今回紹介する、ゆっくりするところさんが投稿した『【1982年】高級ホテルの厨房で次々と倒れる人たち 大忙しの厨房で一体何が?【ゆっくり解説】』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、湯沸かし器が原因で発生した集団一酸化炭素中毒について解説していきます。

投稿者メッセージ(動画説明文より)

今回紹介するのは、リクエストがありました『ホテル洗い場集団中毒』です。
前日のパーティ、そして当日の多数の団体客の宿泊により、この高級ホテルの厨房は大忙し。
パートやアルバイト、別のホテルの従業員までもが借り出され、大勢で洗い物をしていました。
このホテルの厨房では、業務用の食器洗浄機が使われていましたが、それを使用する前には人の手で手洗いする必要がありました。
その作業を一日続けていましたが、ある時間から突然体調不良を訴える従業員が現れ始め、最終的には十数名が頭痛やめまい、吐き気を催し、ひどい人では意識をなくしてしまう場合もありました。

この大忙しの厨房で、一体何が・・・?


確認ミスと過信から発生した事故

魔理沙
 今回紹介するのはホテル洗い場集団中毒だ。これはとある高級ホテルの厨房内で発生した事故だ。1982年9月。東京都内で営業していた とある高級ホテル。この高級ホテルはあまり大規模な施設ではなかったものの、ホテルに併設されているレストランが非常に有名で、ここの料理目的で訪れる人も沢山いた。

 この日、このホテルには団体客が何組か宿泊しており、客室は満席状態。それに伴い、レストランでは団体向けのコース料理をほぼひっきりなしの状態で提供していて、厨房は大忙しの状態だった。 しかもこの前日には、別の大きなパーティがあったため、厨房で処理しなければいけない食器の数は通常の倍以上。そのため、普段は厨房を担当していない従業員たちまで駆り出され、大規模な食器洗い作業や配膳が行われていた。

 この食器洗い作業には、業務用の自動食器洗浄機が使用されていたが、これで食器を洗うには、あらかじめ手作業で軽く汚れを落とす必要があり、それから自動食器洗浄機で洗われ、水切りをして棚に収納するといった作業だった。この作業もほぼ休みなく続けられ、厨房が忙しくなってから約8時間が経過した21時ごろ。洗い場で作業をしていたアルバイトの中から、頭痛やめまいを訴える者が現れはじめた。

 現場を仕切っていたマネージャーは、彼らがほぼ休みなしで連続的に業務を行っており、その疲労がたまっていたんだろうと思い、彼らに休憩をとらせた。 彼らが休憩に出たあとも、そのまま洗い場での作業は続けられた。しかしそれから約1時間が経過したころ、今度は別の従業員が頭痛や吐き気を訴え、その場に座り込んでしまった。

 中には気を失って倒れる者まで出てきており、マネージャーはこれはただごとではないと考え、救急に通報。マネージャーは厨房での業務をやめさせ、全員を外に出し、体調不良者の応急処置を行った。その後すぐに救急車が到着。頭痛めまい吐き気などを訴えていた 14名の従業員たちは、病院に搬送された。彼らを診察した結果、彼らは全員、一酸化炭素中毒にかかっていたことが分かった。

 14名のうち、2名は意識不明の重体になってしまっており、その後入院して治療が続けられ、数ヶ月後に退院したものの、言語障害が残ってしまった。 これはガス機器や石油機器など、火を扱う場所で発生する事故のひとつだ。燃焼を行うには、十分な酸素が必要だが、換気などがされておらず、酸素が少ない状態で火を使おうとすると、酸素が不足して不完全燃焼を起こし、一酸化炭素という有毒ガスを発生させることがある。

 しかも、一酸化炭素はその毒性が強い反面、色も臭いも全くない。少しでも吸い込んでしまえば、中毒になってしまう危険なものだが、なかなか発生に気づくことができないものでもある。事故後、原因の調査が行われた。その結果、この集団一酸化炭素中毒の主な原因は、ホテルの厨房にあったガス湯沸かし器が不完全燃焼を起こし、一酸化炭素発生させていたためだったことが分かった。

 この厨房では、洗い場などでお湯を使うため、このガス湯沸かし器が設置されていた。普段はこの湯沸かし器が使われるときは、窓を開けたりして換気が行われていたんだが、この当日は非常に天気が悪く、外が荒れていたため、厨房の窓はすべて締め切っており、中はほぼ密室状態になっていた。

 もちろん火元の上に換気扇が設置されており、当日もそれは回っていたが、室内の空気を攪拌するのみで、外の空気を入れ替えるような効果はほとんどなかった。通常、こういったガス湯沸かし器から生じる排気部分には、それ専用の換気装備を使うんだが、当日はそれが稼働していなかった。これは保守点検不足によって故障していたことに、誰も気づいていなかったためだった。

 それに、この日の厨房は多忙を極めた状態だった上に、洗い場で作業をしていた従業員のほとんどは、アルバイトやパートの人間ばかりで、換気の重要性などを熟知している者は、ほとんどいなかった。事故後、このホテルでは、厨房の湯沸かし器を使用して食器洗いを行う場合には、必ず十分な能力を有する換気設備を使うこと、そして湯沸かし器や換気設備について、定期的に点検し、保守を行うこと。

 さらにパートやアルバイトが食器洗い作業を行うときにも、あらかじめ換気の方法やその重要性などを教育し、管理者の直接指揮のもとで作業を行わせることなどが徹底された。一酸化炭素中毒というのは、こういった特殊な場所ばかりで発生するものではない。これは私たちの家庭でも起こりうる恐ろしいものだ。

霊夢:
 臭いも色も分からないって時点で、かなり怖いわよね。

魔理沙
 そうだな。これは特に冬場の室内や、車内なんかで発生することが多い。外が寒かったりすると、どうしても窓を開けたりしにくくなるからな。室内を締め切った状態で、ガスコンロを使って鍋をしたりしても起きることがある。それにこのホテルのように、湯沸かし器を利用していて、それが経年劣化によって不完全燃焼を起こし、一酸化炭素発生させることもある。

 湯沸かし器が外に設置されていればいいが、室内にあるならかなり危険だ。古い湯沸かし器での同様の事故も非常に多く、各メーカーは家庭にある湯沸かし器が、どれくらい古いものなのかを確認するよう呼びかけていたりもするんだ。今回の事例は厨房という特殊な場所で発生したものだったが、その原因を考えると、決して他人ごとではないことが分かる。

霊夢:
 他人事だと思わないで、私たちも日々の生活を安全に送るために 注意しなきゃ。


 十分な換気が行われず、ガス湯沸かし器が不完全燃焼を起こした事故でした。一酸化炭素中毒は決して他人事ではなく、身近に発生しうる可能性があるものなので、特に冬場は気をつけていきたいですね。現在の解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

【1982年】高級ホテルの厨房で次々と倒れる人たち 大忙しの厨房で一体何が?【ゆっくり解説】

―あわせて読みたい―

心臓疾患のある患者に肺の手術を……病院職員による確認ミスと過信からまったく必要のない手術をされた「大学病院患者取り違い事故」を解説

大雨でフタが外れたマンホールに人が吸い込まれる事故が東京各地で発生していた…夏の集中豪雨により“溺水トラップ”と化した「豪雨マンホール転落事故」を解説