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他人事ではない危険な行為

執筆:Ronan Glon(ロナングロン
翻訳:Takuya Hayashi(林 汰久也)

交通事故の原因の大半はヒューマンエラーであり、未然に防ぐことができる。

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スピードの出しすぎや「ながら運転」など、時間の経過とともに誰もが悪い習慣を身につける。安全を守るためには、一度立ち止まって、何が間違っているのかを見直すことが大切だ。

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事故の多くは、人間の不注意やミスにより起こってしまう。

そこで今回は、世界各国の安全機関が提供するデータをもとに、運転中の最も危険な行為を抽出した。どれも「当たり前」と思えるようなものばかりだが、筆者(翻訳者)も思い当たるものがあった。事故を防ぎ、免許証の点数を守るためにも、危険な行為について一緒におさらいしよう。

イヤフォンをして運転する

「無音では運転が楽しくない」という人は少なくないだろう。もし、車内のオーディオシステムが壊れていたり、そもそも搭載されていなかったりしたら、イヤフォンヘッドフォンで音楽を聴く人もいるかもしれない。

しかし、それは決して良いアイデアとはいえない。イヤフォンなどで音楽を聴くと、外の世界から切り離されてしまう。他車のクラクションや、追い越していくバイクの音が聞こえなくなるかもしれない。

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最近ではコードレスのBluetoothスピーカーが多く販売されている。イヤフォンで耳を塞ぐより、スピーカーから音楽を流すほうが安全だ。

携帯電話から音楽やラジオを聴く人も多いだろうが、Bluetoothスピーカーに投資する方が安全だ。

酒気帯び運転

英国運輸省の統計によると、2017年、飲酒運転を原因とする事故での死亡者数は250人に上っている(英国内)。事故は起こるものだが、これらの死亡事故は完全に防ぐことができる。

飲酒運転の影響は証明されており、よく知られている。解決策はこれ以上ないほどシンプルで、「乗るなら、飲まない」ことだ。もし飲んでいるなら、運転してはいけない。

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飲んだら乗るな、乗るなら飲むな。

危険ドラッグ運転

ハイになって運転することは、飲酒運転と同様に危険で違法だが、米国の調査によると、1480万人のドライバーがマリファナを使用してから1時間以内にハンドルを握ったと報告されている。

この調査では、米国人の70%近くが「ハイになって運転しても捕まることはないだろう」と考えているようだが、それは間違いだ。複数の警察署でTHC呼気検出器の使用を検討しており、英国にも導入される可能性がある。

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そもそも麻薬の所持や使用は違法である。

なお、日本では薬物の影響を受けた状態での運転は「麻薬等運転」に該当し、麻薬に限らず大麻や覚醒剤、合法ハーブも処罰の対象となる。

疲れた状態での運転

AA(英国自動車協会)の2018年の調査では、英国のドライバーの8人に1人(13%)が居眠り運転をしたことがあると認めている。また、5分の2近く(37%)の人が、運転中に眠ってしまうのではないかと思うほど疲れていたことがあると答えている。

米国の研究者は、5時間しか寝ていない状態での運転は、飲酒運転と同じくらい危険であると結論づけている。「眠気に対する唯一の解毒剤は睡眠である」という指摘もある。

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眠気は突然やってくる。自分の意思だけでなんとかなるものではない。

レッドブルを飲んでも「翼」は得られないし、ダブルエスプレッソを飲んでも同じだ。普段から目が覚めている時に運転するようにして、車線をはみ出したり、目蓋が重くなったりしてきたら、20分ほど仮眠を取るようにしよう。

シートベルトをしない

シートベルトをしないで運転するのは得策ではない。エアバッグが装備されている新型車でのシートベルト非装着は、なおさら危険だ。衝突すると、展開中のエアバッグに向かって突進することになる。これでは生存率が上がらない。

また、クルマの設計は、衝突時に乗員が一定の位置にいることを前提としている。もし、シートベルトで固定されていなかったら、すべてが台無しだ。1997年8月にダイアナ妃と他2人が亡くなった事故からも、シートベルト着用の重要性が伺える。

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前席はまだしも、後部座席のシートベルト装着率は高いとは言えない。

通常、130km/hの速度でメルセデス・ベンツSクラスを衝突させても、シートベルトをしていれば助かる可能性が高い。後に事件を調査した英国の著名な法医学者リチャード・シェパードは、2019年に「ドディ・アルファイドは目の前の運転席に、およそ象3頭分の重さでぶつかり、さらに(運転手の)アンリ・ポールがハンドルにぶつかり、彼らは即死した」と述べている。

王女はその約1時間後に亡くなった。唯一の生存者であるボディガードトレバーリースジョーンズは、シートベルトを着用していた。

運転支援装置に頼りすぎる

アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)、車線維持支援、自動緊急ブレーキなどの運転支援システムは、安全性を高めることはできるが、自動運転を可能にするものではない。現在、世界中のどこにも一般の人が購入できる自動運転車は存在しない。

クルマにブレーキやハンドル操作を任せていても、ドライバーは両手でハンドルを握り、両目で道路を見ていなければならない。パーキングセンサーやバックカメラが付いていても、周りを見ずにバックさせたり、急発進したりすることは許されない。

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運転支援技術は日毎に進化しているが、信頼しすぎることは事故につながる。

膝で運転する

長時間のドライブで腕が疲れたときには、膝を使って運転したくなるものだが、これはクルマを壁にぶつける格好の手段となる。

両手でハンドルを握らなくても、それなりにまっすぐ進むことはできるが、膝を使ってハンドルを操作していると、他車や野生動物などを避けるのが非常に難しくなる。信じられないという方は、膝を使って縦列駐車をしてみてほしい。

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膝を使った運転はかなり横着な行為だが、やったことがあるという人は意外と多いのではないだろうか。

車載システムを見る

カーナビを含め、ほぼすべての新車に搭載されているインフォテインメント・システムは、特にその仕組みをよく知らない場合、スマートフォンよりもはるかに気が散ってしまう。

最近のシステムには驚くほど多くの機能が搭載されており、各機能がいくつものメニューに分かれていることもある。探している機能がすぐに見つからない場合は、何kmも画面を見続けるのではなく、一度クルマを停めよう。

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最近の車載システムは、スマートフォンのように多機能で便利になってきた。その分注意力も削がれやすい。

車間距離が近すぎる

前方のクルマに近づけば近づくほど、急にスピードを落とされたときにブレーキが間に合わなくなる。これは物理学の基本だ。

最低でも2秒分は前のクルマとの間隔を空けて、ブレーキを踏んだりハンドルを切ったりする時間を確保しよう。

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車間距離が近いと、あおり運転とみなされる可能性もある。

脇見運転

メールをチャックしたり、メッセージを送信したりするために道路から目を離す行為は、最も事故に遭いやすい方法の1つだ。

目を離している間も、周りの世界は一時停止しない。それなのに、AAA(米国自動車協会)が2018年に調査したところ、ドライバーの41.3%が運転中に携帯電話でメッセージを読んだことがあり、32.1%がメッセージを入力したと答えている。

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残念なことに、携帯電話を耳に当てて運転しているドライバーをいまだに多く見かける。

運転中に携帯電話で話すことはさらに多い。道路を見ながら話すことはできても、片手が運転に疎かになる可能性が高いので、通話の方がテキストよりも安全だという議論は成り立たない。携帯電話はセンターコンソールなど目につかないところに置いて、移動中は忘れていた方が安全だろう。

リコールを無視する

自動車メーカーのリコールは無料なので、無視するメリットはない。リコールは、トランスミッションの不具合など機械的な問題を原因とするものもあるが、ドアが不意に開いたり、火災の危険性があったり、エアバッグが展開したときに破片が飛び散る可能性があったりと、安全上の問題から出されることも少なくない。

一般的に、リコールの通知は自動車メーカーから郵送されてくるが、わからない場合はディーラーに問い合わせるか、インターネットで確認しよう。

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発売から時間が経った車種でも、リコール対象となることは珍しくない。

ペットを車内に放す

車内で犬などの動物を適切に拘束・保護していないと、危険な状態に陥る可能性がある。また、不注意な運転として罰金を科せられることもある。

飼い犬を膝に乗せて運転するドライバーもいるかもしれないが、日本では過去に道路交通法違反で現行犯逮捕されたケースがある。また、窓から動物が顔を出す行為も違反となる可能性が高い。

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窓から顔を出す動物は、確かに愛らしくもあるが、危険が伴うことを忘れてはいけない。

そもそも、そのような状態で事故に遭った場合、最も危険な状態に陥るのは動物である。

運転中の食事

遅かれ早かれ、将来的には自動運転車が主流になり、高速道路を走行しながらおにぎりを食べることができるようになるだろう。十分な広さがあれば、車内でおにぎりを握ることもできるかもしれない。

しかし、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)によると、運転中に食事をすると事故の確率が80%増加するそうだ。お腹が空いたら、どこか安全な場所で停車するようにしよう。

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仕事でクルマを使うドライバーにとっては特に、運転中の食事は日常茶飯事かもしれないが……。

なお、運転しながら食事をすること自体は違反には当たらない。ただし、確実かつ安全な運転操作ができないと判断された場合、違反となる可能性がある。

メンテナンス不足

定期的にメンテナンスすることで、クルマの信頼性を維持し、長い目で見ればお金の節約にもなる。また、自分自身や同乗者、他のドライバーの安全を守ることにもつながる。

冷却水の漏れを放置すれば、エンジンがオーバーヒートして焼き付き、修理に多額の費用がかかる。また、ブレーキを適切に整備しないと、遅かれ早かれブレーキが効かなくなり、止まれずに他車に衝突することになる。サスペンションパーツやタイヤも、消耗してきたらすぐに交換しよう。

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異常を感じたら、できるだけ早く点検を受けよう。

異常気象時の運転

雪の中や土砂降りの雨の中での運転はできる限り避けよう。もちろん、家にいられない場合もあるが、急ぎの用事でなければ、降り積もった雪の中を走り抜けるよりも、天候が回復するまで待ったほうがいいだろう。

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雪に限らず、雨で冠水した道路を走ることは大変危険な行為だ。車高の高いSUVであっても、無理な運転は避けよう。

速度が速すぎる

英国運輸省によると、英国内で最も多い交通違反はスピード違反で、死亡事故の33%にスピードが影響しているとのこと。

標識で表示されている制限速度を超えれば、ほんの少しは時間を節約できるが、イメージするほど変わらない。

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心にゆとりをもって運転しよう。

例えば、80km/hの速度で走行した場合、50km移動するのにかかる時間は約37分。100km/hで走行すると約30分かかるので、7分ほど短くなる。

速度が遅すぎる

制限速度を大幅に下回る運転は、スピードの出し過ぎと同じくらい危険な行為だ。そのため、最低速度を示す標識もよく見られる。安全の専門家は、低速運転は交通の混乱を招き、事故のリスクを高めると警告している。また、低速で走るクルマを避けるため、他のドライバーに負担を強いることになる。

AUTOCARはクラシックカーを愛しているが、制限速度に達したり維持したりすることが難しいのは身を持って知っている。一番のアドバイスは、混雑したエリアを通過するときは事前に計画を立て、高速道路を避けることだ。

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安全運転を心がけるばかりに、速度が遅すぎるというのもまた問題だ。交通の流れに合わせ、適切に運転しよう。

ロード・レイジ

最近の調査によると、英国のドライバーの半数が「ロード・レイジ」に遭ったことがあるそうだ。ロード・レイジとは、運転中の暴力的な行為のことで、あおり運転も含まれる。

目の前で急ブレーキをかけたり、クルマを止めたり、大声で叫んだり、卑猥なジェスチャーをしたりすると、歩行者も含めて全員が危険にさらされる。大まかに言えば、スーパーマーケット買い物かごを押しているときにしないようなことを、運転中にしてはいけない。

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ハンドルを握ると性格が変わる人がいる。できれば距離を置きたいものだ。

ダッシュボードに足を乗せる

走行中、助手席のダッシュボードに足を乗せる人が多いのには驚かされる。決して安全な行為ではない。ほとんどのクルマのダッシュボードにはエアバッグが搭載されていることを肝に命じてほしい。

足を乗せているときにエアバッグが作動したらどんなことになるか、想像に難くない。事故に巻き込まれるだけでも大変なのに、それ以上事態を悪化させるようなことは避けるべきだ。靴を自慢したいなら、せめてオフィスの机でやろう。

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停車中ならまだしも、走行中は極めて危険だし、心象も悪い。

無灯火運転

自動車メーカーがLEDのデイタイム・ランニングライトを標準装備するようになってから、無灯火で運転するドライバーが大幅に増えた。LEDデイタイム・ランニングライトはそれなりに明るいが、ヘッドライトの代わりにはならない。また、リアライトも点灯しない。

最近ではオートライト搭載車も増えているが、ちゃんと点灯しているか疑わしい場合は、メーターパネルのアイコンを確認しよう。アイコンが消えていれば、ライトも消えている。

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できる範囲で、ハイビームとロービームの切り替えにも気を配ろう。

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