列車の優先席がかつて「シルバーシート」と呼ばれていたのを覚えているでしょうか。初めて設置されたのは1973年の「敬老の日」、国鉄中央線伊豆箱根鉄道でした。今は聞かないこの名称、何が由来なのでしょうか。

高齢者のための席というイメージがあったが…

今や列車に乗ると当たり前のように見かける優先席。中には全ての座席を優先席にする鉄道事業者もあるほどです。ただ、2000年頃までは「シルバーシート」と案内されることが多くありましたが、なぜこのような名称になり、また呼び名が変わっていったのでしょうか。

優先席が日本の鉄道で初めて導入されたのは1973(昭和48)年9月15日。当時の「敬老の日」でした。2021年現在は9月の第3月曜日を「敬老の日」としています。国鉄中央線伊豆箱根鉄道駿豆線大雄山線に「シルバーシート」として設置され、高齢者の着席を優先する座席とされました。

シルバーシートの由来は、その座席の色が灰色だったため。当時、青色などだったほかの座席と区別できました。付近の窓などには白色と紺色でデザインされた識別ステッカーも掲出されました。

シルバーシートは国鉄の他路線に加え、関東・関西の大手私鉄でも広まっていきます。各社は「優先座席」など、必ずしもシルバーシートの呼称を用いたわけではありませんが、ステッカーは国鉄と同じものを掲出。人々にその存在が浸透していく中で、「高齢者に譲るべき席=シルバーシート」が定着していきます。

時代が下るにつれ、各社はシルバーシートの数を増やすなど利便性を向上させます。特に1990年代は、シルバーシートには体に障害を持つ人や妊婦、ケガをした人などが優先的に座れるようにという機運が高まり、各社は名称を順次「優先席」に改めていきます。それまで高齢者のための席というイメージが強かったシルバーシートは、より幅広い対象に向け、その席を必要とする人のための優先席となったのです。

あなたは「優先席」に座りますか?

日常的に列車を利用する中で優先席に座るかどうか、過去に「乗りものニュース」ではアンケートを実施しています。「あなたは、列車の優先席に座りますか?」という質問に対し、有効回答数797のうち「車内がガラガラなら座る」が35.1%、「座らない」が26.2%、「特に迷うことなく座る」が20.3%、「体調が悪いときや疲れているときなどは座る」が18.3%という結果でした。

最多だった「車内がガラガラなら座る」を選んだ理由には、「優先席であり専用席ではないから」「もし必要な方がいらっしゃったら、積極的にお譲りするつもりで座る」といった意見が寄せられました。

一方「座らない」を選んだ理由は、「トラブルの温床だから」「優先席を使う立場ではないから」「譲らなければならない義務的な状況が苦手」「プライドが許さない」など。ひとりひとりの考えがあることが伺えます。

「特に迷うことなく座る」を選んだ理由には、「車内がガラガラなら座る」で寄せられた意見に類似するものに加え、「自身が障害者だから」「ヘルプマーク所持者なので」「座らずに立ち続けていると逆に迷惑なので」「体が大きいので立っていると邪魔になるから」といった意見がありました。

ちなみに札幌市営地下鉄の車両には「専用席」があります。アンケートで優先席に「座らない」と答えた人の中には「札幌出身なので座らない癖がついている」という回答もありました。札幌市営地下鉄では1974(昭和49)年4月に「優先席」を設置したところ、若い健常者が座席を占領することが多く、本来の優先利用の対象である高齢者や体に障害を持つ人などが座れない事象が多発したため、1975(昭和50)年4月、「専用席」に変更したそうです。

かつて優先席は、国鉄・JRを含むさまざまな鉄道事業者で「シルバーシート」と呼ばれていた。写真はイメージ(画像:写真AC)。