夜、「そろそろ寝よう」というタイミングで空腹を感じたとき、あなたならどうしますか。「何かを食べてから寝る」派と、「食べずに空腹のまま寝る」派に分かれることでしょう。

 前者の人からは「おなかがすいていると寝付けない」「空腹のまま寝る方が体に悪そう」、後者の人からは「寝る直前に食べると太りそう」「翌朝、胃もたれしそう」といった声がそれぞれ聞かれますが、両者に共通して、「健康のことを考えたとき、空腹と満腹どちらの状態で寝るのが正解なの?」という疑問があるようです。

 夜中に空腹に見舞われたとき、「何を食べてから寝る」と「食べずに空腹のまま寝る」のどちらが健康にとって正解なのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

「寝る前に食べると太りやすくなる」

Q.一般的に「就寝前(夜、眠気を感じている状態)」の体の状態とはどのようなものでしょうか。

市原さん「就寝前は副交感神経が優位に働いて、リラックスする方向に傾き、睡眠へ導かれます。体温は下がり、胃腸の動きは鈍くなり、脈拍はゆっくりとした速さになります」

Q.夜、就寝前に空腹を感じ、何かを食べてから就寝したとき、体内ではどのようなことが起こるのですか。中には「就寝前に食べると太りやすくなるのではないか」という声もあります。

市原さん「通常、就寝中の胃腸の動きは弱くなっています。就寝直前に何か食べてから寝ると消化や吸収に時間がかかり、胃酸も逆流しやすくなるので、胃もたれや胃のむかつきを起こす可能性があります。体は消化や吸収を寝ている間も行うため、睡眠の質が落ちる可能性もあります。

また、就寝前に食べると太りやすくなるのも事実です。カロリー摂取自体が体重増加につながる上、食後に体を動かさないのでカロリー消費が基礎代謝分しかなく、カロリー過剰になって、太りやすくなります。例えば、糖質は過剰摂取すれば中性脂肪に変換され、内臓脂肪などの蓄積につながります。脂っこいものを食べれば、それに含まれる脂肪自体も中性脂肪として内臓脂肪になります。

なお、食後に体を動かさないことで、食後の血糖値も上がったままになる可能性があります」

Q.一方で、夜、就寝前に空腹を感じたものの、何も食べずにそのまま就寝した場合ではどうでしょうか。

市原さん「何も食べない場合、先述の状態とは反対に胃腸への負担がないため、睡眠に悪影響が出ることは考えにくいです。カロリーを摂取しないので、太りやすくなったり、血糖値が上がったりするといったこともありません。また、普段、食事を普通に取っているのであれば、筋肉量や脂肪量への影響も考えにくいでしょう」

Q.では、健康のことを考えたとき、満腹よりも空腹の状態で寝る方が望ましいということでしょうか。

市原さん「何も食べず、空腹の状態で寝るのが望ましいです。胃腸にかかる負担や体重増加の懸念がないからです」

Q.食べない方がよいことは分かりましたが、それでも、就寝前におなかがすいて、どうしても何かを食べたいとき、医学的観点から推奨できる食べ物はありますか。

市原さん「もし食べるとすれば、糖質や脂質ではなく、タンパク質を含む食べ物の方がよいでしょう。チーズや納豆などがおすすめです。空腹に近いほど消化や吸収への影響が少ないので、満腹になるまで食べるのは避け、少量にとどめましょう」

オトナンサー編集部

夜中に空腹感じたら、どうする?