全ての親が子どもの幸せを願っているわけではありません。世の中には、子どもの恋愛をどうしても応援できない親もいます。今回はそんな毒親育ちの女性から、親のせいでダメになった恋愛についてお聞きしました。

親の支配…【毒親の呪い】はこれで解こう!簡単「思考のゆがみ」の直し方&要注意な3タイプ

お話を伺ったのは、34歳の会社員・松山千佳(仮名)さん。

松山さんは、恋人ができる度に母親に激怒されて別れさせられてきたそうです。挙句、婚約破棄になってしまったこともあるのだとか。一体どうしてそんな悲劇が起きてしまったのでしょうか?

異常すぎる母親の妨害行動が原因でいつも破局

「親に初めて恋愛に口を出されたのは、短大のときです。恋人ができて外出が多くなったら、勝手に部屋を物色されて……。さらに、『わかってんだよ、お前が親を裏切って誰かと付き合ってんのは!今すぐ別れろ!』とブチ切れられたのです。

そして、無断で私の携帯から彼の連絡先を入手されてありもしないことを吹き込まれ、携帯を真っ二つにされました。最初の彼も二人目の彼も、母親の過干渉が原因で別れています。

いつも何か反対する理由を上げられて、彼との関係を壊されてきました。例えば、彼の出身地が田舎だとか、彼の実家の職業がうちと釣り合わないとか、彼の兄弟の学歴が低いとか……。意味不明なイチャモンをつけられるのです。あと、長男以外(私が一人っ子のため婿養子でなければダメ)という条件もつけられました。今でも理不尽で、全く納得できません。

社会人になってからは、お酒の付き合いなども増えて帰宅が12時を過ぎることにもいちいち文句をつけられました。遅くなると、いつも鬼電、鬼メールが来るのです。帰宅後、首をしめられたり包丁をつきつけられたりしたこともありました。

身の危険を感じただけでなく、次第に『このままでは結婚はおろか、お付き合いもロクにできない』と思うようになり……。物理的距離をとるため、逃げるように実家を出て一人暮らしを始めました」

毒親の嫌がらせと侮辱的な発言により婚約破棄

それで松山さんの恋愛がうまくいくのかと思っていたら、そうではありませんでした。やっと実家から離れられたのに、母親のせいで婚約破棄になってしまいます。

「2年お付き合いした彼と結婚話が出たので、母親に勇気を振り絞って『彼が挨拶したいと言っている』と伝えたことで事件が起こりました。その瞬間、母親が怒り沸騰。『どこの馬の骨だ!いつからだ!なぜ隠していた!職業は?実家は?』といつもの流れに。

一通り説明しても『お前の話は信じられん。連れてこい!』と言われたため、日程を調整。そこからの行動が異常でした。店の名前までは伝えていなかったのに、自営業をしていた彼の店を特定し、すぐさまメッセージを送ってきたのです。

そして当時、彼のSNSの広告宣伝のためにモデルとして私の写真を載せていたことを知ってヒートアップ。『勝手に人の娘を世間にさらすな!誰の許可を取っているんだ!本人が良くても親が許さない!』と、SNSに嫌がらせコメントを付けられました。

顔合わせ時も、彼自身のことや仕事のこと、実家のことを侮辱され、挙句『こんな淫乱娘でもほしいか?』などと激しく問い詰められて辛かったです。

今思えば、彼の『家族なんだし、毒親でも俺がなんとかするよ』という言葉を信じて紹介したことが最大の誤算。とりあえずその場をおさめ、彼と帰宅しましたが、愛されて育った彼には娘の婚約者に暴言を吐くような親が存在することが理解できなかったようです。

『ごめん。今まで君が話を盛っていると思っていた。毒親だと聞いていたけど、想像以上だった。自分のことから家族のことまで初対面であんなにボロクソに言われて、君とこれから家族になんてなれない。婚約破棄したい』と言われました」

娘の幸せを絶対に許せない母親

毒親は娘が自分より幸せになることを許せない

松山さんは、今でも当時の母親の言動に苦しんでいます。

「付き合った当初から同棲もしていたので、日常の全てが彼だった私は、毒親により全てを失い精神崩壊。1人ではいられなくて、何もできず、食事も取れず、数ヶ月ずっと友人の家に居候させてもらい、お世話になりました。

今も完全にふっきれた訳ではありません。こんな私を支えてくれた友人達のために必死に1日1日を過ごしています。忘れようとすればするほど頭に浮かぶので日々をただ必死にこなしている感じです。

今でも、全く母親の言動が理解できません。私が母親に対して一体どんな悪いことをしたのか?一体何の仕返しなのか?私の時間を返してほしいです。彼と幸せだった、幸せになる所だったあの時間に戻してほしいです。

過去に母親から、『あんたが幸せだと許せない。私が楽しめなかった青春をあんたがなんで楽しんでいるの?』とハッキリ言われたことがあります。

それなのに、私に恋人がいないとき『一人でかわいそうに』『誰かいい人はいないの?』『婚活してみたら?』などと寄り添うふりをされました。

どれが母親の本心だったのか未だにわかりません。もし、本当に娘の幸せを願うのであれば何よりも、誰よりも喜んで祝福してほしかった。一番の味方でいてほしかったです」

親に恋愛を台無しにされないためにすべきこと

最後に松山さんから、「少しでも私のように悲しい思いをされる人が減ってほしい」と毒親育ちが幸せになるためのアドバイスをいただきました。

「恋愛や結婚をするときは、なにより恋人や恋人の家族に自分の育った環境や毒親のことを理解して貰えるかどうかが鍵になると思います。もちろん、毒親との距離感やタイプにもよりますが……。

私の場合は残念ながら、彼に受け入れるだけの器が無かった。それに尽きます。なので、しっかりと話をして受け入れてくれる方なのか、一緒に戦ってくれる方なのかを早めに見極めてほしいです。できれば、関係が発展する前がいいと思います。

あと、私は友人や、職場にも先に話を通し理解や協力を得るようにしました。そして一人暮らしするときは、少しずつ荷物を運ぶか、最小限に留める。毒親から逃げるためには、絶対にバレないように慎重に動いてほしいです。

未成年の場合は、成人よりも逃げ場があります。“こどもシェルター”で検索すると匿ってもらえるところが見つかります。施設にもよりますが、無料で弁護士さんなどに間を取り持ってくれ、絶縁の法的措置を取ってくれるところです。

私は成人していたので、周囲に協力してもらい、警察に『実の親から逃げている』と根回しをして、新しい住所の役所で住民票の閲覧制限をかけました。悩む前に、ぜひ一度こういった行動をとることを考えてみてほしいです」

どんな親に育てられても、子どもは幸せになる権利はあります。毒親育ちは、一人ではありません。幸せな恋愛映画やドラマに出てこないだけで、実は世の中には不幸を強いられている人はいっぱいいるのです。もし毒親に幸せを邪魔されて「逃げたい」と思ったら、ぜひ松山さんのアドバイスを参考にしてみてください。

イラスト:いかはる