1980(昭和55)年冬、埼玉県東武伊勢崎線を走る電車内であまり例がない不気味な事件が相次いで発生した。

 乗客が手でつかむ「つり革」が相次いで盗まれる事件が発生。駅員が確認しただけでも11~12月にかけて数本のつり革がきれいに盗まれており、長年駅員として勤めている男性も「何故、つり革が盗まれたのだろうか」と首をかしげるばかりだったという。

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 つり革は簡単に盗めるものではない。つり革と車体の接続部分は金属性のネジでしっかりと固定されており、ドライバーなどを使わないと簡単には取り外せない。当然、走行中の車内で犯行に及んだとみられるが、誰にも目撃されずにドライバーを取り出し、つり革をきれいに取り外すのは非常に難しい。

 そんな「つり革」を狙った連続窃盗犯が捕まったのは、翌年1981年のことであった。

 なんと犯人は埼玉県内の高校に通う16~18歳女子高生グループだったのである。
 この女子高生グループは下校時に車内に誰もいなくなったことを確認すると、カバンから大型のドライバーを取り出し、肩車をして車体とつり革の連結部を外し、およそ10分間の間に2本のつり革を盗み出していた。

 女子高生グループの供述によると、この窃盗には他の学校の女子高生グループも加担していたといい、どうやら埼玉県中の学校で流行していたようだ。

 一体何故、彼女たちは「つり革」を盗み続けたのか?きっかけは、彼女たちが当時交際していた暴走族グループからの依頼であったという。

 暴走族が自家用車で暴走行為をする場合、窓から身を乗り出して相手を威嚇する、いわゆる「箱乗り」という乗り方がある。安定した「箱乗り」をするには、片手でつかめる頑丈な持ち手を車の内部に設置しなくてはならず、暴走族たちは「大人がつかんでも壊れない丈夫な持ち手」を探していたという。

 そんななか、電車のつり革が「箱乗り」にピッタリだということが分かり、暴走族グループは当時交際していた女子高生たちに電車から盗むよう依頼。さらにこのつり革は高値で売れることも分かり、不良女子高生の間で広まったようなのだ。

 つり革は当然、特注品であり値段も高いことから鉄道会社としては悩ましい事件だったが、まさか暴走族に流れているとは予想だにせず、ただ仰天するばかりだったという。

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