20歳の時に事故で手足を3本失った山田千紘さん(29)は、YouTubeSNSなどで障害に関する情報を発信している。先日、小学生の息子を持つインスタグラムのフォロワーから、山田さんの著書「線路は続くよどこまでも」(廣済堂出版)を読んで書いた読書感想文が送られてきたという。

自身の半生をつづった同著は2021年7月に刊行。心の支えとなった人との出会いや、事故前後で悩み、苦しみ、前を向くありのままの姿をつづった。そんな同著を読んで書かれた読書感想文は、山田さんに特別な思いを抱かせたという。情報発信を通じて、山田さんが「子どもたちに伝えたいこと」とは何なのか。本人が語った。

【連載】山田千紘の「プラスを数える」~手足3本失った僕が気づいたこと~ (この連載では、身体障害の当事者である山田千紘さんが社会や日常の中で気づいたことなどを、自身の視点から述べています。)

自分の発信が確実に子どもたちにも届いている

インスタグラムのフォロワーさんに、小学校6年生の息子さんがいるお母さんがいて、読書感想文を書くのに僕の本を選んでくれました。お母さんが勧めて、息子さんも読んで良い本だと感じてくれたそうです。その読書感想文を送ってくれて、読ませてもらいました。

本当に嬉しくなりました。「ぼくもこんなポジティブな考えで、自分のたてた目標を達成していきたい」といったように、本を読んで前向きなことを受け取ってくれて、それを自分の言葉で書いていたからです。「僕がしたいことってこういうことなんだ」と涙が出ました。

多様性について考えてみてほしいし、自分がどれだけ恵まれているかという周囲への感謝の気持ちも持てるようになってくれたら嬉しい。そんな思いを込めて書いた本でした。それが伝わったのだなと思いました。

その子のお母さんに「ありがとうございます」と返信したら、「息子が飛び跳ねるように喜んでいる」と教えてくれました。「明日校長先生に自慢する」と言っていたというので、それなら僕も何かしたいと思って、感謝を伝える1分間のビデオメッセージを撮って送らせてもらいました。せっかく書いて読ませてくれた感想文。「自分がされて嬉しいことをしよう」と思いました。

僕はSNSなどで日々発信していますが、子どもから直接感想を聞くことはなかなかありません。今回の読書感想文は、自分の発信が確実に子どもたちにも届いていて、やってきたことに間違いはないんだと実感させてくれる出来事でした。

手足がない子どもたちとの出会い

手足がない子どもたちとの出会いもこれまでにありました。新型コロナウイルス禍より前の2019年東京都内に住んでいるフォロワーさんで、左手がない「まさとくん」という小さいお子さんがいるお母さんの方がいました。ぜひ会いたいと連絡をもらっていて、たまたま空いている日があったので返信したら、飛んできてくれました。1時間くらい談笑したり、手と手を合わせたり、何気ない時間を過ごしました。タクシーでお別れした後、まさとくんが「兄ちゃんかっこよかった」と言っていたとお母さんから聞いて、嬉しい気持ちになりました。

北海道に住んでいる別のフォロワーさんで、左手がない子どもの義手を東京大学医学部附属病院に作りに来たお母さんもいました。出会ったのは2018年ベビーカーに乗っている「そうちゃん」という小さい子でした。その1年後くらいに、僕が旅行で北海道に行った時、一緒にご飯を食べたり、ご自宅に伺って遊んだりしました。

その子どもたちが大きくなっていった時、僕に会ったことがあるのを自慢できるような存在になっていたいし、何年後かに僕の姿を見て「こういう活躍ができるんだ」「堂々としていていいんだ」と、良い意味で比べる対象にしてもらいたいです。僕を見て、新しいことに自信を持ってチャレンジできる気持ちになってほしい。

Win-Winの関係を築いていきたい

今回の書籍も含めて、僕は障害の当事者として情報発信していますが、障害がある人たちだけに向けて発信しているわけではありません。老若男女問わず届けたいし、受け取った人が何かを感じ取ってくれたら嬉しい。特に子どもたちには、障害者はじめいろんな人の気持ちが分かる感性を持ってもらいたい思いがあります。

僕が子どもの頃、そうした感性はありませんでした。それは、身近に障害の当事者がいなかったからかもしれないと思いました。僕自身が当事者になってから情報発信をしていくにあたり、障害の有無を問わず誰にでも伝わる内容にしたいと思って活動してきました。

未来を作る子どもたちの、感性の「引き出し」が増えるように、これからもいろんな視点を提供したいです。世の中にたくさんいる、障害のある人たちが少しでも住みやすくなるように、健常者との「壁」が少しでもなくなるようにしたいですね。

僕の発信が、受け取った方々の考えるきっかけになり、僕はその声を次へのモチベーションにする。発信を通じて出会った多くの人とは、そんなWin-Winの関係を築いていきたいと思い描いています。

山田千紘さん