プロ野球のなかでも特に熱狂的なファンが多いのが、甲子園球場を本拠地とする阪神タイガースです。永遠のライバルと言われる読売ジャイアンツとの試合は、現在でも「伝統の一戦」と呼ばれ、選手はもちろんファンも熱い闘いを繰り広げています。

甲子園球場
画像はイメージです(以下同じ)
 東京在住の田中真一さん(仮名・35歳)も、熱いタイガースファンの1人。阪神を応援することが趣味と語る田中さんですが、その趣味が原因でとんでもないことになってしまったそうです。

東京出身だが、親の影響でファンに

 高校卒業後、システム開発会社に営業として就職し、社会人生活をスタートさせます。忙しく仕事をするなかで、唯一の楽しみがテレビや球場でタイガースの試合を見ることでした。

 普段は温厚で興奮することはほとんどない田中さんですが、タイガースの試合が始まると豹変し、絶叫することもしばしば。そして試合に負けると機嫌が極端に悪くなり、物に八つ当たりすることもあったそうです。

「東京生まれの東京育ちですが、親の影響で生まれた頃から阪神ファン。昔から試合を見ていると、負けたくないという気持ちが出てしまって、熱くなってしまいます。普段温厚な分、何かに闘志を燃やしたいということもあったかもしれません。負けると、何かムカムカしてしまうんですよね……」

阪神をきっかけに人間関係を広げる

阪神ファン

 職場でも阪神ファンを公言していた田中さん。会社でもタイガースをきっかけに、人間関係を広げていきます。

「人気球団だけに社内にもタイガースファンが多数いて。同僚と話をするうちに盛り上がり意気投合すると、先輩や他の部署の上司など仲良くなり、一緒に見に行くようになりました。タイガースのおかげで人間関係が広がり、自分が販売するシステムの概要やウリ、さらには会社のことを教えてもらうことができました。また、取引先にも熱心な阪神ファンということが広まっていき、話題を共有することで、会話が弾んでいきました

 タイガースをきっかけに仕事も上手くいき始めた田中さん。大きな仕事の受注にも成功し、20代前半ながらそれなりのポジションを獲得しました。すると、徐々に自分への追い風を感じるようになります。

阪神の不調で情緒不安定に

職場 ケンカ

「職場の同僚で、大の巨人ファンもいましたし、『アンチ阪神』という人も別にいて……。自分の仕事がうまく行っていることへの嫉妬もあったのか、彼らが大人げなく自分の耳に聞こえるように『巨人勝ったね』なんて、わざとらしく話してきて。当初は自分も大人ですし、聞き流していたのですが……」

 事態は最悪な方向へと流れていきます。

2008年、阪神が前半戦好調で、オールスター前にマジックが点灯し、優勝を確信していました。ところが後半戦になると負けが混み、2位巨人と激しい優勝争いへ。猛追する巨人の勢いが凄まじく、内心焦っていたところで、巨人ファンの同僚から『阪神調子良さそうだね』と煽られて、完全に頭にきてしまって。その場で口喧嘩になってしまいました。また、客先でも今まで話したことがないような人から、阪神の調子の悪さを指摘されて、さすがに怒れなかったですが、情緒不安定になってしまっていました」

「メークレジェンド」と呼ばれる大逆転優勝を

 結局、阪神タイガースは優勝を逃し、巨人が「メークレジェンド」と呼ばれる大逆転優勝を果たします。すると田中さんは怒りが頂点に達し、しばらく不機嫌な日々が続いたそうです。

「巨人ファンからは煽られるし、お客様からは『残念だったね』と声をかけられるし。なんだかうんざりして、会社でも気持ちの切り替えができなくなってしまって。暗い気持ちで働いていたら、上司に呼び出され、『そこまで一喜一憂するならもう野球を見るのをやめるように』と命令されました。

 その後、いろいろ考えましたが、やっぱり自分は阪神が好きで、阪神がなければ生きていけないと再確認。しかし、阪神ファンを公言してしまったことで、徐々にデメリットが増えてきて、疲れてしまい、転職しました。現在の職場では野球に興味があることすら隠して生活しています」

 阪神タイガースに熱くなりすぎてしまい、思わぬ方向に進んでしまった田中さん。趣味に熱くなることも、ほどほどに。

TEXT/佐藤俊治 イラストカツオ(@TAMATAMA_GOLDEN)>

-[若者の「趣味で痛い目に遭った話」体験談]-

【佐藤俊治】

複数媒体で執筆中のサラリーマンライターファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など