突然だが、絵を描けない筆者が漫画のネームを作ったので読んでみてほしい。

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 いかがだろうか。手書きだと直線すらまともに引けず、デジタルイラスト制作ツールはほぼ使ったことがない筆者が作った作品だ。プロ並みとはいかないが、楽しめる人がいるかもしれない……というクオリティーではあるだろう。

 制作には、9月22日オープンβテストが始まった、スマートフォン向け漫画ネーム作成サービスWorld Maker」を活用した。絵が描けない人でも漫画ネームを作れるのが特徴で、開発元の集英社が「絵が得意でないという理由で、漫画を作る発想をしなかった人に使ってもらいたい」として、無料で提供しているものだ。すでにSNSではユーザーが作ったネームがいくつも投稿されている。

 そこで、筆者も「絵心はないけど、漫画の才能があるかも」と信じ、World Makerで漫画を作ってみた。実際に使ってみるとネームが作れるだけではない、サービスを提供する狙いも見えてきた。

●せりふ・ふきだしを基に自動でコマ割り

 World Makerは、自身のTwitterアカウントを登録することで利用可能。ネーム作りは、「脚本」「絵入れ」の2ステップで進行する。

 脚本ではまず、おおまかな構成図やページ数(最大4ページまで)を決める。せりふやナレーションなどの文章、ふきだしの数などを入力すると、これらを基にサービスが自動でコマ割りを作成する。せりふの入力中や自動作成後であっても、ユーザーがいくつかのパターンから選ぶこともできる。

 事前に用意されたテンプレートを基に脚本を作ることも可能だが、9月24日午後1時の時点ではエラーが出てしまい、筆者の環境(iPhone 8、iOS 14.8)では使えなかった。

 次の絵入れでは、脚本で作った構成図にキャラクターや背景、小物といったイラストや、集中線などのエフェクトなどを配置する。事前に用意された素材やフリー素材サイト「いらすとや」の一部の画像が使える他、ユーザーが用意した画像を素材として貼ることもできる。

 集英社によれば、素材の数は約60万という。サイズや角度も調整でき、どこに配置するかもスワイプ操作などで決められる。ふきだしを追加したり、せりふを変更したりすることもできるが、ページ数やコマ割りは変えられない。

 完成後は、作品を登録したTwitterアカウントで投稿できる。他のユーザーが作成したネームを、サービス上で閲覧することも可能だ。

●「すでにアイデアがある人」向きのツール

 実際に使ってみると、頭の中にあるストーリーアイデアスムーズに漫画として出力でき、自分だけの力では作れない作品が30~40分程度で完成した。作成中には「文は短く簡潔に」「上から俯瞰する構図は状況説明がしやすい」など、ネーム作りのコツも表示されるため、見やすい作品が作れる。

 一方で、表現したいストーリーアイデアがない人にはあまり親切でないと感じた。サービス内では見やすいネームや、最後まで作り切るコツなどは教えてくれるが、面白いストーリーの作り方などは教えてくれない。後から調整できるとはいえ、脚本の時点ではイラストなどを確認できないため、絵からアイデアを出すのも難しい。

 このため、筆者がいざネームを作ろうと思ってもストーリーが浮かばず、結局学生時代にウケた一発ギャグを題材にせざるを得なくなった。

●新人発掘の側面も?

 World Makerがこういった人に親切ではないのは、集英社明らかにしている通り、サービス自体が「絵は描けないけど漫画は作りたい人」に向けたものだからだろう。つまり筆者のように、漫画を作るモチベーションがあまり高くはないユーザーターゲットではない可能性が高い。

 ではなぜ、絵が描けなくて諦めていた人たちに漫画を作ってもらう必要があるのか。これは新人作家、中でもプロットなどを考える漫画原作者を発掘するためだと思われる。

 実際、World Makerオープンβテスト開始に併せ、集英社9月22日から同サービスで作ったネーム限定の「漫画ネーム大賞」を始めている。賞金は30万円で、大賞の作品は宇佐崎しろさんなどイラストレーター2人が作画した上で少年ジャンプ+に掲載するという。

 World Makerが公開されている漫画サイト「少年ジャンプ+」の編集部は新人作家の発掘に注力しており、過去にも「お仕事漫画賞」や「縦スクロール漫画賞」など、さまざまなテーマに沿った漫画賞を開催している。このように、World Makerは漫画原作など新たな才能を発掘する側面もあるようだ。

 単に漫画を作るだけでなく、新人発掘の側面も持つWorld Maker。今後はユーザーの意見を基に、改善を進めていくという。機能拡充などが進み、新人発掘の戦略が奏功すれば、これまでにない漫画が世に出る時代が来るかもしれない。