カシオ計算機腕時計といえば「G-SHOCK」や「OCEANUS」などを想像する人が多いと思うが、一部のモデルについてファンから「チープカシオ(またはチプカシ)」と呼ばれていることをご存じだろうか。とはいっても、同社のカタログに「チープカシオ」と書かれた時計はない。SNSを中心に広まった愛称で、「チープ=安い」といった意味が含まれている。つまり、カシオが販売する腕時計の中でも、低価格帯の商品を指しているのだ。

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 自然発生的に生まれたネーミングということもあって、同社の営業担当者が「チープカシオ、持ってきました♪」と言うことはできず。低価格の時計はグルーピングができていなかったので、「分かりやすく伝える」ことが難しい場面もあったそうだ。このままではいけないということで、同社は2021年7月に「CASIO Collection」(希望小売価格2200~1万4850円)を立ち上げ、“無所属”の時計を枠にはめた。

 たくさんの時計をわけわけ(注:大阪弁)したことで、どのような結果が出ているのだろうか。発案者の畠弘紀さん(営業本部)と片山文章さん(同)に話を聞いた。

●新シリーズをつくった理由

――CASIO Collectionはスタンダードな時計を厳選して、そこに新製品も加えたそうですね。ラインアップを3つのカテゴリーに分けて、全部で128製品ある。そもそも、なぜ新しいシリーズをつくったのでしょうか?

畠: 2年ほど前から「シリーズ化できないか」といった話がありました。手ごろな価格の製品(カシオでは「一般時計」と呼んでいる)はブランドカテゴリーがあいまいだったんですよね。20年ほど前に発売したモノもあれば、数年前に投入したモノもある。価格もバラつきがある中で、「どのようにすれば、消費者に伝えることができるのか」といった課題を感じていました。グルーピングすれば、よりシンプルにより分かりやすくなるのではないかと考え、3つのグループに分けました。

――STANDARD(77製品)はいわゆる“チープカシオ”と呼ばれる、定番の商品が多いですよね。SPORTS(40製品)は歩数計や気圧計などの機能を備えた時計が並んでいて、POP(12製品)は女性や子どもターゲットにした商品を厳選している。3つのカテゴリーの中で、注目しているのはどれでしょうか?

畠: シリーズ化にあたって、新たにつくったPOPに注目しています。「新たにつくった」といっても、新製品ではなく、海外で展開しているモデルを厳選しました。なぜ“逆輸入”のような製品に注目しているのかというと、「ユーザーの幅を広げたい」という狙いがあるから。当社の腕時計は、落ち着いたデザインが多いんですよね。いい意味でいうと、多くの人に支持されるかもしれませんが、悪い意味でいうと、おもしろさに欠ける。

 こうした課題を抱えていたので、海外で展開しているカラフルな色やスケルトン素材のモノを販売すれば、日本の女性や子どもにも支持されるのではないかと考えました。7月に発売したばかりですが、すでに結果は出ていまして。「F-91WS-7JH」(3300円)というモデルは、想定の2倍以上の売り上げとなりました。

 では、なぜ売れているのか。SNSで「チープカシオ」が話題になっていて、若い人の間で「使ってみたいなあ」「買いたいなあ」と思う人が増えてきたのかもしれません。特に、このモデルはECサイトで売れていて、若い人との親和性の高さがうかがえました。

パッケージを新しく

――シリーズ化とともに、パッケージを一新しました。これまではプラスチック製でしたが、リサイクルペーパーを使った紙の箱に。プラスチックは製品を見せる部分にしか使っていなくて、結果、使用量は従来のモノより8割ほど削減したそうで。

片山: パッケージは、20年以上前から変えていないんですよね。プラスチック削減の動きはさまざまところであって、紙のストローを導入したり、紙の袋に変更したり。こうした中で、当社でも取り組めることはできないかと考えまして、シリーズ化にあわせてプラスチック製のパッケージを見直すことにしました。

 紙の箱を使うことにしたのですが、そこから試験が始まりました。商品は店内に並べるので、太陽の光が差し込むかもしれません。というわけで、光をあてて変色するのかどうか、といった耐光性を調べました。また、耐久性の試験も実施しました。パッケージに入れた状態で、衝撃に耐えることができるのか。高いところから落下させるわけですが、全製品を調べなければいけません。

 CASIO Collectionは全128製品を扱っていますが、そのときはまだ絞り切れていなかったこともあって、200ほどの時計を落とすことに。「問題はないか?」「壊れていないか?」といった検証は、1年ほどかかりました。

――若い人と話をしていると、環境問題やSDGs持続可能な開発目標)に興味をもっている人が多いなあと感じるのですが、そうした層と環境に配慮したパッケージは相性が良さそうですね。

畠: SNSで「チープカシオ」という言葉が生まれたように、CASIO Collectionのことを「カシコレ」と呼ぶ人が増えればいいなあと思っています。もちろん、そういったワードは会社側から提案するのではなく、口コミで広がっていくことが理想ですね。

(土肥義則)

CASIO Collectionを立ち上げた!