからお前を殺すという意思表明でもあったのかもしれない。


それにしても外へ逃げ出したときの佐野の姿はすさまじかった。ランニングシャツにオムツ、そしてこの撮影のために15kgも減量したという細い手足。最初に逃走しようとしたときは、いつものいやらしい目が息を吹き返していた。だが、1度目は逃走失敗。2度目の逃走で外をヨタヨタと歩く佐野が「やった、やった、やったぞ。あの悪魔からようやく逃げたぞ」と言ったときの佐野の目には必死さがうかがえた。結局、正隆に取り押さえられ、雪映には足に包丁を刺され、再びおびえた目を見せ家へ連れ戻された。そして3度目の逃走。このとき見ている人の気持ちは「佐野、逃げて~」なのか「正隆、捕まえて~」なのか分からない。だが、死を目の前に実感した佐野の目は、まるで猛獣のようだった。「ぐぁ~~」と叫び、正隆をはねのけ、窓から飛び降り、弱ったはずの手足を必死に動かす佐野は、人間とは思えない動きをした。


だが、「バァ~カ、バァ~カ、バァ~カ」と笑顔を浮かべ、狂気に染まった佐野が次週、どのように動くのか。深水元基の次週の芝居が楽しみでもあり、怖くもある。


文:今 泉


第11話あらすじ(9/22放送)

正隆(北山宏光)と雪映(中村ゆり)の元から監禁していた佐野(深水元基)が逃げ出した。自分たちの身に警察の捜査が及ぶと考えた2人は逃避行生活を送っていた。


その頃、佐野はヤクザの仁科(杉本哲太)から再び拷問を受け、正隆たちが萌(萩原みのり)の遺体を掘り返している様子を撮影したSDカードを渡す。正隆と雪映、そして2人の間に生まれてくる子供の運命はどうなるのか…!?


■ドラマホリック!「ただ離婚してないだけ」
毎週水曜 深夜0時放送
放送局:テレビ東京ほか
配信:動画配信サービスParavi』『ひかりTV』にて配信予定

©「ただ離婚してないだけ」製作委員会

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