1999年の放送開始から20年以上の歴史を重ねてきた大ヒットドラマが、『科捜研の女-劇場版-』となって、現在公開中だ。 これを記念して、シリーズ1作目から京都府警科学捜査研究所(通称・科捜研)の法医担当の科学者、榊マリコを演じている沢口靖子の10のトリビアを紹介。これを知ると“科捜研”のマリコの見え方も変わってくるかも。あなたは、いくつ知っていますか?

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■1:多くの女優を生んだ「東宝シンデレラ」で第1回グランプリを獲得

沢口は、1984年にスタートした「東宝シンデレラ」オーディションの記念すべき第1回グランプリを受賞して女優デビュー。「東宝シンデレラ」はその後不定期に開催され、これまでに長澤まさみ(2000年、第5回グランプリ)、上白石萌歌(2011年、第7回グランプリ)、上白石萌音(同年、審査員特別賞)、山崎紘奈(同年、審査員特別賞)、浜辺美波(同、ニュージェネレーション賞)などの人気女優を輩出しているが、「東宝シンデレラ」の清純派女優のブランド・イメージは、第1回の沢口が作り上げたと言ってもいいだろう。ちなみに第1回のファイナリストには斉藤由貴がいるが、アイドル歌手としても活躍した彼女と違い、沢口は女優の道をまっしぐら。1984年の映画デビュー作『刑事物語3 潮騒の詩』で主題歌を歌い、その後も3枚のシングルと2枚のアルバムをリリースはしているものの、1989年以降は女優に専念している。

■2:ドラマデビューは伝説の番組「太陽にほえろ!」だった

沢口靖子のドラマデビューは、意外なことに、当時の人気刑事ドラマ「太陽にほえろ!」だ。1984年11月9日オンエアの「マイコン刑事登場!」の回に、新人のマイコン刑事を演じた石原良純とともに七曲署交通課の警察官、美津子役で登場。彼女は配属初日のマイコン刑事と署の玄関でぶつかりそうになったのをきっかけに知り合うが、2人の関係が恋に発展することはなく、沢口の出演もこの1回きりで終わった。

■3:書道の先生が夢だった

才色兼備の沢口は、美しい字を書くことでも知られている。小学生のときに書道を習い、高校の芸術選択科目も教師の薦めで書道を選択。文字を活かせる書道の先生や社長秘書のような仕事に憧れていた時期もあったという彼女は“MY筆ペン”を持っていて、ファンから求められるサインもその筆ペンで書いているのだとか。ちなみに、イケメン書道家が殺害される「科捜研の女」シーズン15第4話(2017年10月6日放送)では、事件解決の糸口を見つけるため、沢口演じるマリコが科捜研の共有スペースで習字を行うシーンが。撮影では沢口本人が何十年かぶりという筆を持ってこのシーンに挑み、ブランクを感じさせない美しい文字を披露した。

■4:学生時代の“美少女伝説“…高校時代にファンクラブがあった

女優デビュー前から地元の大阪では有名人で、数々の“美少女伝説”が伝えられている沢口。中学卒業と同時に、大阪府堺市にある高校に入学したが、入学直後から「ものすごい美少女がいる」と学内で話題になっただけではなく、下校時にはそんな彼女をひと目見ようと他校の男子生徒が校門に殺到するという異常な事態に。そんななか、沢口の中学時代の同級生の弟が私設のファンクラブを作り、まだ芸能人でもなかった彼女の撮影会が行われたというからビックリ! しかも、在籍校だけではなく、最寄りの高校にもファンクラブが設立される人気ぶり。登下校時の電車では沢口が乗っている車両だけが混雑し、彼女が図書館で勉強しているとあっという間に大勢のギャラリーが詰めかけたという。さらに、沢口の美しさは教師の間でも有名で、彼女に惚れた先生が授業中にしどろもどろになったという伝説も残っているとか。

■5:最高視聴率55.3%の連続テレビ小説「澪つくし」で朝の顔に

沢口が女優としてブレイクするきっかけになったのは、1985年に放送され、最高視聴率55.3%を記録した連続テレビ小説「澪つくし」だったのは間違いないだろう。大正末期から終戦直後の昭和に至る千葉県銚子市を舞台にした本作で、沢口は網本の長男である惣吉(川野太郎)と数々の障害を乗り越えながら愛を育んでいく醤油屋の妾の娘、かをるを熱演。まだ新人だった沢口にこの役を演じて欲しいと熱望したのは、『刑事物語3 潮騒の詩』をたまたま観て、彼女の儚げなのに力強い眼に魅せられた脚本のジェームズ三木だったようだが、それが大当たり!まだまだ拙かった沢口の芝居が、互いを見つめ合ったり、初めてのキスをする純愛カップルのぎこちなさとマッチして、視聴者のヤキモキ感やハラハラ感を増幅。しかも、桜田淳子が演じた醤油屋の正妻の娘、律子が義妹のかをるとは真逆のクールなキャラだったことも功を奏した。沢口の透明感のある美しさと健気さがより際立ち、観る者を虜にしたのだ。

■6:「ゴジラ」映画のカギを握るヒロインだった!

科捜研の女」から沢口のファンになった人は知らないかもしれないが、彼女は過去「ゴジラ」映画のヒロインも務めている。まず『ゴジラ』(84)に女子大生の奥村尚子役で出演した沢口の、かなり異色のキャラを観ることができるのが、ハリウッド版の最新作『ゴジラvsコング(21)マイケル・ドハティ監督もお気に入りの1本に挙げていた大森一樹監督の『ゴジラvsビオランテ』(89)だ。一般公募のオリジナル・ストーリーがベースの本作で沢口が演じたのは、一度は死んでしまうものの、遺伝子工学の権威である白神博士の手で蘇る博士の一人娘の英理加。だが、英理加の遺伝子とバラ、ゴジラのG細胞をかけ合わす形で復活した彼女は、なんと巨大な怪獣ビオランテになってしまうのだ。クライマックスでは“花獣形態”と呼ばれる姿でゴジラと激闘を繰り広げ、最後には沢口の顔がスクリーンいっぱいになるので、初めて観た人はのけ反るかも。とはいえ、科学の暴走の産物とも言えるこのビオランテ役には、その約20年後、科捜研の科学者を演じることになる沢口との不思議な因果関係を感じずにはいられない。

■7:月から来た“かぐや姫”を演じている

沢口はなんと“かぐや姫”にもなっている。それが『黒い十人の女』(61)、『犬神家の一族』(76)、『細雪』(83)などで知られる名匠・市川崑が、誰もが知る古典的名作をVFXを駆使して実写化したSFファンタジー大作『竹取物語』(87)だ。沢口の演じたヒロインの加耶(の生まれ変わり)には宇宙人だったという明確な設定が与えられたが、ストーリー展開は古典にほぼ忠実。色鮮やかな十二単の衣裳をまとった沢口の美しさが、市川監督の映像美によってさらなる輝きを放っていた。両親(育ての親)役の三船敏郎、若尾文子、さらに中井貴一石坂浩二とのやりとりも必見!『科捜研の女- 劇場版-』に特別出演している伊東四郎とも共演しているので、“科捜研”ファンはチェックしておきたい。

■8:“リッツパーティー”を28年間続けた

ドラマや映画とはまた違う、CMで見せる沢口の存在感や魅力にも触れないわけにはいかないだろう。なかでも特に印象的なのは、旧・ヤマザキナビスコが発売していたクラッカーリッツ」のCM。1988年から出演し、沢口が友だちとリッツを楽しむCM内の“リッツパーティー”は、彼女のプライベートを覗いているような親近感も評判を呼び、28年間も続くほどの人気に。だが、2016年9月にヤマザキナビスコヤマザキビスケットに社名変更したのを機に、惜しまれつつ終了。2016年8月19日AbemaTVのニュース番組「Abema Prime」で開催した“最後のリッツパーティー”で幕を閉じたが、沢口が同年12月に後継のクラッカールヴァン」のCMで“ルヴァンパーティー”を実施。長年のファンを安心させた。そんな沢口の、CMのもう一つの代表作が「タンスにゴン」だ。クセの強いキンチョーのこのCMでは、女子高生マリリン・モンローに似たキャラから押しの強い主婦、国会答弁をする議員までを沢口が関西弁で快演!そのコミカルな演技は、「科捜研の女」で演じているマリコのちょっぴり天然なキャラに繋がっているのかもしれない。

■9:ジブリ映画千と千尋の神隠し』では、千尋のお母さん役に

沢口の女優としてのフィールドは実写の枠に留まらない。アニメ界の巨匠・宮崎駿も独自の魅力や存在感を放つ彼女のことを放っておくわけがなく、2001年の『千と千尋の神隠し』で千尋のお母さんのボイスキャストに起用。沢口は物を食べるシーンのアフレコに実際にチキンを食べながら臨んだというが、それがあの、千尋の両親が豚になってしまう驚愕のシーン。ちなみに父親役の声を担当したのは、「科捜研の女」でマリコのパートナーの京都府警の刑事・土門薫を演じている内藤剛志。その事実を知った“科捜研”ファンが当時ザワザワしたのは言うまでもない。

■10:榊マリコは最大のアタリ

こうして振り返っただけでも多くの主演作や代表作を持つ沢口の輝かしいキャリアがよく分かるが、最大の当たり役は、間違いなく、彼女が30代で出会ったドラマ「科捜研の女」シリーズの榊マリコだだろう。1999年にスタートした本作は、20年以上にわたる歴史のなかで累計254話に到達。ほんのわずかな糸口から真実に辿り着き、真犯人を暴くマリコの科学捜査オタクぶり、真実解明のためにはなりふり構わず“暴走”する彼女のキャラ、土門刑事やほかの科捜研のメンバーとのコミカルなやりとりも視聴者の人気を呼んで大ヒット!2015年には第23回橋田賞に輝き、作品のクオリティの高さも実証されている。

そんな本作の集大成となる今回の劇場版では、マリコと土門、科捜研のメンバーが佐々木蔵之介の演じる微生物が専門の最強の科学者・加賀野亘と対決することに。これぞ、科学者VS科学者が激突する劇場版に相応しいスケールの大きなバトル。はたして、マリコは加賀野の秘密を暴くことができるのか? その鍵を握るシーンでは、沢口がワイヤーアクションに果敢にチャレンジ! 彼女の新たなる進化を大きなスクリーンで目撃して欲しい。

文/イソガイマサト

20年以上にわたりマリコ役を演じる沢口靖子に、10のトリビアで迫る!/[c]2021「科捜研の女 -劇場版-」製作委員会