兵庫県第3セクター北条鉄道が車両の購入・改修を目指して始めたクラウドファンディングに、予想以上の反響が寄せられています。購入車両は国鉄型ディーゼルカー、キハ40形。全国で見られた車両も、貴重になってきています。

目標達成率300%! 北条鉄道クラウドファンディング

コロナ禍で鉄道の苦境が続く中、設備投資に必要な資金の確保にクラウドファンディングを活用する動きが広まっています。そのなかで、兵庫県加西市に本社を置く第三セクター北条鉄道が、2021年9月1日から大手クラウドファンディングサイト「ready for」で開始したプロジェクトが、当初の予想を大きく上回る反響を呼んでいます。

同社のプロジェクトは国鉄時代から全国で見られたディーゼルカー、キハ40形 気動車の導入を目指すもの。購入するのは2021年春までJR五能線青森県秋田県)で走っていた車両(車番:キハ40-535)で、白地にブルー帯の「五能線カラーラッピング(塗装)もそのままに運用される予定です。

9月1日の募集開始当初、目標金額は300万円に設定されていましたが、翌2日には早々と達成。第2目標として設定した700万円も4日後の6日に達成するなど、支援の広がりは順調そのものです。21日(火)時点では運行状況記録装置の設置などを目的とした1000万円という第3目標を掲げており、それに向けて出資者は増え続けています。

キハ40形を含む「キハ40系」のグループは、国鉄時代の1977(昭和52)年から計888台が製造され、片運転台 ・両開きドアのキハ47形など派生した系列とともに、JR旅客6社を中心とした地方の非電化路線を支え続けてきました。しかし製造から40年あまりが経過し、新型気動車や電気式ディーゼルカー(搭載した蓄電池によって走行する車両)への置き換えも進むなかで、2021年3月には五能線を最後にJR東日本管内での定期運用が終了(一部リゾート車両などを除く)。かつて当たり前のように見ることができたキハ40系は、地方によっては懐かしい存在としてファンの来訪を呼び込みつつあるのです。

ただ、北条鉄道クラウドファンディングを活用したキハ40形の購入に踏み切った背景には、同社が長らく悩んできた“日常的な課題”がありました。

コロナ禍でも通勤客が増加? 北条鉄道の「一挙両得なお買い物」

粟生駅(兵庫県小野市)と北条町駅(同・加西市)を結ぶ全長13.6kmの北条鉄道北条線は、1985(昭和59)年に国鉄北条線から第3セクター鉄道として転換・再スタートを切りました。片道20分少々で乗り通せるほど短い路線ですが、起点の粟生駅はJR加古川線神戸電鉄粟生線が接続しており、播磨地方中部(中播磨)の西脇市や小野市中心部、海沿いの加古川市へも路線が延びるジャンクションとなっていることなどから、北条線も朝晩には通勤・通学客で賑わいます。

しかし北条線は転換当初から、朝ラッシュ時ですら1時間1本という運行本数の少なさ、そして計3両しかない車両の少なさがネックになっていました。国鉄時代の合理化で列車交換(行き違い)設備が撤去されたことで、区間内を1編成しか運行できず、加西市や沿線利用者の長年の要望に応えたくても応えられない状態が続いていたのです。

そのうち法華口(ほっけぐち)駅の交換設備は、新しい閉塞システムの開発による工費の大幅圧縮や国・県の補助もあり、2020年に再設置が実現、朝2便・夕方3便の大幅増便に踏み切ることができました。2020年度の輸送実績はコロナ禍の影響もあり約17%減少しているものの、通勤定期に限っては11%も増加するなど新ダイヤの効果は着々と見えています。しかし車両に関しては、トラブルの際に運行を維持できない状況に変わりはなく、同社ではかねてから「4台目」の購入を模索していました。

購入が予定されているキハ40形は通常時にも運用に就くため、「普段づかいの車両」の役割もこなし、かつクロスシート(対面型座席)の居住性や「五能線カラー」の希少価値を生かしてイベント列車などにも活用できるでしょう。

とはいえ、北条鉄道の近辺に限って言えば、キハ40系は同じ兵庫県内でJR播但線の非電化区間(寺前~和田山)や山陰本線の豊岡以西で運用についているため、まだ「珍しい」と言える存在ではありません。しかしながら、そこにこそ、今回の車両購入が北条鉄道にとって二重・三重にもメリットがあるお買い物と言える理由があります。

各社も続くか?「懐かし車両」の購入

近年は北条鉄道同様に、懐かしい車両の購入・運行を目指したクラウドファンディングが活発です。キハ37形・38形気動車の購入を目的とした水島臨海鉄道岡山県)や、キハ28形・キハ52形の修理資金確保を目的としたいすみ鉄道(千葉県)の取り組みが大きな話題を呼びました。

しかし、全国的に珍しくなった車両は、すでに部品や維持管理のノウハウが失われている場合も多く、購入後の課題も並大抵ではありません。一方で北条鉄道の場合は、キハ40系がまだまだ近隣で現役のため、当面のメンテナンスに困ることは少ないのではないでしょうか。とはいえ、将来的にはJR西日本も電気式ディーゼルカーDEC100形など)の導入を計画しており、他地域と同様に「キハ40が珍しい」時代がいずれ来ると予想されます。

なお、懐かしい車両をめぐるクラウドファンディングの動きは各社とも引き続き活発で、前述の水島臨海鉄道も追加車両(キハ205)の購入を目指したプロジェクトが6日間で目標金額を達成するなど、支援の流れは続いています。一方で、想定ほど支援が集まらず目標へ届かないケースもちらほらと見受けられ、各プロジェクトリーダーや事業者の発信力にかかる部分も大きいと言えそうです。

また、今後も全国で余剰が生まれるであろうキハ40系は、多くの第3セクターで主力となっている軽快型車両(LE-Car)よりかなり重量があり、線路の状況によっては導入できないケースも予想されます。

北条鉄道の購入計画は、このあと順調に進めば、2021年秋に車両の輸送が完了する見込み。運行に必要な検査・改修などのメンテナンスを経て、2022年3月には白地に青ラインの「五能線カラーのキハ40」が播磨の地を駆ける予定です。

※一部修正しました(9月24日9時19分)。

五能線を走るキハ40系ディーゼルカー(写真はキハ48形)。2021年春に引退(画像:JR東日本)。