カラパイアの元の記事はこちらからご覧ください

 アメリカのルイジアナ州立刑務所で15年間、死刑囚監房で過ごした無実の男性が、新型コロナウイルスに感染し、2021年8月末に他界した。47歳だった。冤罪が晴れて自由の身となってから9年後の出来事で、人生の貴重な3分の1を刑務所で過ごしたこととなる。

 当時、冤罪疑惑のある男性を支援し、DNA鑑定によって冤罪を証明した組織「イノセンス・プロジェクト」は、その悲しみをSNSで報告した。

【画像】 冤罪により刑務所に15年間投獄されていた男性がコロナで死亡

 無実の罪で、ルイジアナ州の刑務所死刑囚監房に15年閉じ込められていたデイモン・ティボドーさん(47歳)が、今年8月31日にコロナ感染で他界した。

 彼は23歳から38歳までの間、無実の罪で投獄されており、2012年、冤罪が晴れ、これから人生を謳歌する矢先の出来事だった。

 2012年に釈放となったティボドーさんを支援し、DNA鑑定で無実を証明した「イノセンス・プロジェクト」は、9月9日にTwitterアカウントで彼の死を追悼した。

およそ16年もの間、冤罪で投獄されたデイモン・ティボトーさんは、信じられないほどやさしく、穏やかな人物でした。

彼は、DNA鑑定によって死刑囚監房から解放された300人目となりますが、彼が失った自由は決して補償されることはありませんでした。

ここに彼の死を追悼いたします。

厳しい尋問による虚偽の自白で物的証拠のないまま逮捕

 ルイジアナ州ニューオーリンズ出身のティボトーさんは、はしけの甲板員として働いていた1996年、当時22歳の時に、いとこのクリスタル・シャンパンさんを性的暴行して絞殺した容疑者として逮捕された。

 これは後に報じられたことだが、拘束されたティボトーさんは警察による9時間以上にも及ぶ尋問を受けたという。

 何度事件への関与を否定しても認められず、ポリグラフも失敗に終わったものの、最終的にティボトーさんは虚偽の自白を強いられる限界の状況に追い詰められた。

 犯罪現場や殺人の重要な事実と一致せず、また彼を犯罪に結びつける物理的な証拠がなかったにもかかわらず、誤った目撃証言と虚偽の自白に基づいてティボトーさんは起訴され、有罪判決を受けた後、死刑を宣告された。

 しかし、2007年にジェファーソン教区弁護士事務所が「イノセンス・プロジェクト」で事件の再調査を開始。その結果、現場のDNAはティボトーさんのものではない男のDNAと一致していることが判明したのだ。

 こうして、人生の3分の1を刑務所で過ごしたティボトーさんは、2012年に晴れて無実が証明され、免罪となった。

人生を再開させたティボトーさん、コロナで死亡

 DNAの証拠が冤罪を一掃し自由の身となったティボトーさんは、ミネソタ州へ移り、人生を再開させるためにGEDを取得し、長距離トラック運転手として働き始めた。

 最終的には、家族と一緒にテキサス州に定住しながらも、ティボトーさんは全土を旅して、自身の経験と不法な有罪判決の危険性、また死刑について語り続けてきたという。

 釈放後のメディアのインタビューやドキュメンタリー番組の中で、ティボトーさんはこのように語っていた。

狭い独房での監禁生活は、絶望や孤独、悪夢に苦しむ日々でした。

免罪となった今、1日で最高だと感じる時は、毎朝目が覚めて自分の自由を味わえることです。自分はもう死刑囚監房にいないのだと実感できることが何よりうれしい。
iStock-1226403179

photo by iStock

 しかし、ティボトーさんは今年コロナに感染。仕事途中に、フロリダ州ジャクソンビルの病院の集中治療室に搬送され、今年8月31日に息を引き取った。

 その数日前、モデルナワクチンの1回目を接種したばかりだった。

 死の直前、ティボトーさんはこのような言葉を弟デイヴィッドさんに向かって口にしたそうだ。

弟よ、俺はここ(病院)から出る準備はできているぞ。

 デイヴィッドさんによると、その言葉は2012年にルイジアナ州立刑務所から釈放される直前に発した言葉とほぼ同じだったという。

 ティボトーさんの死の報せを受け、彼の無罪を支援し続けたミネアポリスの元弁護士スティーヴ・カプラン氏は、ティボトーさんの死後、冤罪についての補償請求が保留にされたままになっていることに対して「不公平極まりない」と批判の言葉を口にし、また「彼を知る人に多くの影響を与えた人物だった」とティボトーさんの早すぎる死を悼んだ。

Top image:iStock / written by Scarlet / edited by parumo

 
画像・動画、SNSが見られない場合はこちら

冤罪で15年もの間、死刑囚監房で過ごした男性、出所後に新型コロナで死亡(アメリカ)