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 映画やテレビドラマ、アニメなどのフィクション作品に登場する人物やキャラクターに、憧れを抱いたり、共感したり、親近感を持つことは誰にでもあるものだ。

 だが、人付き合いに不安がある人は、登場人物に対し愛着を抱き、お互いに知り合いで、親密であるかのような空想をする傾向があるという。

 この研究は『Journal of Social and Personal Relationships』(21年6月9日付)に掲載された。

【画像】 人との親密な関係性を築けない「不安型愛着」と「回避型愛着」

 1人で生きる力のない幼い子供は、成長するために少なくとも1人の保護者と親密な関係を結ばなければならない。こうした心理的な結びつきのことを「愛着スタイル」という。

 幼少期の保護者との関係は、大人になってからも、恋愛や人間関係に影響を及ぼす。幼少期の保護者との関係が大きく影響している

 愛情ある絆に恵まれた場合、人間関係は安定しやすいが(安定型愛着)、保護者との関係がうまくいっていないと、親しい関係に不安を感じたり(不安型愛着)、人と親密になることを避ける(回避型愛着)ようになりやすい。

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登場人物と親しい間柄であると空想

 カナダ、ヨーク大学の研究グループは、不安型愛着の人や回避型愛着の人は、物語の登場人物に愛着を抱くことで、不安を和らげているのでは? と仮説を立てた。

 そこで大学生150人に、テレビに出ているお気に入り登場人物を挙げてもらい、その人物との関係について質問。これにくわえて、参加者の愛着スタイルを調査した。

 ここから明らかになったのは、不安型と回避型の人たちは、架空の登場人物とお互いに知り合いであるかのような空想をする傾向があるということだった。

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不安型愛着と回避型愛着の違い

 愛着スタイルごとの特徴もある。

 たとえば不安型の場合、お気に入りの登場人物が友達であるかのように感じている人が多かった。

 一方、回避型の場合は、人と距離を置き、独立性や自律性を持つキャラクターに共感することで、心の安らぎを得ているようだ。

 こうした傾向は、外交性、調和性、誠実性、神経症傾向といったビッグファイブ性格特性を考慮してもなお見られたという。

 研究グループによると、こうした登場人物との関わり方は、その人の現実における社会経験と一致しているのだという。

 たとえば不安型愛着の人は、親密な関係から温もりや注目といったものを得たいと思っており、物語の登場人物はそのための手段なのかもしれない。

 一方、回避型愛着の人は、他人と距離をおきたがっており、自分をきちんと律しているキャラクターに重ねることで、慰めを感じるのかもしれない。

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不安型は社交的・献身的、愛着型は自律した登場人物を好む

 それを確認する為、もう1つの調査では、参加者に好きな登場人物の性格と愛着スタイルについて判定してもらった。

 その結果、やはり不安型の人は、社交的で献身的な登場人物が好きであることが明らかになった。このことから、パートナーを守り、支えてくれる登場人物が好きであることがうかがえるという。

 回避型の人も予想通り、自律した登場人物を好んでいた。これは、自分自身を重ね合わせることで、自立しているような気分になれる登場人物を好むことがうかがえるという。

 こうしたことから、研究グループは、愛着スタイルが物語や登場人物との関わり方に影響を与えていると結論づけている。

 今後の方針としては、自分自身を登場人物に重ねることで、本当に不安が和らぐのかどうかの調査といったことが考えられるとのことだ。

References:People with insecure attachment are more likely to form illusory, parasocial relationships with TV characters / written by hiroching / edited by parumo

 
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人付き合いに不安がある人は、物語の登場人物に愛着を抱き、親密であるかのような空想をする傾向がある